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重大事故につながるサプライチェーンの脆弱性 レジリエンスを強化する7つの手法

天候不順や地政学的不安をはじめとする混乱が頻繁に発生している。本記事では、これらの事態に対処するために、サプライチェーンを強靭にする7つの手法を紹介する。

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 サプライヤーと消費者の商品の流れを維持するためは、サプライチェーンにレジリエンスを組み込むことが重要だ。

 サプライチェーンをより強靭なものにするための手法には、「サプライチェーンのマッピング」「代替調達やルートの開発」「リアルタイムのトラッキングの確立」「サプライチェーンパートナーからの情報の一元化」「予測とモデリングの活用」「適切な在庫管理の実践」などがある。ERPなどテクノロジーは、サプライヤーとのコミュニケーションを含めて、これらの戦略に関連するプロセスの一部を簡素化するのに役立つ。

サプライチェーンの脆弱性をなくす7つの手法

 サプライチェーンを強靭にする7つの手法を詳しく解説する。

1.サプライチェーンのマッピング

 主要なサプライチェーンパートナーやルート、その他の要因をマッピングすることは、レジリエンスを向上させるための優れた第一歩だ。これにより、サプライチェーンリーダーは、自社の商品がどのようにしてサプライヤーから消費者まで流れているかをより適切に理解できる。

 また、マッピングは、脆弱(ぜいじゃく)性やボトルネックの発見にも役立つ。

 サプライチェーンマップは、企業がサプライヤーに依存しているポイントを明らかにする。例えば、ビーチ用品を販売する企業が、ビーチ用の傘の生地のサプライヤー一社としか取引していない場合、バックアッププランが存在しないため、その部分がサプライチェーンリスクの高いポイントとなる。

 サプライチェーンマップは、企業がサプライチェーンにおいて単一のルートに依存しているかどうかも浮き彫りにできる。例えば、ある企業の生地のサプライヤーが、企業の倉庫に生地を出荷するために一つのルートしか使用していない場合、サプライヤーがバックアップルートを持っていないため、サプライチェーンのその部分は脆弱なポイントとなる。

2.代替サプライヤーの調達

 サプライヤーとの関係における課題は避けられないが、先手を打つことでレジリエンスを高められる。サプライチェーンマップは現在のサプライヤーを特定する。リーダーは、それを使って、単一のサプライヤーに過度に依存しないように、選択肢と代替案を作成できる。

 代替サプライヤーを選ぶ際には、以下の戦略が役立つ。

  • 複数の拠点を持ち、必要に応じて拠点間で業務をシフトできるサプライヤーを見つける。このような能力を持つサプライヤーは、例えば、製造拠点の1つが天候の影響を受けた場合であっても、企業のサプライチェーンオペレーションに悪影響が生じるのを防げる
  • 近隣で外部委託する機会を探し、国際的な問題の影響を受けにくいサプライヤーと協力する。そうすることで、海外での戦争やその他の国際的危機がサプライチェーンに影響を及ぼす可能性を低減できる
  • サービスレベルに関するサプライヤーとの契約に、災害復旧と準備の要件を追加する。例えば、自然災害が発生した際にサプライヤーの情報が消失し、サプライチェーンの業務が滞ることがないよう、サプライヤーに一定の記録保持手順を順守するよう要求できる

3.代替ルートの作成および緊急時のロジスティクスパートナーの追加

 代替サプライヤーと同様、バックアップの輸送業者やルートは、サプライチェーンのレジリエンスを高めるのに役立つ。海賊行為や橋の崩壊、通行止め、パンデミックなどのブラックスワン(予測困難な大事件)は国際的なネットワークを容易に中断するため、万が一のために備えることは健全なサプライチェーンにとって重要だ。

