米国最大の美容小売業者 ERP刷新の障害を乗り越えられたたワケ
米国最大の美容小売業者であるUlta BeautyはERPを導入する際に発生した問題を乗り越えつつある。Ulta BeautyはERP刷新における障害をどのように乗り越えたのだろうか。
2024年初めごろに実施したERP刷新時で障害が発生した美容小売業者、Ulta Beautyのデイブ・キンベル氏(CEO)は、2024年12月2日の週に開催した2024年度の第3四半期の決算説明会で、「障害による影響がほぼ解消した」と報告した。
Ulta Beautyは第3四半期に予想を上回る売上高の成長を達成した。純売上高は前年比1.7%増の25億3000万ドルとなり、2024年11月2日までの期間における既存店舗の売上高は0.6%増加した。
Ulta BeautyはERP刷新における障害をどのように乗り越えたのだろうか。
ERP刷新プロジェクト10社に7社は期待を下回る結果に
投資家に金融情報を提供しているSeeking Alphaによると、キンベル氏は電話で「新しいERPの最適化を進め、チームが新しい業務プロセスに慣れるよう支援し、ネットワーク全体で在庫のバランスを整え、より良い顧客体験を提供するための進展があった」と話したという。
ERPの導入はスムーズに進まないことが多い。Ulta Beautyの複数年にわたるプロジェクトもその一例だ。
「Project SOAR」と名付けられたこのシステム刷新は、業務の変革と効率向上を目的とした最大1億8000万ドルの投資計画の一環として、2021年に発表された。
Ulta Beautyは2024年7月に店舗プラットフォームの移行を完了したが、その直後にチームは運用上の課題に直面した。移行期間中は大半の従業員が2つのシステムを併用して業務を進めており、新しい業務方法に適応する必要があった。
キンベル氏は、2024年8月に行われた2024年度の第2四半期の決算説明会で次のように述べた。
「このシステム導入によりって仕入れや店舗への商品配分、計画プロセスやシステムに課題が生じた。今後の混乱を最小限に抑えるため、問題を引き起こしている旧来のプロセスを特定し、問題が発生した際にすぐ対応できるよう、積極的な監視体制と専任のサポートを導入した」
ERPの刷新は業務に支障を与えることでも知られている。2024年の初め、食品メーカーのLamb WestonはSAPへのインフラアップグレードに伴い、業務の見える化が難しくなり、出荷率が低下した。またチョコレートメーカーのHersheyも2024年に段階的に実施したERPアップグレードによって、売上と在庫の一時的な減少をした。
多くの企業は短期的な逆風を伴ってもアップグレードには価値があると考えているが、成功が保証されているわけではない。調査企業であるGartnerは、2027年までにERPの刷新に関するプロジェクトを計画している企業のうち10社に7社は、期待を下回る結果に終わると予測している。
移行における問題を解決し、必要に応じて損失を最小限に抑える判断を下すのはCIO(最高情報責任者)の役割だ。
「このような大規模な変革を、流通センターや店舗全体で進めるのは決して容易なことではない。それでも確実に前進していると感じており、素晴らしいホリデーシーズンを迎える準備が整ったと自信を持っている」(キンベル氏)
「Strength」「Optimize」「Accelerate」「Renew」の頭文字を取った「Project SOAR」は、すでにビジネスに良い影響を与え始めている。当初の主な目的ではなかったものの、新しいERPは市場対応型フルフィルメントセンターに関連する課題の軽減にも寄与している。
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