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コンピュータ支援ソフトウェア工学(CASE)の基本を徹底解説 ツールやメリットも紹介

コンピュータ支援ソフトウェア工学とは、ソフトウェア開発やビジネスプロセスモデリングにおいて、作業効率を高めるために活用される幅広いツールや手法だ。本記事で、CASEツールの特徴と合わせて解説する。

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 コンピュータ支援ソフトウェア工学(CASE:Computer Aided Software Engineering)とは、ソフトウェア開発やビジネスプロセスモデリングにおいて、作業効率を高めるために活用される幅広いツールや手法を指す。CASEツールは、ソフトウェアプロジェクトを管理するための標準化された再利用可能なフレームワークを作成し、ユーザーが時間を節約し、生産性を向上させ、プロジェクト全体を通して整理された状態を維持することを目的としている。

 CASEツールは約30年前に大きな関心を集めたが、現在は関心が薄れており、ツールは異なる機能へと変化している。またCASEの概念に対しては、その効果の欠如に対する批判もあり、その批判の一部は米国政府から寄せられた。

CASE、U-CASE、L-CASEEの基本

 CASEツールは、統合CASE(I-CASE)ツールと呼ばれることもあり、ビジネスプロセス分析やコード生成、ドキュメント生成、レポート生成、図の作成(データフロー図や状態図、エンティティ関係図など)をはじめとして、ソフトウェア開発環境における多くの活動をサポートするコンピュータベースの製品だ。I-CASEツールの他、上流CASE(U-CASE)ツールと下流CASE(L-CASE)ツールも存在する。

 U-CASEツールは、ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)の初期段階に該当する要件分析やシステムモデリング、システム設計の簡略化に役立ち、要件モデリングや図の作成のための機能が含まれている。例えば、「IBM Rational RoseやSparx Systems Enterprise Architect」がある。

 L-CASEツールは、コード生成やテスト、コードメンテナンスのようなSDLCの後期段階に焦点を当てている。「Microsoft Visual Studio」や「Git」は、L-CASEツールの一例だ。

 シンプルなCASEツールは、単なる描画プログラムや基本的なデバッガーにすぎないが、高度なツールはコードの作成から実装、保守まで、SDLCの全体をカバーする。これらは開発における自動化支援もする。

 これらのツールは、ソフトウェア開発作業の多くの側面を簡略化し、効率化する。例えば管理やモデリング、エラーチェック、バージョン管理、設計、図作成ツール、プロトタイピング、その他のソフトウェア工学に関連する作業を支援する。コンパイラやテストツールもCASEツールセットの一部と見なされている。

コンピュータ支援ソフトウェア工学の利点

 CASEの概念と関連ツールは、特に大規模または複雑なソフトウェアプロジェクトにおいて有用だ。これらのプロジェクトでは、さまざまな側面を整理および管理し、混乱や再作業を最小限に抑える必要がある。CASEはプロジェクトに共通の視点を提供し、関連するメンバー(プランナーやデザイナー、プロジェクトマネジャー、開発者、ソフトウェアテスターなど)が、どの段階においても同じ理解を得られるようにする。チェックポイント方式により、プロジェクトの進捗(しんちょく)状況を把握し、共通の目標に向かって取り組み、進行中のプロジェクトにおいて規律を保てる。

 また、CASEはソフトウェアの構成要素を視覚化し文書化するために、標準化された言語である統一モデリング言語(UML)を使用する。このような標準化されたプロジェクトの設計図は、プロジェクトの複雑さを軽減し、プロジェクトのライフサイクル全体を通じてコラボレーションとコミュニケーションを改善するのに役立つ。

 CASEで一元化されたリポジトリを使用することで、参加者が効果的にコラボレーションし、問題が顕在化する前に対処するために必要な全ての情報が提供される。それらの情報には、ビジネスプランや設計仕様書、プログラムライブラリ、コード仕様書、テストケース、マーケティングプランなどが含まれる。また、リポジトリはコードと設計の再利用を容易にし、時間とコストを節約し、SDLCの早い段階で不具合に対処し、最終的にはアウトプットの品質を向上させる。

 CASEのアプローチは、SDLCの多くのステップで自動化を取り入れ、開発のスピードを高め、開発サイクルを短縮する。また、ドキュメントの作成と保守を簡素化し、コードと製品の品質を向上させ、より一貫性があり保守しやすい開発環境を実現する。

CASEツールの特徴

 大半のCASEツールは、ユーザーがビジネスプロセスのシミュレーションを作成できる機能を備えている。これらのシミュレーションモデルは、プロセスが完了するまでの時間、関係するコストや使用されるリソースをはじめとして、プロセスのさまざまな側面を最適化する機会を明確にする。その後、ツールはモデルに対してワークロードを適用し、既存の非効率性を浮き彫りにし、ユーザーが改善を実施するための指針を提供する。

