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「AIでECCユーザーの移行ペースが早まっている」 SAPのCEOが強気に語る背景

SAPのCEO(最高経営責任者)、クリスチャン・クライン氏は「2024年、AIはERPの移行を迅速化させた」と述べた。ERPにおいてAIの効果はどれほど大きいのだろうか。

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CIO Dive

 SAPのCEO、クリスチャン・クライン氏(最高経営責任者)は2024年4月22日(現地時間)の2024年第1四半期の決算説明会で(注1)、「SAPが強化している組み込みAIソリューションによって、顧客はERPへの移行を迅速化させた」と述べた。

 ECCユーザーの移行ペースが早まるほどAIの効果は大きいのだろうか。

SAPが考えるAIが顧客に与えた影響

 クライン氏は、「2024年の終わり、もしくは2025年に移行を開始しようと考えていた顧客は、より早期の移行を望んでいるだろう」と語った。

 2023年に導入された「Business AI」プラットフォームは(注2)、同社がクラウドベースのERP全体に統合している機能別ソリューションの、拡大ポートフォリオの一部だ。クライン氏は「第4四半期以降、当社のクラウドポートフォリオ全体で30以上の新しいAIシナリオをリリースした。ほぼ毎週、追加のソリューションが発表され、2024年中に100以上のソリューションがリリースされる予定だ」と述べた。

 SAPは、オンプレミスやホスト型のERPをSaaSベースに置き換えるため、ユーザーをクラウドソリューションに誘導している。

 同社は2024年1月に技技術サポートとともにインセンティブプログラムも強化し、既存顧客に対して移行コストを最大50%削減するためのクレジットを提供した(注3)。SAPは、オンプレミスのERPのアップデートを2027年まで継続するが、クラウドの導入がその期限に間に合うほど急速に進んでいるとは言えない。

 クライン氏によると、データ管理および分析のためのソリューションである「SAP Business Warehouse」(SAP BW)は、特に重要な取り組みになるという。クライン氏は「SAP BWシステムはそう簡単に置き換えられるものではない」と述べ、2027年までに全ての企業のSAP BWシステムが完全にクラウド化されるわけではないことを認めた。

SAPのAI戦略

 AIはSAPのSaaS戦略の中心となっている。

 クライン氏は「Business AIのビジネスへの影響に言及せずに、経営レベルの会話がされることはないだろう」と述べた。

 このテクノロジーを普及させるため、SAPは21億8000万ドル規模のリストラ計画を発表し(注4)、2024年1月にクラウド移行部門を設立した。クライン氏によると、同社は生成AIアシスタント「Joule」をビジネスソリューション全体に迅速に展開することを目指しているという(注5)。

 「Jouleは、2024年末までに多くのエンドユーザーの取り引きをカバーする予定だ。商品の移動や財務、サプライチェーン、調達など、人間の言葉を介する業務は全てAIサービスの対象だ」(クライン氏)

 SAPは2024年4月22日の発表で、製造業向けのAI駆動型サプライチェーンソリューションを発表した(注6)。同年3月には、「SAP Commerce Cloud」ソリューション向けに(注7)、ノーコード、ローコードでの決済統合を展開した。

 SAPは、AIソリューションがERPエコシステム全体に広がることが、クラウド導入のペースを速める一助になることを期待している。

 「Cloud ERP Suiteには、財務や支出管理、人事からサプライチェーン、コマース、データ、分析を含むビジネステクノロジープラットフォームなど、コアプロセスに関する全てのモジュールが含まれている。これらのモジュールは、さまざまな機能を備えたオンプレミスERPと同じ範囲の機能を持っている」(クライン氏)

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