検索
連載

「金はないけどDXしたい」と経営者がワガママを言うのも“しょうがない”事情

多くの企業がIT予算の増額を見込んでいる。生成AIなどの導入を求める旺盛なIT需要に反して、企業の懐事情は厳しそうだ。その背景には何があるのだろうか。

Share
Tweet
LINE
Hatena
CIO Dive

 調査企業のForresterは企業の意思決定者2200人を対象に調査を行い、2024年8月に2つの報告書を公開した(注1)。その結果によると、回答者の約9割が「2025年にIT支出が増加する」と予想している。

「DXしたいけどお金がない」企業の苦難の背景

 経営層の約4分の3は「ソフトウェアと技術者に関連する予算の増加」を見込んでいる。Forresterは2024年のIT支出が前年比で5.3%増加すると予測しており、2023年の4%の増加からさらに上昇する見込みだ。なぜ企業のIT予算は年々増加しているのか。その背景には、世界的な景気変動と技術革新の波があるようだ。

 実は、多くの組織にとって予算増加はインフレに対応した結果にすぎない。同社のマシュー・グリアーニ氏(バイスプレジデント兼リサーチディレクター)は「世界のインフレ率は平均で5.9%に達しており、IT予算の戦略的な再配分を企業に迫るだろう」と述べている(注2)。

 企業は業務を効率化し、収益を拡大するイノベーションを推進するため、より多くの優れたテクノロジーを求めている。しかし、世界的な景気変動に見舞われた2024年に、予算が高騰するリスクは冒せない。

 CIO(最高情報責任者)たちは、デジタルトランスフォーメーションの目標を達成するために、社会の変化に適応してきた。クラウドの利用が増えるにつれて、多くの企業はコスト増加の重みを実感し始めた(注3)。生成AIが要求する高性能なコンピューティングリソースへの需要も同じ影響を与えている。技術への投資が目に見える成果を生み出していないのだ(注4)。

 Forresterのポール・マッケイ氏(バイスプレジデント兼リサーチディレクター)は「クラウドとAIは2025年における主要な投資分野になるだろう」と述べた(注5)。同氏は「企業はAIのインフラとサービスサポートのために、またワークロードをクラウドに移行するために、クラウド領域にさらに多額の投資を行うだろう」とも指摘している。

 Forresterによると、生成AIに目先の利益を求めるのは短絡的な誤りだという。同調査の回答者の約9割は「今後1年以内にAIに関連するデータインフラや人材、ツールへの支出を増やす」と予想しているが、広範かつ柔軟な長期戦略がなければその投資は無駄になる。

 Forresterは報告書で次のように述べている。

 「PCからデータセンター、クラウドまで、必要な場所でAIのワークロードを実行する能力が必要になり、最新のデータプラットフォームが必要になる」

 マッケイ氏は、企業に対して、クラウド利用における最適化の実践に対する投資額を維持、または増加させて、AIのワークロードに関連するコストを抑えるために特定の分野で支出を削減するよう勧めている。AIやクラウド、IT人材への支出増加を相殺するために、CIOは他のコスト削減策を探す必要がある。

 プラットフォームベースの戦略が成熟するにつれて(注6)、企業は、チームごとに導入した、単一のタスクのためのアプリケーションの見直しに注力すべきだ。Forresterのシャリン・リーバー氏(チーフリサーチオフィサー)は次のように述べる(注7)。

 「長年にわたり、チームが独自のアプリケーションを構築および保守したり、独自の理想的なアーキテクチャを求めたりしてきた結果、技術の乱立が生じていた。今こそ、独自開発のアプリケーションや、少数のアプリケーションだけにサービスを提供する孤立したインフラを見直し、置き換える時だ」

© Industry Dive. All rights reserved.

ページトップに戻る