SAPがCX AIツールキットを発表 ERPとの連携でマーケティングはどう変わる?
SAPはCX専用のAIツールキットをリリースした。デジタルな「パーソナルショッパー」と顧客体験全体にわたる生成AIのカスタム導入を可能にする
SAPは2024年7月4日(現地時間、以下同)、セールスやマーケティング、EC、サービスアプリケーションに関連する新機能を多数発表した。特に重要なのは、自動化やAI、アプリ開発のためのプラットフォームに、これらのアプリケーションを統合したことだ。
デジタルな「パーソナルショッパー」と顧客体験全体にわたる生成AIのカスタム導入を可能にする機能の全体像を届ける。
SAPが新たに発表したさまざまな機能およびツール
SAPは、プロジェクトの迅速化および統合と運用の合理化を目的に「SAP Business Technology Platform」を設計したという。
調査企業のConstellation Researchのリズ・ミラー氏(アナリスト)は「この度の発表は、CXアプリケーション間のCXデータの流れをオープンにし、ERPともデータをやりとりできるようにするものだ。SAPがクラウド環境を4年間かけて再構築した成果だ」と述べた。
また、ミラー氏は「これは、ユーザーが目を見張るような新しい技術ではないかもしれないが、SAPが顧客にサービスを提供し、ビジネスの成果改善を支援するために必要だった。また、さまざまなアプリケーションに分散していたデータをオープンなものにするためにも必要だった今後、全てのシステムにおいてCXを連携できるようになる」と付け加えた。
CX AIツールキットが人気を博す
SAPは、「Sales Cloud」向けの生成AIツールも数多くリリースした。その中には、顧客の中で取引を成立させる鍵となる人物が誰かを予測し、ユーザーに提案する機能も含まれている。また、AIで顧客の情報を要約する機能や、見込み客への販売をリサーチする「リードブースター」というツールもリリースされた。
2024年7月4日、フロリダ州オーランドで開催されたユーザー向けのカンファレンス「Sapphire」で、SAPは初期導入者向けのデモを公開している。CX AIツールキットは、SAPのユーザーが「SAP Customer Experience」(SAP CX)のアプリにカスタマイズした生成AIサービスを導入できるようにするものだ。
その一つは、「SAP Commerce Cloud」向けのパーソナルショッパーbotで、ユーザーのナレッジベースから顧客の質問に答えたり質問や検索アクティビティーに基づいて商品を推薦したりできる。もう一つは、SAPが2024年の後半にリリースを予定しているEC用の画像生成機能だ。
SAPでCXおよびCRMを担当するリトゥ・バーガヴァ氏(プレジデント兼チームプロダクトオフィサー)は「SAPの生成AIツールは、サービスやセールス、ECの領域で、『SAP S/4HANA Cloud』(以下、S/4HANA)の顧客の反復作業を削減するために役立っている」と述べた。フロントオフィスの顧客データを注文履歴や在庫などのバックオフィスデータと連携させ、生成AI機能を追加することで効率化が促進されている。例えば、故障した洗濯機に関するサービスコールの場合を考えてみよう。
「バックオフィスデータとの連携があれば、サービス担当者は顧客に保証期間内かどうかを尋ねる必要がない。また、サービス担当者は顧客がどの製品について電話してきたのか、その製品が自社で購入されたものなのかどうかを把握できる。S/4HANAにあるデータに基づいて、それが保証対象であることを瞬時に把握でき、問題が部品の交換であれば、電話やチャットの進行中にリアルタイムで部品交換について提案できる」(バーガヴァ氏)
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