IT人材育成に成功しても残る「不満」とは? IDC調査
IDCの調査によると、IT人材育成に成功している企業とそうでない企業には埋められない「大きな差」が存在する。しかし、育成に成功した企業でも「不満」を感じているという。それは何か。
生成AIやノーコードツールの活用が進み、業務や経営の在り方が変化する中、競争優位性を維持するために企業はどうすべきか。
デジタルスキルを育成に成功した企業が感じる「不満」とは?
DXの普及に伴って、日本企業ではITやデジタル技術の「民主化」が進んでいる。IDC Japan(以下、IDC)は、「従来IT部門が担ってきた業務が事業部門や経営層でも対応可能になっている」と見ている。
その中で同社が「競争優位性を保つために必須」としているのがデジタルスキルの育成だ。
同社が実施した、国内のユーザー企業におけるデジタルスキル育成についての調査によると、デジタルスキル育成の成否と「ある全社プロジェクト」の進捗(しんちょく)には強い相関があることが分かった。また、デジタルスキル育成に成功した企業でも、その成果に満足していないという。その理由と、育成の成果を拡大するために求められる取り組みとは。
今回の調査によると、DXに積極的に取り組む企業(「先行‐良好企業」)はスキル育成で座学だけではなく人を介した育成やAIを活用していることが分かった。
対照的に、DXの取り組みが遅れている企業(「遅行‐不良企業」)では、スキル育成の方法が「社内外の座学の研修」に偏っている。さらに5社に1社が「スキル育成を実施していない/分からない」と回答しており、深刻な状況が浮き彫りになった。これらの結果は、デジタルスキル育成はDX進展のために不可欠であることを示唆しているとIDCは指摘する。
また、スキル育成の効果や成果を尋ねた調査結果では、DXの取り組みが遅れている「遅行‐不良企業」では20%未満の企業しか一定の成果を実感していないのに対し、「先行‐良好企業」では70%以上が成果を収めていると回答していた。
育成で得られたナレッジをいかに共有するか
しかし注目すべきは、「先行‐良好企業」でも約30%の企業が成果や効果に満足しておらず、さらなる改善を感じていることだ。このことから、デジタルスキル育成の困難さが分かる。
調査結果を受け、IDCの鈴木 剛氏(Tech Buyer リサーチマネージャー)は、「DX戦略の実現には必要なスキルセットを明確に定義し、現状とのギャップを分析した上で最適な育成計画を実行することが重要だ。育成においては、座学に加えてDXプロジェクトへの参加など実践的な経験の機会を提供することも不可欠だ。育成で得られたナレッジをコンテンツとして蓄積し、生成AIなどのツールを活用して共有することで、組織全体の育成とナレッジ共有を促進し、企業文化の変革につなげるべきだ」とコメントする。
同調査は、国内企業のデジタル人材育成とナレッジ共有の実態を把握するため、国内の従業員300人以上のエンドユーザー企業に所属するIT戦略策定や予算の決裁、情報システム部門の管理に関わる300人を対象として2024年5月にアンケート形式で実施された。
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