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「クラウドよりもSSD内蔵オンプレサーバの方が安い」という主張は本当か?:811th Lap

アプリケーションやシステム基盤において徐々にオンプレ離れが進む中で、今もなお「オンプレ一択」を貫くWebサービス企業がある。なぜ、オンプレにこだわるのか?

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 Webサービス企業にとって、サービス運用基盤の選択が重要であることは言うまでもない。多くのWebサービス企業が、徐々にパブリッククラウドにシフトしつつある。

 そんな中、大規模なWebサービスを提供しているある企業は、サービス運用基盤をパブリッククラウドへ移行せず、今もなお自社サーバで運用しているという。その企業は「クラウドよりもSSD内蔵オンプレの方が安価」だと言うが、なぜそう言えるのか?

 パブリッククラウドで運用しているWebサービスが増え、徐々に自社サーバで運用するサービスは少なくなっている。だが、メールサービスを提供するFastmailはちょっと違うようだ。

 Fastmailは、オーストラリア発のWebメールサービスだ。カレンダーの他、最大600ものエイリアスを作成できる充実した機能を備えている。月額3ドルからの有料サービスだが、「Gmail」と同等かそれ以上の使い勝手で長く人気を博している。

 そんなFastmailのロブ・ミューラーCTO(最高技術責任者)が、2024年12月22日に同社の自社ブログに「Why we use our own hardware at Fastmail」(Fastmailで自社製ハードウェアを使用する理由)というタイトルの記事を投稿した。記事では、幾つかのWebサービス企業がサービス基盤をパブリッククラウドからオンプレミスへ移行していると語り、自社の独特なサーバ運営について言及している。

 Fastmailはサービス開始から20年以上も自社サーバでサービスを運用してきた。パブリッククラウドを利用するメリットとして、サービス規模に合わせてサーバの規模を変動できる「動的スケーリング」がある。同社は、長期にわたって同社のサーバの使用パターンや要件、成長度合いを正確にモニタリングし、サーバに関わるハードウェアの調達を適切に計画しているため、クラウドサービスの動的スケーリングは不要だという。

 同社は独自のハードウェアとネットワークの構築、運用に関する経験値が高く、その能力を社内で醸成してきた。さらに、サーバを長期間使用し、耐用年数いっぱい利用することでコストを抑えるノウハウも持っている。

 ミューラー氏は、自分たちで多くのことをしなければならないものの「そのトレードオフはこれまでも、これからも自分たちに大きな価値がある」としている。

 ブログ記事では、同社が20数年間採用してきたメールサーバをHDDからNVMe SSDを用いたものへ完全移行したことや、ZFSファイルシステムによるファイルサイズの圧縮や暗号化など、同社の経験が語られている。

 ミューラー氏は、現在のパブリッククラウドの利用料金と、1TB当たりの月額料金(0.99〜21ドルとプロバイダーによって差がある)および1PB(ペタバイト)当たりの年間料金(2024年12月時点)をまとめた。

 運用コストが安価であればパブリッククラウドへの移行も検討できなくはないが、データ量で価格が大きく変動すること、全体のシステムをクラウド向けに改修しなければならないことなどから、Fastmailはクラウド移行を断念した。結局、61TBのNVMe SSDを24台搭載した2Uサーバを購入することでパブリッククラウドよりも安価な運用環境を実現したという。

 ミューラー氏のブログを参照することで、Webサービスを提供している有名企業のパブリッククラウドおよびオンプレミスへの考え方、取り組みがよく分かる。一読してみてはどうだろうか。


上司X

上司X: クラウド全盛時代にオンプレミスでサービスを運用する企業のCTOが自社ブログに投稿した記事が興味深い、という話だよ。


ブラックピット

ブラックピット: Fastmailですか。1999年からメールサービスを提供していますね。


上司X

上司X: なかなかの老舗だな。


ブラックピット

ブラックピット: 2004年にサービスを開始したGmail以前から使っている人も多いのでは? 逆に最近だとGoogle包囲網から離れてGmailからFastmailへ移行する人もいるとかいないとか。


上司X

上司X: そんなFastmailはずっとオンプレミスでサービスを提供し続けてきたと。


ブラックピット

ブラックピット: クラウドだとスケールの変更はラクですけどねえ。場合によっては自動的に変更できちゃったり。


上司X

上司X: いろいろ融通は利くとは思うが、コスト的に見合わないところがあるとFastmailのCTOは言っているようだ、クラウドの良いところと問題点をきっちり見極めている感じだな。


ブラックピット

ブラックピット: オンプレミスでの経験値が高いからこそできることなのでしょう。実際大きなトラブルも起こっていないようですし、まあ、正直なところ利用に支障がなければクラウドでもオンプレでも構わないんですけどね。


上司X

上司X: まあ、そうなるかもしれないけどな。でもセキュリティ対策にも関わることだし、ちょっとは気にした方が……。今回のFastmailの「オンプレミス一筋」という話は、他の事業者にとって興味深いのではないかな。

川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


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