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RPA開発・運用は内製化か ベンダー外注か【実態調査】

RPA開発、運用は内製化か、外注か……アンケート調査の結果から企業の実態を探る。

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 業務自動化の現在地を探るために、キーマンズネットは「業務自動化に関する意識調査2023年」と題してアンケート調査を実施した(期間:2023年7月20日〜8月31日、有効回答数:606件)。本連載は、全8回にわたってアンケート調査から得られた結果を紹介する。

 第5回となる本稿のテーマはRPA(Robitic Process Automation)プロジェクトの「推進体制」だ。RPAは業務プロセスの改革を企業自身が取り組めるツールとして、市民開発や内製化を促す手段という認知が広がってきた。一方で、開発や運用には一定の知識やマンパワーが必要であることから、近年はベンダーやコンサルタントが多くの支援サービスを提供している。RPA開発、運用は内製化か、外注か……アンケート調査の結果から企業の実態を探る。

市民開発のはずが……なぜ情シスに負荷が集中するのか

 まず、RPAを導入済みとした企業に対して、プロジェクトをけん引する組織について聞いたところ、図1のような結果になった。


図1 RPAプロジェクトをけん引する組織

 「情報システム部門」(39.6%)が最も多く、「ユーザー部門」(20.4%)、「ユーザー部門と情報システム部門」(16.5%)が続いている。

 RPAはユーザー部門が自らの業務を効率化するための手段として注目を集めたが、実際には情報システム部門が関与する割合は59.6%と6割に上った。これには、幾つかの理由が考えられる。

 まず、企業のITインフラやシステムを運用し、それらの知識を持つ情報システム部門は、RPAの適切な導入や運用の方針を立てやすいことが言える。さらに、RPAの無秩序な展開は問題を発生させるリスクがあるため、情報システム部門がガバナンスの確立や管理を期待されるケースもあるだろう。

 一方で、RPAの導入や運用を追加で担当することによって、情報システム部門に負荷が集中することがないような仕組みや体制づくりが求められる。

RPA開発・運用は内製化か 調査で分かった理想と現実

 次に、RPA導入プロジェクトの推進体制をさらに深堀するために、「パートナー企業にコンサルティングやシナリオ開発などを依頼しているかどうか(その予定があるか)」について尋ねた。

 「全て自社でRPAを開発、運用している」と回答した企業は41.4%。一方、「自社で行うことを中心に一部パートナーの力を借りてRPAを開発、運用している」(40.7%)、「自社では困難なので、全面的にパートナーがRPAを開発、運用している」(7.0%)を合わせて47.7%が外部のリソースを頼るとしている。多かれ少なかれ外部の支援を受けるとした企業が、完全な内製化に取り組む企業の割合をわずかに上回った(図2)。


図2 パートナー企業にコンサルティングやシナリオ開発などを依頼しているか

 また、実際の状況と関係なく、理想として「どの程度外部の力を借りることが望ましいか」についても聞いたところ、外注の傾向はさらに強まった。「全て自社でRPAを開発、運用することが望ましい」とした企業は31.6%で、実際に完全内製化する企業の割合よりもさらに少ない数字を示している(図3)。このことから、現時点で完全内製化をしている企業も、実際には外部のリソースに頼りたいと考えているケースがあることがうかがえる。

 一方で、「自社で行うことを中心に、一部パートナーの力を借りて開発することが望ましい」は54.4%と半数以上の指示を集め、「自社では困難なので、全面的にパートナーがRPAを開発、運用することが望ましい」(4.9%)と合わせると、55.3%が外注の意向を示した(図3)。注目すべきは、従業員規模や自動化レベルが異なる企業においても、この傾向が変わらないことだ。


図3 どの程度外部の力を借りることが望ましいか

 これらの結果を見ると、自社でプロジェクトを主導しつつも、開発や運用において一部外部パートナーの力を借りたいとする考えが最もメジャーだと分かる。連載3回目で紹介したように、RPAは単に個々のタスクの自動化ツールという位置付けから、全社業務を横断的に自動化化、効率化する手段として位置付ける企業も増えている。

 全社的なプロセス変革を実現するためには、全社の業務を俯瞰し、プロセスのどこに課題があるのかを見極めるとともに、どのようなゴールやKPIに向かってどのツールを適用するのかといったノウハウや、実装のスキルが必要だ。これらの施策を実施するスキルを持った人材を育成、調達することも求められる。そのためにパートナー企業の知見やマンパワーを頼ることを選択する企業が増えていると予想できる。

パートナーに求めること

 では、具体的にパートナーに何を求めるのだろうか。1位が「自社にない技術の獲得」(58.9%)で、これに「アイデアを具現し得る企画力や製造能力」(48.1%)、「自社にない情報の獲得」「業務プロセスなどのノウハウ」(同率40.4%)が続いた(図4)。

 これらをRPAの文脈で落とし込むと、自社にない技術の獲得はRPAツールに関する知識や開発能力、異なるシステムの連携技術、より多くのロボットやタスクを管理するための仕組みの設計などを指す。


図4 パートナーに求めること(複数回答可)

 アイデアを具現化する企画力や製造能力については、業務を棚卸して最適化する分析能力や、特定の業務や要件に合わせてツールをカスタマイズする能力、さらにRPAプロジェクト全体のスケジュールやリソースを管理するマネジメント能力なども含まれるだろう。

 さらに、自社にない情報の獲得や業務プロセスなどのノウハウについては、ユーザー企業の業界に関する業務知識やトレンドを熟知し、それに適した自動化の提案ができる知識や、他社のユーザー企業でのRPA導入経験を基に、ベストプラクティスを横展開しサポートする能力、データのセキュリティやコンプライアンスに対するノウハウなどが含まれると考えられる。

 次回は、RPA導入のコストについて読者調査の結果を考察する。

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