内部不正で一番怖いのは何? 調査が語る内情とは
デジタルデータソリューションは2024年度の社内不正被害に関する実態調査の結果を発表した。それによると特定の被害が約半数を占めていたという。
デジタルデータソリューションは2025年4月23日、2024年度の社内不正被害に関する実態調査の結果を発表した。同年度に社内不正の被害を経験した全国の企業220社を対象に調査を実施した。
その結果、ある被害が全体の約46%を占めたことが分かった。
内部不正で一番怖いのは何? 調査が語る内情とは
主な調査結果は次の通り。
- 社内不正事案の内訳でもっとも多いのは「情報持ち出し」(約46%)
- 社内不正が多い業界は製造業とサービス業で、情報持ち出しや労働問題が約6割を占めた。両業界とも3年連続で不正が多い業界にランクイン
- 情報持ち出し被害が発覚した経緯として「他の従業員からの報告」が最多で19%、次いで「社内データ削除の発覚」が15%
- 社外に持ち出された情報には、顧客情報や技術に関する機密情報、業務データなど、他社で利用価値のある情報が含まれる傾向がある
- 4月〜5月の人材入れ替わり時期に情報持ち出しが多く発覚し、過去3年間の調査でも4月から6月に集中していた
この調査はデジタル機器の解析技術を活用して不正の証拠を特定する「デジタルデータフォレンジック」サービスを提供する同社が、不正行為の実態を明らかにすることを目的として実施したものだ。
警察庁の統計によれば、全国の警察が受理した企業情報の持ち出しなど営業秘密侵害に関する相談件数は年々増加傾向にあり、2024年には79件が報告されている。加えて2024年4月に施行された不正競争防止法の改正も実施の背景として挙げた。
誰が情報を持ち出し、どの業界で被害が多いのか
2024年度に社内不正が発生した企業のうち、情報の持ち出しは退職者が約29%、在籍中の従業員が約15%、派遣・業務委託者が約2%だと分かった。特に在籍中の従業員による事案は前年の11%から増加した。一方で、退職者による事案は前年の43%から減少した。
業種別では製造業とサービス業での社内不正が顕著であり、情報持ち出しや労働問題が全体の約6割を占めた。両業界は3年連続で不正事案の多い業種として報告されている。
被害企業に対する追加の調査によると、情報持ち出しが発覚するきっかけとしては、「他の従業員からの報告」(19%)が最多で、次いで「社内データ削除の発覚」(15%)が続いた。「機器パスワードの消失」による発覚も11%に上り、退職予定者が意図的に情報を隠蔽(いんぺい)するケースが背景にあるとみられている。
社外に持ち出された情報には顧客情報や技術に関する機密情報、業務データなど他社で利用価値の高いものが含まれていた。情報の持ち出しが最も多く発覚する時期は、年度初めの4〜5月であり、過去3年の調査でも4〜6月にかけて発覚件数が集中する傾向が確認されている。
同社が実際に対応した事例として、元従業員が顧客情報を持ち出して転職先の企業と共謀し、顧客引き抜きを試みたケースや、派遣社員による商談記録とツールマニュアルの不正持ち出し、退職予定者によるセキュリティカードの不正使用とPCへのアクセスなどが報告されている。
本調査はデジタルデータソリューションが2024年4月から2025年3月にかけて実施したアンケートによるもので、社内不正リスクの把握と対策の参考として企業にとって重要な情報となる。
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