 高度なCASEツールには、コードの自動生成機能が含まれる。設計図やドキュメント、仕様書、図面を基に、CASEツールは実行可能なコードやコードユニットを自動的に生成する。この機能により、ソフトウェア開発者は時間を節約し、自動化できないSDLCの他の側面に集中することができる。

 一元化されたリポジトリは、CASE戦略のもう一つの重要な特徴だ。コードやライブラリ、ドキュメント、レポートなどがリポジトリに集約されており、プロジェクト管理情報やコード仕様書、テストケースと結果、設計仕様書、図面、レポートを統合したシステムが提供される。このアプローチにより、チームやマネジャーは、完了した作業とまだ残っている作業を把握できる。情報は視覚的に表示されることが多く、ユーザーは必要な情報を素早く見つけられるだけでなく、プロジェクトの全体像を簡単に把握できるようになる。

 CASEツールの中には、活動基準原価計算(ABC)の機能を含むものがある。ABCは、ビジネスにおける意思決定者が、組織のプロセスにおけるコストや価値、全体的なパフォーマンスを分析するために役立つ。この会計システムにより、リソースが最も価値を生み出す場所が明確になり、製品の価格設定を適切に実施しやすくなる。

 ほぼ全てのCASEツールにはダイヤグラム作成機能が含まれており、ユーザーはモデル化されたシステムのイベントと状態のシーケンスを定義する状態図や、システムまたはプロセス内の機能と情報の流れを示すデータフロー図を作成できる。これにより、ユーザーは問題を発見し、効率やパフォーマンスを向上させる機会を見つけられる。また、システム内でさまざまなエンティティ(人、オブジェクト、概念)がどのように関連しているかを示すエンティティ関係図も作成できる。これらのER(Entity Relationship)図は、データベースの設計やトラブルシューティング、ビジネスプロセスの再設計に役立つ。

 CASEツールには次のようなソフトウェア開発を簡素化する機能が含まれる場合がある。

  • レポートジェネレーター
  • ドキュメントジェネレーター
  • データベース管理
  • 要件管理

CASEツールに対する批判

 カスタム開発プロジェクトの主要な推進者である米国政府は、1980年代〜1990年代初頭にかけてCASEツールに数百万ドルを投資してきた。しかし、政府はCASEツールの機能に関するベンダーの主張を批判するようになった。「CASEツールがソフトウェアの品質や生産性を向上させるという証拠はまだほとんどない」と、米国政府監査院(GAO)は1993年の国防総省によるCASEツールの使用に関する報告書で述べている。

 約10年後の2002年、研究論文「ソフトウェア開発者の経験に関する実証的研究」でも、CASEツールの展開に関する問題が指摘された。コンコルディア大学のコンピュータサイエンス研究者であるAhmed SeffahとRex B. Klineは、「CASEツールを開発するソフトウェアエンジニアと、それを使用するエンジニアの間に概念的なギャップがある」という証拠を見つけたと主張している。このギャップは、これらのツールの使いやすさを制限する可能性がある。

 また、CASEテクノロジーが解決しようとした問題も依然として存在する。Standish Groupのデータによると、1000万ドルを超えるコストがかかるERPの実装など、大規模なソフトウェアプロジェクトの失敗率は41%に達するという。ソフトウェア開発の複雑さは、現在も課題であり、CASEツールを使用してもこれらの問題を解決できない場合があり、組織は根本的な原因を特定し、問題の解決策を見つけるためにさらに深い分析をする必要があるかもしれない。

CASEツールの進化

 CASEソフトウェアツールは1970年代に重要な製品カテゴリーとして登場した。CASEベンダーは、これらのツールによってITの生産性が向上し、ソフトウェア開発におけるエラーが減少すると主張していた。

 長年にわたりCASEツールは進化してきた。初期のツールは主に一部のプロセス(ドキュメント作成など)の自動化に重点を置いていたが、後期のツールにはソフトウェア設計やコード生成、プロセスモデリング、バージョン管理の機能が組み込まれている。また、他のソフトウェア開発ツールとシームレスに連携できる統合機能を持つツールも増えてきた。現在では、CASEツールにはAIやクラウドコンピューティングなどの最新技術が組み込まれており、ビジュアルプログラミングやオブジェクト指向プログラミング、アジャイルソフトウェア開発プロセスにも対応している。

 全体的に見て、CASEツールは広く利用されているが、CASEという包括的な用語は、以前ほど重要な意味を持たなくなっている。開発者は、ビジュアルモデリングやシミュレーションソフトウェア、システムアーキテクチャツール、「Microsoft Visio」などのダイヤグラム作成ツールなど、特定のツールカテゴリーに焦点を当てる傾向が強い。

 AIをソフトウェア開発に組み込むことは、変革をもたらす可能性がある。しかし、倫理的および実用的な懸念も生じる。ソフトウェア開発におけるAIの可能性とリスクについても検討する必要がある。

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