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みんな薄々気付いている「生成AIのコスパ悪い問題」の実態と対策CIO Dive

近年さまざまなソフトウェアに盛り込まれている生成AI機能。これによってソフトウェアの価格が上昇し、企業のIT部門を苦しめている。生成AIによる効率化で、増加するコストの元は取れるのだろうか。

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CIO Dive

 調査企業のForresterが2024年7月に発表した報告書によると(注1)、約80%の企業が過去1年間にソフトウェアコストが増加したと報告している。企業はコストを抑えつつ新技術を導入することを強いられており、IT部門による舵取りはこれまで以上に難しくなっている(注2)。

コスト増加の原因、“生成AI”の問題点

 調査対象となったITリーダーの約3分の2は「AIを含む新しいソフトウェア機能がコスト上昇の原因」と考えており、5分の4以上は「SaaS製品に生成AIの機能を導入することで、2025年にソフトウェアコストが増加する」と予測している。

 では、生成AIによって増加するコストの元は取れるのだろうか。また、コスト増加への対策はあるのだろうか。報告書の内容と、関連する調査結果を見ていこう。

 ITコストの抑制と技術革新の両立は、テクノロジー企業の経営陣にとって一貫した優先事項だ。しかし、経営幹部は「そのバランスを取ることが難しくなっている」と述べる。

 企業は生成AIの導入に多額の費用がかかることを予想すべきだ。調査企業のGartnerは、生成AIアプリケーションの組み込みやカスタマイズ、構築に企業が「500万ドルから2000万ドルを費やす」と予測している(注3)。

 初期費用はかかるものの、企業の経営陣は生成AIの導入によるコスト削減を期待している(注4)。2024年1月に発表されたBoston Consulting Groupの調査によると、半数以上が「生成AIによって2024年にコスト削減を実現できる」と期待している。

 しかし、生成AIのROI(投資対効果)は計測しにくいと評価されている(注5)。Forresterの報告書は次のように述べる。

 「ソフトウェアにAIが組み込まれるようになると、企業が得られる価値に不釣り合いなほどに価格が上昇する可能性がある。あらゆる場所でROIがプラスの値になるわけではない。ソフトウェアにおけるAIの価値は、進化に合わせて注意深く監視および評価される必要がある」

 契約の複雑さや将来のニーズの予測も、ソフトウェア費用を管理しようとする企業にとっての障害となる。Forresterのデータによると、約半数の企業は将来に備えた計画の策定に苦労している。明確な道筋を持つ企業でさえ、既存の契約を修正し、ベンダーロックインを回避するのに苦労している。

 Forresterは報告書で「長期契約はコストメリットをもたらすかもしれないが、柔軟性やニーズの変化への適応性を制限する可能性もある」と述べた。回答者の約40%はベンダーの透明性の欠如を課題の一因として挙げている。

 生成AIが技術スタックに導入されたことで、IT支出に対するガードレールの必要性が浮き彫りになった。KFCやTaco Bell、Pizza Hutを傘下に持つYum Brandsのクリス・ターナー氏(最高財務責任者)は、関係者に対して「前四半期にAIに関する取り組みを深化させる中で、IT支出に関する強力なガバナンスを導入している」と語った(注6)。

 Forresterの調べによると、ITリーダーたちはコストの増加に対抗するために監査を強化し、適切な場合にはオープンソースの代替品に頼るようにしている。

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