業務内容と給与への「不満のチリツモ」が離職を招く 人材流出を防ぐポイントは?
人材難だからこそ企業と従業員の間で生じるミスマッチを減らし、人材のリテンションに努めたいところだ。アンケート結果から、仕事内容と給与、働き方において従業員が不満を感じるポイントを紹介する。
キーマンズネット編集部は「人材と働き方に関するアンケート」を実施した(実施期間:2024年2月1日〜2月28日、有効回答数528件)。「リスキリング」「IT人材不足」「働き方・転職」「職場の人間関係・価値観」の4つのテーマに分けて、各回で調査結果を紹介する。
第3回のテーマは「業務内容、給与、職場環境への不満」だ。業務内容と給与、勤務先での働き方に対してビジネスパーソンが抱く不満の声を基に、人材流出防止のためにケアすべきポイントを探る。
デジタル戦略に必要なIT人材が冷遇、業務の割り当て方に不満
組織成長や戦略人事のために従業員の能力やスキルを一元的に管理するタレントマネジメント。個々の能力やスキルと業務内容にミスマッチが生じれば、能力が発揮されないばかりか、従業員は業務内容に満足できず、離職を招く恐れもある。市場にはタレントマネジメント機能を持つ人材管理システムや特化型のクラウドサービスが多数あり、そうしたHR Techを活用しながらケアしたいところだ。
まず、回答者に対して現在の担当業務に対する満足度を尋ねたところ、図1の結果となった。「とても満足している」が10.4%、「やや満足している」が52.7%で、合わせると63.1%が「満足」と回答した。一方で「やや不満である」が24.2%、「とても不満である」が12.7%となり、「不満」とした回答は36.9%となった。
「やや不満である」「とても不満である」とした回答者に具体的にどの点に不満を感じているのかを聞いたところ、兼務の組み合わせが適切ではないなど、人材配置やスキルと業務のミスマッチに疑問を感じる声が上がった。
担当業務への不満
- 情シスのトップと監査担当を兼務しているが、これがおかしいことを経営層が理解できていない
- 複数部署を管轄しているが、各部署で管理者不在のため詳細管理を全て任されている
- 機械設計などの担当だが、今後はAI活用によって効率化や自動化、合理化が進み、人がやるべき部分が変わっていくだろう。だが、会社や上司、部門長はそのことを想定、理解していない。会社の体質が古く時代の変化にうとい
- 管理部門はコストセンターとして扱われ、新たな提案をしても通らない
コメントで特に目立ったのは兼務と業務量に関する声だ。人手不足のためか担当外の業務を兼任せざるを得ない、担当領域が広いことにストレスを感じている人は少なくない。担当者の専門分野でなければ思うように成果を創出できず、企業の生産性にも影響を与えるだろう。こうしたデメリットも考慮して、あらためて業務の割り当て方を検討したい。
給与、残業時間に対する満足度 残業しないと稼げない現状
業務内容と同じく従業員の不満が集まりやすいのが「給与、待遇」「就労環境」であり、人材のリテンションに影響するポイントでもある。
現在の給与に対する満足度を尋ねたところ、「やや不満である」(39.8%)、「とても不満である」(20.1%)となり、「不満」とした回答は59.9%と半数以上を占めた(図2)。
現在の給与に対して求める昇給額(年額)を聞いたところ、「0〜50万円」が最も多く38.3%、次いで「51〜100万円」「201万円以上」が同率で21.2%となった(図3)
現在の月当たりの残業時間については、回答割合が高いもの順に「20〜40時間」(39.5%)、「5〜20時間」(20.2%)、「40〜60時間」(18.4%)という並びになった。
残業時間に対する満足度は「やや満足している」(49.4%)、「とても満足している」(28.4%)となり、「やや不満」(15.2%)、「とても不満である」(6.4%)と続いた。
現在の残業時間に対して「不満」と回答した人にその理由を尋ねたところ、業務量が多く残業を強いられることにストレスを感じながらも、残業手当がなければ十分な待遇が得られない点にジレンマを感じる声が多く上がった。具体的には、次のようなコメントだ。
- 業務内容と量のバランスが悪く長時間残業につながっている。早く帰れる人と帰れない人に極端な差があり、不満が減らない
- 休日出勤しても代休を取れるが、業務量が多すぎてなかなか代休が取れない。取れたとしても案件が属人していて休みの日に連絡がくる。呼び出し手当や休日勤務手当もない
- 残業時間を考えると時給換算では収入が低い
- 人材不足を残業で補うことが恒常的になっている
- 残業を前提としたプロジェクト計画になっている
- 給与が低いので残業代で穴埋めしないといけない
- 短期間に業務が集中するためピーク時の負荷か高く、長時間残業、深夜残業が発生する
適切な人材配置によって負荷を分散することで残業時間を抑制しながら納得のいく待遇を得られるのが理想的だが、残業を前提とした給与体系になっていることが従業員の不満を招くポイントになっている。
読者に聞いた、転職を考える理由
こうした不満が積もり積もると「描いたライフプランやキャリアプランを今の職場で実現できるだろうか」と疑問を持つようになり、転職を検討する人も増えてくる。実際に、現在転職を検討している人はどの程度いるのだろうか。
最後に、転職の意向を尋ねたところ「転職は考えていない」(58.7%)、「転職したいが活動はしていない」(31.1%)となり、「転職したいと思っており活動中だ」は10.2%にとどまった。
「転職したいと思っており活動中だ」「転職したいが活動はしていない」と回答した人にその理由について尋ねたところ、次のコメントが寄せられた。
- 費用対効果ばかり要求され、今後のプランやセキュリティ強化案を提案しても却下される
- 定年後の雇用延長可否が不透明なため。雇用延長されたとしても今と同じ業務で給与は下がる
- スキルアップ、キャリアアップできない会社の歯車となっている現状を打破したい
- 売り上げ減少に対するアクションが未熟。投資すべきものには投資せず無駄な経費ばかり
- モダンな開発手法を取り入れたチームで働きたい
給与・待遇ばかりでなく、提案が通らない社風や未熟な事業戦略など企業としての考え方に疑問を抱き、それが転職を検討する理由の一つになっているようだ。現状を良しとする文化は、時代にそぐわなくなっているのだろう。
本稿では読者アンケートから、給与と業務内容、労働環境に対して従業員がストレスを感じているポイントを紹介した。冒頭でも述べたように、人材難の今だからこそ人材のリテンションは特に慎重に考えたいところだ。人材管理システムやタレントマネジメントシステムなどを組み合わせながら、人事にまつわる現場の課題解決を進めたい。
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