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SAPの年次イベントへの期待は? アナリスト、コンサルタントの声を振り返る

SAP Sapphireは、クラウドとAIに関する実用的なガイダンスに重点を置き、幾つかの事例を紹介した。調査企業のアナリストやコンサルタントはいったどういった内容を期待していたのだろうか。

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 SAPによる年次カンファレンス「SAP Sapphire 2024」は2024年7月3日の週の3日間、米国のSAP Users' Groupと共同で開催された。業界の専門家たちは、「ビジネスAI」をどのように提供するかに焦点を当てたセッションを提供することを期待していた。このコンセプトは、SAPの生成AIアシスタント「Joule」などを通じて、ビジネスまたは業界固有の成果を提供することを意図している。

 しかし、顧客はそのようなテクノロジーに対する準備ができていない可能性があり、アナリストは、顧客が直面している問題にどのように対処できるかという具体的で現実的なアドバイスも求めている。

 調査企業のアナリストやコンサルタントはいったいどういった内容を期待していたのだろうか。開催前の有識者の動きを振り返る。

ERPに求められるのはAIだけではない

 調査企業であるForrester Researchのリズ・ハーバート氏(バイスプレジデント兼プリンシパルアナリスト)は、「顧客は、同種の企業がクラウド移行などの主要プロジェクトをどのように実施しているのかといった根本的なことを知りたがっている」と述べた。

 「注目すべきパートナーシップの発表があるかもしれない。確かに、SAPはAIを披露しなければならないが、それだけでERPに関連するあらゆる分野の他のカンファレンスと差別化できるわけではない」(ハーバート氏)

 企業向けの技術を分析しているDiginomicaのジョン・リード氏(共同設立者)は「2024年のSapphireは重要なカンファレンスだ。SAPにとっては、特にAIをはじめとする新興技術について、顧客に動きを見せられるかどうかが重要だ。これらの顧客は、レガシーなシステムであるSAP ERP製品のメンテンナンスが2027年に終了するなどの現実的な問題に直面している」

 「サポート終了について、顧客から『より多くのリソースが必要だ』という声をよく耳にする。より多くのビジネスケースやスキルの開発が求められている。顧客は、それらのアプローチに自信を持ちたいと考えている。技術的なアップグレードが提供されるのか、SAPがそれらをより容易なものにできるのかという点も重要だ。SAPがこれらの2つの議題の間でどのようにバランスを取るのか非常に興味深い」(リード氏)

ビジネスにおけるAIの利点

 コンサルティング企業であるEnterprise Applications Consultingのジョシュア・グリーンバウム氏(プリンシパル)は「SAPは、急成長している自社製品のAI機能について、実際の価値を示す必要がある」と述べた。

 「私は、SAPが自社のAI能力に関して、ビジネスの生産性向上の事例を示すことができると考えているし、期待もしている。それらの事例は実際の成果であるべきだ。SAPはそれらの情報を持っており、実際に価値を提供するAIの開発を強化している」(グリーンバウム氏)

 また、グリーンバウム氏は「顧客はこれらの実証を求め、SAPがこうした能力を提供できるかどうかを確認する必要がある」とも述べた。

 「現在のSAPにおける重要課題は、これが虚像やごまかしでないと示すことだ。一時的な小さな成功ではなく、実際の価値があると示すのだ」(グリーンバウム氏)

 リード氏も同意しており、「SAPは将来的に何が起こるかという大げさなアイデアではなく、AIを使用することによる現実的なメリットを示す必要がある」と述べた。SAPが示すべきことの一つは、『SAP Datasphere』などのツールを通じて、AIがデータ戦略にどのように結び付くかの例を示すことだ。SAP Datasphereは、内部および外部のソースからデータを統合する企業向けプラットフォームであり、これを正しく実現することがAIの鍵となる。

 「顧客が何よりも歓迎するのはAIに関する情報だ。この機能を利用する準備をどのように始めるのか、データガバナンスのために何が必要なのか、どのような監視が必要なのか、そして、この機能が従業員にどう影響するのか、AIについて疑問を持っている人々にとってどのような意味があるのかという内容だ」(リード氏)

「RISE with SAP」に関する明確さが求められている

 リード氏は「SAPは、『RISE with SAP』に関する顧客の疑問も解消する必要がある。このプログラムは、クラウドへの移行を容易にするために設計されている。SAPは本プログラムを2021年に発表してから、顧客のために改善を続けているが、多くの顧客はそれが自分たちにとって具体的にどのような意味を持つのかを理解していない」と述べている。

 「SAPは、RISE with SAPの重要性を訴えるためにどれだけの作業が必要かを認識しているわけではない。クリーンコアとは何を意味するのか、どのような選択肢があるのかといった点について疑問が生じる」(リード氏)

 化学製品を製造するPureTech Scientificのブライアン・ハーディ氏(最高情報責任者)は、ステージ上およびラウンドテーブルセッションで「SAP S/4HANA Cloud」(以下、S/4HANA Cloud)の導入に関する経験について議論するためにSAP Sapphireに参加する。

 ハーディ氏によると、PureTech Scientificは、主に工業用クリーニングに使用されるグリコール酸を製造しており、14カ月の実装プロジェクトを経て、S/4HANA Cloudに本格的に移行したという。

 TechTarget Editorialのインタビューにおいて、ハーディ氏は「私は、PureTechの事例について話し、ラウンドテーブルやその他の場で、望むものをS/4HANA Cloudから得られるということを人々が理解する手助けの機会を持ちたいと考えている」と述べた。

ライブインタラクションの価値

 ハーディ氏によると、Sapphireに参加する価値の一つは、類似のプロジェクトを検討したり進めたりする他の顧客と対話できることだという。

 「他の人にも同じ機会があることを理解してもらい、システムインテグレーターとアプリケーションから最大限の成果を引き出すために必要なヒントやコツをフロントエンドで理解できるように支援したいと考えている」(ハーディー氏)

 これが、SAPがSapphireをライブイベントとして開催し続けている理由の一つだ。ただし、イベントの規模は縮小され、現在はバーチャルバージョンとバルセロナでの別バージョンも含まれている。

 情報を欲しがっているが遠方から参加できない顧客にとって、選択肢の多さは魅力的だとハーバート氏は語った。

 「SAPはこれまでも地域イベントを開催してきたが、旅行への関心や旅行予算が減っている顧客にとってもイベントの開催が容易になることは大きな意味を持つ。ヨーロッパの顧客にとって、米国までわざわざ出向く必要がなくなり、コストや時間も節約できれば助かる」

 地域イベントやバーチャルイベントを規模縮小することは、持続可能性に関するSAPのメッセージとも一致すると彼女は述べた。

 SAPはストリーミングコンテンツとインタラクティブな仮想セッションの提供に成功しているが、人々を同じ部屋に集めることには依然として大きな価値があるとリード氏は述べた。

 「これは結局、人間関係のビジネスであり、対面で問題を解決する方が簡単だ。適切な場所に適切な時間にいられることは、プロジェクトに変化をもたらす可能性のあるSAPパートナーと営業時間外に会える可能性があるという利点がある。こうしたことはオンラインでシミュレートするのが非常に困難だ。不可能ではないが、廊下での出会いがプロジェクトに変化をもたらす可能性が高くなる」(リード氏)

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