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Slackの生成AIツール「Slack AI」で業務はどう変わった? ユーザーの本音トーク

Slackの生成AIツール「Slack AI」でできることや今後のロードマップを紹介する。

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 2024年2月に英語版が公開され、4月に日本語版が公開された生成AIツール「Slack AI」。会話や共有ファイルに基づいた回答を自然言語で取得する「回答の検索」、チャンネルやスレッドの内容をワンクリックで要約する「会話の要約」、チャンネルの内容をまとめて概要を把握する「まとめ」といった機能が既にリリースされ、機能追加も予定されている。

 2024年10月15日に開催された「Slack AI座談会『Slackでこんなに仕事が楽になる?!』注目の新機能、導入事例をご紹介」では、いち早くSlack AIを活用している日本企業の担当者を招いて座談会が行われた他、今後のロードマップが公開された。

 座談会には、セールスフォース・ジャパンの鈴木晶太氏(製品統括本部 プロダクトマネジメント&マーケティング本部 プロダクトマーケティングマネージャー)、コクヨの越川康成氏(ヒューマン&カルチャー本部執行役員 兼 コクヨアカデミア学長)、GOの加来 慎太郎氏(IT戦略本部 IT戦略部 サービスマネジメントグループ マネージャー)が登壇した。

大量のメッセージで情報過多 生産性の低下をどう回避するか

鈴木晶太氏(以下、鈴木氏): Slack AIを導入した背景を教えてください。

加来 慎太郎氏(以下、加来氏): 組織や事業の成長に伴ってメンバーやチームが増え続け、Slackの検索性の低下やノイズをどう回避するかが課題でした。

 当社は時代に合わせた「移動」のアップデートを通じて、日本の社会課題の解決を目指している会社です。現在、約600人の従業員に非正規雇用や業務委託のメンバーを加えた約800人がSlackを利用しています。当社は多様な働き方をサポートするためにオフィスフリー制度やハイブリッド型勤務を採用し、Slackはメインのコミュニケーション手段の一つです。

 今回、情報の増加による検索性の低下やノイズに悩む社内のエンジニアやプロダクトマネージャーから「ぜひSlack AIを導入してほしい」との要望があり、導入を決めました。

越川康成氏(以下、越川氏): 当社では現在、海外拠点の従業員を含めた約6000人がSlackを利用し、2万以上のチャンネルが運用されています。業務関連だけでなくサークル系のチャンネルの運用を推奨しているため、情報が多すぎて必要とする情報にうまくたどり着けず、生産性が下がっていました。

 当社は文具メーカーのイメージが強いかもしれませんが、主力事業は働く場所を構築したりオフィス家具を提供したりする「ワークプレイス事業」です。自社の品川オフィスでも、従業員同士はもちろん、従業員と地域住民の皆さんとの交流を通じて、「つながり」や「コミュニケーション」が業務の改善や効果にどのように影響するかといったテーマに取り組んでいます。2022年にSlackを導入した背景には、従業員同士のコミュニケーションを再設計したいという思いがありました。

勉強会の開催や事例の作成でSlack AIを社内にスケール

鈴木氏: Slack AIを実際にどのように活用していますか?

加来氏: 社内で一番よく使われているのは「まとめ」機能です。私も毎日「まとめ」機能でチャンネルの要約を確認してから仕事をスタートしています。メッセージの未読消化の方法には、「セクションで優先順位をつける」「『後で』にブックマークする」といった方法がありますが、Slack AIの登場で「まとめ」による要約も選択肢の1つになりました。

 次に使われているのが「会話の要約」機能ですね。当社は個人向けのプロダクト事業も手がけていて、障害などのトラブルが発生することがあります。トラブル発生時には、状況を把握したり、対応を検討したりするために社内のメンバーがスレッドに集まってさまざまなやりとりをしていくわけですが、数十件スレッドが続いたところで突然メンションされて呼ばれたときに、全てのスレッドを頭から確認するのは大変です。「会話の要約」機能を使えば、スピーディーに全体をキャッチアップできるので助かります。

鈴木氏: Slack AIを社内で広く使ってもらうために工夫したことはありますか?

