Copilotの利用率が爆上がり それでも利用しない企業の叫び【M365の利用実態】:Microsoft 365とGoogle Workspaceの利用状況(2025年)/後編
注目が集まるMicrosoftの生成AI機能に対する読者の反応と活用状況、Microsoft 365とGoogle Workspaceの主要アプリ以外のおすすめの使い方、各サービスに対する満足、不満の声などを紹介する。
前編では「Microsoft 365」と「Google Workspace」の利用状況を概観し、勤務先で契約しているライセンスプランやユーザー当たりの利用料金、パッケージ版OfficeからMicrosoft 365への移行状況について、アンケート結果を紹介した(実施期間:2023年1月6日〜1月17日、回答件数:169件)。
後編では、注目が集まるMicrosoftの生成AI機能に対する読者の反応と活用状況、Microsoft 365とGoogle Workspaceの主要アプリ以外のおすすめの使い方、各サービスに対する満足、不満の声などを紹介する。
Copilotの利用率が爆上がり それでも利用しない企業の叫び
Microsoft 365の各アプリケーションで生成AIの機能を利用できる「Microsoft 365 Copilot」。Microsoft 365に蓄積された自社のデータを基に、AIの機能を引き出せるとして2023年のリリース依頼、大きな注目を集めてきた。ユーザーの認知度はどの程度まで上がったのか。
勤務先で「Microsoft 365を利用している」とした回答者に対してMicrosoft 365 Copilotの理解度を尋ねたところ、「何ができるかをやや理解している」が最も多く45.0%、「何ができるかを理解している」は20.1%だった(図1)。2024年の前回調査と比較すると、前者は36.0%から9ポイント、後者は8.7%から11.4ポイント上昇した。
ここ1年間で、大企業を中心にMicrosoft 365 Copilot の導入事例が増えた他、サービスを取り扱うベンダーやSIer各社がセミナーなどで情報発信をしているため、認知度が各段に上がったと考えられる。
導入率も上昇した。「Microsoft 365 Copilotを利用したことはあるか」と尋ねた項目では、「利用した」は27.6%で、前回調査の8.7%から大幅に増えている。「利用を検討中」も17.3%の回答率を集め、興味関心の度合いも高いようだ。一方で、55.1%と過半数の回答者は「利用をしていない」と答えた(図2)。
生成AIはIT分野の一大トレンドとなりソフトウェアやアプリケーションに組み込む事例も増え続けているが、MicrosoftのAI機能を「利用していない」と回答した裏にはどのような理由があるのだろうか。
Microsoft 365 Copilotを「利用しようとしたがやめた」「利用していない」とした回答者に対してその理由をフリーコメント形式で尋ねたところ、コスト、会社の管理ポリシー、使い方の理解不足の3つに大別できた。
コストについては、「コストの割には期待した結果でなかった」といったコメントもあった。Microsoft 365 Copilotを利用するには、対象となる Microsoft 365 プランのライセンス料とは別に、Microsoft 365 Copilot のオプション料金が必要となる。年払い契約の場合、ユーザー1人当たりの月額料金は 4497円(税別)、月払い契約の場合は 4722円(税別) となる。これは、例えば法人向けの「Microsoft 365 Business Standard」ライセンスの月額料金1874円(税別)と比較すると、約2.4倍の価格となる。そのため、料金が高いと感じる人も多いだろう。
会社の管理ポリシーについては、「現状のMicrosoft 365でのコンテンツ管理状況を踏まえると、本格導入はリスクが高い」「生成物の権利が確立されていない」「親会社からのNGで今のところ利用はできない状態」といったコメントがあった。Copilotの利用時は、AIで意図しない相手に情報を共有しないようにMicrosoft 365の設定を見直す必要があるなど、十分な注意が求められる。その他にもAI利用時は、ハルシネーションや著作権などさまざまなリスクを考慮する必要があることも考えて、利用をとどまる企業もいると考えられる。
さらに「使い方の理解不足」については、「活用方法が見いだせていない」「どうやれば利用できるのかが不明」といった声が集まった。Copilotを導入したとしても、普及率が30%を超えるのが難しいという事例もあるが、どのように社内で利用を促進するかということがROIを高めるポイントになりそうだ。
こんな使い方もあるの? 主要アプリ以外のサービス活用事例
Microsoft 365やGoogle Workspaceには文書作成や表計算ツール、メールクライアントだけではなく、業務効率化やプロセス改善に寄与するスイートサービスもある。
そこで「Microsoft 365を利用している」とした方を対象に「Excel」「Word」「PowerPoint」「Exchange」「One Drive」「Teams」以外のアプリケーションやサービスの利用有無を聞いたところ、「使ったことがある」は55.1%で、「使ったことはない」(32.3%)や「使おうとしたがやめた」(11.8%)を上回る結果となった(図3)。
フリーコメントでは「『Power Apps』で社内アプリの開発をしたり、『Power Automate』で業務の自動化をしたりした」や「『Access』で部門内システムを構築した」などのコメントが寄せられた。
同様に「Google Workspaceを利用している」とした回答者を対象に「ドキュメント」「スプレッドシート」「Google ドライブ」「カレンダー」以外のアプリケーションやサービスの利用有無を聞いたところ、「使ったことがある」が56.8%だった(図4)。
具体的には「AppSheet』と『GAS』で簡易システムを構築している」や「『Google スプレッドシート』と『Google フォーム』で業務アプリケーションを開発した」「『Google サイト』でポータルを作成、『Google チャット』でQ&Aスペースを作成し運用している」など、アプリケーションを組み合わせて業務効率化に役立てているというコメントもあった。「Google Geminiの利用」のようにAI活用に取り組むケースもあった。
Office回帰の企業も 「M365」「Google Workspace」の不満ポイントは?
