約8割が「推進していない」 中小企業におけるリスキリング調査
ある調査によって中小企業におけるリスキリングの実態が明らかになった。多くの中小企業がIT人材不足を課題とする中で、リスキリングを推進している割合が高い業種とは。
エヌエヌ生命保険(以下、エヌエヌ生命)は2024年3月27日、国内の中小企業の経営者を対象に実施したリスキリングと賃上げに関する調査の結果を発表した。
リスキリングを推進している割合が高い業種「トップ3」は? IT業界は2位
調査は、国内中小企業の経営者を対象として2024年2月16〜19日に実施し、7232人から有効回答を得た。
調査結果によると、リスキリングを「推進している」との回答は14.2%、「今後推進予定」も21.2%にとどまった。一方、「推進する予定はない」との回答は36.9%、「リスキリングを知らない」は27.8%に上った。
「推進している」と回答した業種は割合が高い順に「製造業(医薬品・化粧品)」「電気通信業・ソフトウェア・情報サービス業」「病院・医療機関・福祉業」だった。リスキリングを「知らない」と回答した業種にはサービス業や一次産業が多く挙がった。
リスキリングを「推進している」または「推進予定」と回答した2558人に、リスキリングに取り組むメリットを尋ねたところ、最も多かったのは「業務の効率化・生産性の向上」(50.6%)だった。「従業員のモチベーションの向上」(48.0%)、「デジタル化への対応」(37.9%)が続いた。
リスキリングの取り組みとしては「資格取得支援」(48.0%)が最多で、「社外研修やワークショップへの参加を促進」(30.7%)と「時間休取得・時短勤務の推奨」(30.5%)が続いた。
リスキリングを「知らない」と回答した人を除く中小企業の経営者(5224人)に、自身のリスキリング状況について聞いたところ、「取り組んでいる」が38.4%、「取り組んでいない」が61.6%だった。
「自身がリスキリングに取り組んでいる」と回答した経営者を業種別に見ると、最も多かったのは「病院・医療機関・福祉業」(50.5%)、「教育関連業」(49.7%)が次点だった。
中小企業に賃上げの“波”は来ない? 6割は「2024年度に予定なし」
同調査では、中小企業における賃上げの状況についても尋ねている。「2023年度に賃上げしたか」という設問に対して、「賃上げをしていない」と答えた企業が59.2%に上る一方、「5%以上賃上げをした」と言う回答は9.5%にとどまった。
「2024年度に賃上げを予定しているか」を聞いたところ、「予定している」と回答した企業は37.2%、「予定していない」と回答した企業は62.8%だった。
業種別に見た回答の割合は、次の通りだ。
賃上げを「予定している」と回答した2691人に、予定する賃上げ率を聞いたところ、最も多かったのは「2%以上3%未満」(23.9%)という回答で、「1%以上2%未満」(22.1%)という回答が続いた。「5%以上」との回答は20.2%にとどまった。
予定賃上げ率「5%以上」の回答率を業種別に見ると、下表の結果になった。
賃上げをする理由は、「従業員のモチベーション向上のため」が60.2%で最も多く、「従業員の生活を守るため」(50.9%)、「物価上昇へ対応するため」(46.0%)が続いた。
一方、賃上げを「予定していない」と回答した中小企業経営者4541人に理由を聞いたところ、「業績が改善する見通しがつかないため」(42.8%)が最多で、「価格転嫁が難しいため」(35.5%)、「人件費以外のコストが増加しているため」(29.7%)が続いた。
業種別に見ると、「価格転嫁が難しいため」との回答が最も多かったのは「製造業(食料・飲料・日用品・衣服)」(54.2%)だった。
「経営者報酬を上げる予定はあるか」との設問に対しては、「はい」が16.2%、「いいえ」が83.8%だった。
なお、同社は従業員1人以上300人未満の会社経営者(社長や会長、取締役)、および従業員のいる自営業者を中小企業経営者と定義している。
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