加来氏: Slackのカスタマーサクセスチーム主催のオンライン勉強会が役に立ちました。参加したメンバーが勉強会の途中で専用チャンネルに疑問点を書き込むと、カスタマーサクセスチームのメンバーがすぐに回答してくれて助かりました。

越川氏: Slack導入時に各部門に設置したアンバサダーに協力してもらい、Slack AIの活用事例を作成しています。情報過多の中での生産性の低下が課題ですが、生産性を追求しすぎると視野が狭くなり、情報や知識のサイロ化が起きる危険性があるため、「生産性を上げる」「視野を広げる」の2軸で事例を作成することにしました。

 その結果、女性活躍の推進をしている担当者が、「回答の検索」機能を使ってグループ会社内の同様のプロジェクトを見つけた事例などが集まりました。今後は、Slack AIをうまく使えていないメンバーにこうした事例を展開していくつもりです。

Slack AIには、仕事上の気が利くパートナーになってほしい

鈴木氏: 実際に活用する中でどのような効果を感じていますか?

越川氏: 情報過多の中で生産性を上げる、という効果は間違いなくあると思います。Slack AIを利用した従業員にアンケートを取った結果、1人当たりの想定削減時間は、1週間当たり48分、1カ月当たり3.3時間、1年当たり40時間という結果でした。会社全体では1年で26万時間の削減が想定されます。


コクヨでのSlack AI導入の効果

 また、営業系などの特に情報のキャッチアップが必要な職種は、「まとめ」機能でインプットすべき情報を簡単に確認して次のアクションにつなげられるようになり、仕事の効率が上がったと聞いています。

加来氏: 個人的には、業務の中でAIを使う選択肢が最初に思い浮かぶようになりました。Slackは触る機会が最も多いソリューションであり、普段の業務の中でAIを活用する意識が高まった部分は間違いなくあると思います。

鈴木氏: Slack AIに期待することをお聞かせください。

加来氏: Slack側から、返信していないメッセージなどをリマインドしてもらえると助かります。また、Slack上に個人情報やパスワードのようなクレデンシャルな情報が投稿された場合に自動で検知して削除するか、管理者に知らせてもらえるとありがたいですね。DLPでも同様のことができますが、AIが得意な分野だと思います。

越川氏: Slack AIには、仕事上の気が利くパートナーになってほしいです。当社ではChatGPTを業務に活用する取り組みを進めていて、「ChatGPTは一緒に仕事をするパートナー」というコンセプトを非常に大事にしています。Slack AIにも、「自分の業務とは一見関係ないが、確認しておいた方がいい情報をレコメンドする」といった役割を担ってくれることを期待しています。

今後のロードマップ

 イベントの後半では、鈴木氏からSlack AIの今後のロードマップが発表された。

 Slack AIには、AIが必要な情報を簡単に見つける「インテリジェンスの向上」機能、業務フローにシームレスにAIを組み込む「生産性の向上」機能、AIが日常業務をサポートする「サポートの向上」機能がある。

 「回答の検索」機能は「インテリジェンスの向上」機能、「会話の要約」や「まとめ」機能は「生産性の向上」機能に該当する。


Slack AIの機能ロードマップ

 鈴木氏は、「回答の検索、会話の要約、まとめから始まったSlack AIの機能は、今後さらに拡大していきます」と語り、最近リリースされた「ハドルミーティングの議事録作成」「AI ワークフロービルダー」「ファイル検索」の3つの新機能を紹介した。

 ハドルミーティングの議事録作成機能は、ハドルの会話を文字起こしし、さらにその内容を要約する機能だ。ハドルミーティングが終了すると議事録がcanvasに整理され、該当するスレッドで共有される。そのためハドルミーティングに参加したかどうかにかかわらず、関係者と情報を共有することが可能だ。

 AI ワークフロービルダーは、自然言語でプロンプトを入力するとSlack AIとワークフロービルダーがワークフローを自動で生成する機能だ。これによりタスクや定型業務の自動化がさらに容易になる。

 ファイル検索機能では、共有ファイルやcanvasを横断した検索ができる。2025年2月にリリースが予定されている「アプリ検索」機能を使えば、JiraやGitHubといった連携アプリケーションのデータ検索も可能だ。なお、Slack AIにはアクセス可能な情報に限定して検索するルールが定められており、アクセスが禁止されている情報が検索結果に表示されることはない。

 鈴木氏はさらに、Salesforce Recordの構造化データとSlackの非構造化データを連携する「Agentforce in Slack」を紹介した。Agentforce in Slackの自律型AIエージェントが、案件や商談のステータスを要約して次の推奨ステップを提案することなどが可能になるという。Salesforceは、2025年にAgentforce in Slackの利用を開始するロードマップを組んでいる。

 「今後はSalesforceだけでなく、独自のAIエージェントやアシスタントをSlackに導入することも可能になるので、楽しみにしていただければと思います」(鈴木氏)

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