ITエンジニアの半数が「1年以内の転職を検討」 世界中で転職ラッシュが止まらない理由
業界全体で人材獲得競争が進む中、ITエンジニアの離職率が高まっている。報告書を基に、ITエンジニアの転職ラッシュの背景を読み解く。
業界全体で人材獲得競争が進む中、ITエンジニアの離職率が高まっている。あるリクルーティングサービスを提供している企業の報告書によると、ITエンジニアの半数は1年以内の転職を検討しているという。
転職を考えるエンジニアの主な理由は給与の向上だが、他にも複数の理由がある。報告書を基に、ITエンジニアの転職ラッシュの背景を読み解く。
ITエンジニアの転職ラッシュの背景
リクルーティングサービスを提供するHarvey Nashは2024年10月14日(現地時間)、調査を基にした報告書「Global Tech Talent & Salary」(注1)を発表した。同調査は2700人のITエンジニアを対象に実施された。
同調査によると、ITエンジニアの半数以上は転職の主な理由として給与アップを挙げた。ITエンジニアの55%は「過去1年間で仕事量が増えた」と回答しており、仕事量の増加も転職理由の一つとなっている可能性がある。世界のITエンジニアの45%は「半年から1年以内に現在の職場を離れる予定」で、米国における離職率は37%とやや低い。
経営陣は、優秀なITエンジニアの獲得と維持に関連する可能性を測るために、IT業界の転職市場の指標を注視している。
2024年の初めに市場が低迷する兆候があったにもかかわらず、同年9月にはIT業界における失業率やその他の指標に回復の兆しが見られた(注2)。IT業界団体であるCompTIAによると、企業は50万人以上のITエンジニア職を募集している。
AIやデータサイエンスのスペシャリストは、自らのスキルに特に高い需要があることを認識している。ベンチャーキャピタルであるMenlo Venturesのデータによると(注3)、熟練したAI技術を備えた人材の報酬は現在の市場で最高35万ドルに達する。
Harvey Nash USA and Canadaのジェイソン・パイル氏(プレジデント兼マネージングディレクター)によると、流動性の高いIT系の転職市場において、CIO(最高情報責任者)は、2021年から2022年にかけての大量退職時代と同様に、人材の獲得および維持に関する魅力的な戦略を示さなければならない。
パイル氏は「CIO Dive」に対して「現在のチームメンバーのスキルアップに努め、メンバーの成長に投資することは引き続き重要だろう」と述べた。
また、IT部門のリーダーは、全体的な報酬や医療面での待遇、フレキシブルな勤務体系、有給休暇などを含む福利厚生のパッケージを見直すことで、競争力の維持と人材定着の向上に役立てられる。
ITの専門家が携わる特定のプロジェクトやテクノロジーも重要だ。
「ITエンジニアであるならば、自らを成長させ、ビジネスに役立つエキサイティングな挑戦をしたいと考えるだろう」(パイル氏)
注1:2024 Global Tech Talent & Salary Report(Harvey Nash)
注2:IT hiring roars back after monthslong slump(CIO Dive)
注3:Senior AI talent rakes in top dollar amid rising demand(CIO Dive)
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