最後に、Microsoft 365とGoogle Workspaceに対する満足度を調査した結果を紹介する。
Microsoft 365を利用しているとした回答者は「満足」が13.5%、「まあ満足」が64.9%。Google Workspace利用者は「満足」が12.6%、「まあ満足」が67.7%となった(図5、図6)。さらにMicrosoft Office(パッケージ版)は、「満足が」が19.1、「まあ満足」が72.3%と満足度は最も高かった。
Microsoft 365が「満足」とした回答者の理由としては、「PCやスマホ、タブレットでの同期、共有ができるため」や「『SharePoint』『OneDrive』、Teams、Outlook、Microsoft 365が連携されていて便利と感じる」のように各アプリケーションの連携性が高いこと、複数デバイスで同期、共有ができることが挙がった。
一方、「不満」の理由は、アップデートと価格の2つに大別できた。前者は「アップデートされると、都度操作を覚え直さなければならない」や「予告なくアップデートがあり、その都度設定内容が初期化され、再設定が必要になる。いちいち設定内容を覚えていないので毎回時間をかけて設定しないと元の環境にならない」といったコメントだ。ただし「勝手にアップデートされるのが良くないが、バグ修正もされるので何とも言えない」と一定の理解を示す回答もあった。後者の価格については「Microsoftが頻繁に値上げするので、コスト抑制のため年契約をしている。気軽にライセンスを追加して不要になれば削減するといったサブスクの良さがない」や「値上げやユーザー側に不利な規約変更を繰り返している」など、繰り返される価格改定への不満が寄せられた。
Google Workspaceは「メールやカレンダー、共有ドライブ、Meetと、安価で使えて便利」や「ブラウザでスプレッドシートや文書、スライドを軽快に作成できる。ファイル間連携も容易だ」「費用対効果がある」などの称賛のコメントがあった。
一方で、「不満」とした回答者からは、主に使い勝手に関する改善の要望があった。「Google スプレッドシートやGoogle ドキュメントなどのオフィス系ツールが使いづらい、他社製品との連携がしづらいと感じる」や「使い勝手が悪くMicrosoft Officeを再導入するようになってきている」「互換性などに不便あり」にみられるように、Microsoft Oficeeユーザーが多い日本市場では、他社アプリの使い勝手や互換性に不便を感じるケースも少なくないようだ。
最後にMicrosoft Office(パッケージ型)の満足、不満のコメントを紹介する。「満足」とした回答者からは、「買い切り型のため、継続コストがかからない」や「サブスクに比べて安価になる」といったコストメリットに関するコメントが寄せられた。「使い心地が良い」や「使い慣れている」との声もあった。
長年使い慣れている人が多いせいか、Microsoft Office(パッケージ型)に対する大きな不満はみられなかったが、「もう少しライフサポート期間が長いと良い」と、適切なサポートの元で長く使い続けたいという要望が挙がった。
以上、ここまでオフィススイートの代表格である「Microsoft 365」や「Google Workspace」「Microsoft Office(パッケージ型)」を取り上げ、利用メリットやデメリット、活用シーンなどを紹介してきた。オフィススイートはさまざまなアプリケーションやサービスが利用できるだけに「どう活用するか」が業務効率化や生産性向上を左右する。今後も活用事例やノウハウのメディア発信を参考に自社にあった運用を検討してほしい。
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ソフトウェアやアプリケーションに生成AIを組み込むベンダーの動きが盛んであり、Microsoftもその一社だ。2023年11月に「Copilot for Microsoft 365」がリリースされ話題となったが、利用状況はイマイチのようだ。