「ライセンス料が8倍」「板挟みで苦しい」 VMware関係各所の大混乱を整理
連載第4回の本稿は、具体的な読者のお困りごとについてフリーコメントを基に紹介する。VMwareユーザーのコストだけではない多岐にわたる不満や、SIerや販売代理店がBroadcomと顧客の板挟みで苦しんでいる状況が分かる。
BroadcomのVMwareの買収に伴うライセンス変更によって、多くの企業から悲鳴が聞こえてくる。そこでキーマンズネット編集部とITmedia エンタープライズ編集部は共同で「『VMware製品のライセンス変更』に関するアンケート」(調査期間:2024年6月26日〜7月6日、オンライン調査、回答数:425件)を実施した。
ここまでは、VMware製品群を利用しているユーザーの今後の予定や具体的な移行先、継続理由を紹介した。第4回の本稿は、具体的な読者のお困りごとをフリーコメントを基に整理する。
結局、みんなは何に困っている?
多くのVMwareユーザーがコストだけではない多岐にわたる不満を抱えている。また、SIerや販売代理店は、Broadcomと顧客の板挟みで苦しんでいる。
コストの問題
やはり、一番多く寄せられたのは「コスト」に関するコメントだ。「ライセンス料が3倍程度に跳ね上がった」「費用が1.5倍の見積もりを受領した。11月に(ライセンス変更を)実施予定」といった、具体的に数値についてのコメントもあった。
また、「エンドユーザーの会社規模で、購入できるライセンスが制限されてしまうため、高度な機能は使用していないのに最上位ライセンスの購入を強制され、8倍もの価格になってしまう例が多発している。これでは売れない」といった販売代理店のコメントから分かるように、大幅に跳ね上がることに頭を抱える企業もある。
中には「ライセンスコストを捻出できない」「ライセンス費用が説明がつかないほど高騰しており、扱いに困っている」「想定より大きいコストアップとなっているが、現状では乗り換えるまでのコストを捻出できず、また移行先も十分に検討できていない」といったコメントがあり、すでに困窮している企業の存在も分かる。「コスト(次年度以降も含めて)が高額で収益に影響がある」とビジネスに支障が出ている企業もある。
その他のコストに関するコメント
- Broadcomの方針がころころ変わる、コストが上がり続けて今後が読めない。担当営業と連絡が取れない。
- 永久ライセンスで無くなったため、使い続ける場合コストがかかり高額になった
- ライセンスコストはいわずもがな
- 保守コストの増大
情報不足
次に多く寄せられたのは、「情報不足」に関するコメントだ。「情報開示などが遅く困っている」「情報が錯乱している」「最新の情報が入りにくい状況が続いている」「VMwareに夜逃げされた感じ?」といった声からも混乱が分かる。
「延長をしようにも、方針も価格も決まらないので延長できない。年度単位で設備申請しているので、費用が増えると対応できない」「年度予算なので、費用が出ない場合は使用を止める」「金額が3カ月ごとに変更されるので見極めることができない」といった声からも分かるように、延長したくても、情報を入手できずに延長のための予算を申請できなくて困っている企業が多そうだ。一方、「すぐに環境切り替えできないため、当面のコスト上昇を受け入れざるを得ない」とあるようにしぶしぶ受け入れる企業もある。
他にも、「サプライヤーから情報がなかなかこない」「SIerから情報がこない。そもそも設計段階で利用してる趣旨を聞いていたが、最終納品後に説明会がない」「ライセンス見積もりが出てこない」「見積もりがかなり遅い」など、SIer、販売代理店に対する不満も寄せられた。
売る側の言い分
コメントでやり玉に挙げられているSIer、販売代理店だが彼らにも言い分がある。
「Broadcomからの仕入価格が決まらないため、顧客に提示できない」「弊社はSIerで、社内は今のところ問題ない。ただ、他社への商談でBroadcomによるエンドユーザーさまのランク付けの確認をしてもらわないといけないので、すぐに購入できる商品が分からず大変」といった声が寄せられた。売る側もBroadcomと顧客の板挟みで苦しい状況が見て取れる。
その他の販売代理店のコメント
- 顧客への販売においては予算捻出など計画に障害が出ているケースも多い
- ライセンス販売先のお客さまのインフラ構成に変動が発生した
手順が複雑
問い合わせ手順の複雑さに対するコメントも多く寄せられた。「コストが高くて困る。問い合わせもやり方が複雑で分かりにくい」「サポートへの問い合わせ方がころころ変わる。ライセンス体系変更に伴いライセンス買い直しになった後の、ライセンスキーの登録手順が複雑」などが挙げられる。
また、Broadcomのサポートページについて、「Broadcomのサポートページへの移行、またサポートページが見づらい」「『Broadcom Support Portal』の操作説明の資料(日本語)がない」など、具体的なコメントが寄せられた。
複雑な手順に対する工数増加を不安視する声としては、「サーバ更新が4年後と時間があるので、VMwareからの移行も検討しないといけないので工数増」「費用対効果を再調査することに工数をかけたくないが、ライセンス変更によってそれが強制的に実施される状況」「サポート人材の不足」などのコメントがあった。
企業からの理解を得られない
中には、VMwareライセンスの変更そのものに対する企業の理解を得られずに苦しむ人も存在する。「単純に同じものを使うのにライセンス料が高騰しただけでは稟議の説明がつかない。別製品に移行せざるを得ない」と稟議に苦しむコメントの他、「会社の理解がない」といったシンプルな声もあった。
無償版ユーザーのコメント
「無償版が使えないのでテスト環境の構築ができなくなる」「クラウドへのエクスポートに無償版ESXiを使用していたので別の手段が必要となる」「ベンダーからも案内はあるが、純粋に『買い切り』『フリー』版が無くなったので、今後VMwareを使い難くなった」など、無償版のユーザーへの影響も大きそうだ。
本稿もフリーコメントをワードクラウドで整理した。Broadcom、VMwareを除くと「コスト」「費用」「見積」「捻出」などお金に関する文字が大きく見える。
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