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おじさんにはつらい時代?  “学びの主戦場”は動画にあり

現場主導の内製化では、非IT人材がどのようにスキルを習得するかが重要だ。ある企業でシステム開発に取り組む現場の若手従業員が発したのは、筆者に新しい時代の到来を感じさせるある言葉だった……。

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 ノーコードツールがシステム開発の現場を大きく変革している場面を目にする機会が増えた。多くの企業に取材をする中では「内製化」「システム部門や外部ベンダーに頼らない」「現場業務の仕組みは現場で作り上げる」というキーワードがよく登場する。

 生成AIの加速度的な進化とともに、システム開発の現場が大きく様変わりしていることを実感する日々だ。しかし、今回の取材で驚いたのはノーコードツールをフルに使いこなす取り組みそのものよりも、もともと非IT人材だった若手開発担当者のスキルの習得方法だった。

「マニュアルは一切見てないんです」って、どういうこと?

 先日、東北の製造業に取材した折、現場の業務システムをノーコードツールで刷新し、現場主導で日々改善しているという取り組みを耳にした。話を聞いたのは、現場部門のトップと実際に開発を手掛けたメンバー、そしてセキュリティやガバナンスの観点から技術的に支援するシステム部門の計3名だ。

 具体的な開発範囲としては、現場の生産計画から実績記録を基にした原価管理、物流にひもづく在庫管理など、製造業におけるコアな業務基盤に関するものが中心だ。従来は基幹システムで運用していた領域を現場部門で開発、運用しているという。

 まさにノーコードツールをフルに使いこなしているようだったが、実際に開発を手掛けたのは数年前に新卒で入社した、プログラム開発経験のない文系出身の女性従業員だという。IT経験はもちろん、製造現場も経験していない若手が開発を主導したという取り組みは素晴らしいものだが、その学びの手段を聞いて驚いた。「実は、マニュアルは一切見ていないんです」

 Webに多くの情報が散在しているソリューションを利用しているため、必要な情報や困ったことがあれば簡単に調べることは可能だろうが、その学びの多くは動画を主体としたものだという。私も取材前に「YouTube」でツールの特徴を調べることがあるため、同様の手法なのだろうと思っていた。ただし、さらに話を聞いたところ、どうやら「Instagram」や「TikTok」の動画が中心だという。「われわれ世代はYouTubeになじみがなく、見る場合でもショート動画ばかり。Instagramなどの方が短い時間でうまく編集されており、必要な情報が得やすい」という。これには隣で話を聞いていた同社のシステム部門担当者も驚いていた。

 企業のマーケティング施策として、最近ではショート動画を導線に尺の長い動画につなげるケースが増えていると聞いていた。いわゆるショート動画をランディングページにして、自社の動画につなげるのが最適なアプローチとされてきているようだ。

 「動画にない情報はどうしているのか」と聞くと、「ChatGPT」や「Google Gemini」から必要な情報を入手するらしい。多少あいまいな問いでも生成AIであれば最適な情報にたどり着きやすいようで、ソリューションを提供するベンダーのコンテンツは一度も確認したことがないという。そうなのか……。

私のようなおじさんにはつらい時代 学ぶ姿勢が問われ続ける

 メディアに記事を書く身として、テキスト情報ではなく動画コンテンツが重宝される時代に求められる情報提供の在り方を考えさせられた出来事だった。テキスト情報も検索エンジンン向けのSEO対策から、生成AIに最適な構造を意識したコンテンツ制作が求められるように変わることは間違いない。

 そのあたりのノウハウが全くない筆者にとって、記事を見てもらうための最適化手法を学ぶ必要があることを痛感した。過去の経験やノウハウが音を立てて崩れていく気がした。


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