 代替の航空企業やルートを選択する際には、以下の戦略に従うとよいだろう。

  • 既に複数の航路を利用し、必要に応じて容易に航路を変更できる輸送企業と協力する。例えば、サプライチェーンリーダーは、輸送企業が必要に応じて航路を変更するために適切な船舶を保有しているかどうかを確認する
  • 企業の製品のためのスペースが保証されるように、事前に輸送企業に連絡した上で予約し、容量を確保する
  • サービスレベルに関する輸送企業との契約に、事業継続や災害復旧、準備の要件を追加する

4.リアルタイムのトラッキングを設定し、遅延の発見に役立てる

 潜在的な問題について事前に十分な警告を受けることは、サプライチェーンマネジャーが迅速に行動し、サプライチェーンの混乱を防止または軽減するのに役立つ。

 リアルタイムのトラッキングは、サプライチェーンマネジャーに潜在的な問題を知らせるのに役立つ。IoTデバイスは、製品や出荷の場所を継続的に報告し、トラッキングソフトウェアに遅延のフラグを立てる。例えば、IoTデバイスを活用することで、サプライチェーンマネジャーは、天候によって出荷が遅れ、予定より3日遅れて到着することを把握できる。

 また、サプライチェーンリーダーは、困難が単発的な問題なのか、より永続的な問題なのかを分析できる。例えば、ある地域の出荷が暴風雨のために遅延している場合、サプライチェーンマネジャーは輸送企業と協力して代替ルートを確立できる。

5.サプライチェーンパートナー間における情報の一元化

 データは、他の方法でもサプライチェーンのレジリエンスを構築するのに役立つ。

 ERPやサプライチェーン管理に特化したプラットフォームは、複数のロジスティクスパートナーのサプライチェーン情報を一元化するのに役立つ。サプライチェーンマネジャーは、これらのソフトウェアを使用して、サプライヤーや輸送業者とより容易にコミュニケーションを取ることができ、サプライチェーンに関わる全ての人が同じデータにアクセスできるようになる。

 これらの機能により、サプライヤーが古い「Microsoft Excel」の納期表を使って作業しており、その情報が古くなっていることに気付かず、サプライチェーンの他の全てのパートナーに遅れをもたらすといった問題を防ぐことができる。ERPとサプライチェーン管理プラットフォームを活用することで、全てのユーザーが最新のデータにアクセスできるようになる。

6.予測とモデリングを使用して需要とリードタイムを理解する

 将来の問題を予測するテクノロジーは、サプライチェーンの回復力を向上させる。

 予測およびモデリングソフトウェアは、過去の傾向や新製品の発売、マーケティングプロモーションなどのデータを基に、将来の製品需要を予測できる。例えば、予測ソフトウェアは過去の販売傾向に基づいてホームサプライストアで冬季に雪かきスコップの販売が増加することを予測できる。

 このソフトウェアは、さまざまな混乱がどのように発生するかをモデル化し、混乱への対処方法を提案することも可能だ。例えば、サプライチェーンのリーダーが倉庫の所在地に猛吹雪が襲来する可能性を予測する場合、モデリングソフトウェアを使って、倉庫が1週間製品を出荷できない場合に会社のサプライチェーンにどのような影響が出るかを確認できる。その後、モデリングソフトウェアは、これらの影響を軽減するための代替の出荷ルートを提案する。

7.適切な在庫管理を実践する

 適切な在庫管理は、サプライチェーンの回復力にも貢献する。例えば、在庫管理が不十分であれば、倉庫作業員が顧客に販売するカメラの組立ラインに必要な量のネジを発注できず、顧客に提供できる製品が不足することで、サプライチェーン全体に混乱が生じる可能性がある。

 サプライチェーンのリーダーは、作業員が以下の在庫管理慣行に従っていることを確認する必要がある。

  • 注文、供給、輸送、配送の間に適切なリードタイムを確保する
  • 将来の製品需要とそれが在庫レベルに与える影響を理解する
  • 在庫レベルを追跡し、必要に応じて新しい在庫を注文する
  • 混乱時に備えた予備在庫を維持する

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