「儲かっていてもIT投資をケチる」会社の共通点は? 【調査】
IT投資の全体的な増加傾向は2025年も継続する見込みだ。しかし、ノークリサーチによると、業績の伸びとIT投資額の伸びが必ずしも連動しない業種がある。「儲かっているのにIT投資は渋る」企業の共通点とは。
IT投資は世界だけでなく日本でも全体的に増加傾向にある。キーマンズネットによる調査でも、増加幅はやや縮小する傾向にあるが、2025年度も依然として増える見通しだ。
ただし、企業規模や業種によってIT投資の傾向はやや異なるようだ。ノークリサーチが国内企業を対象に実施した、2025年の業績およびIT支出の見通しに関する調査結果を見てみよう。
「IT投資を増やさない企業」の共通点
2025年における企業の業績(経常利益)とIT支出の見通しを尋ねる設問に対し、「業績は増加、IT支出も増加」と回答した割合は29.1%だった。「業績は増減なし、IT支出も増減なし」(17.4%)や「全く予想がつかない」(18.3%)という回答を踏まえると、「日本企業全体が好転するとはいえない状況だ」とノークリサーチは分析する。
「業績は増加、IT支出も増加」という回答の割合を年商別に集計した図を見ると、年商500億円以上の大企業は47.1%に上った。一方、年商5億円未満の中小規模企業で同様の回答をした割合21.5%にとどまっており、大企業と小規模企業で明暗が分かれていることが分かる。
日本では大企業が約3500社に対し、小規模企業は約122万8300社と圧倒的に多いことから、「日本国内のIT活用を底上げするためには、広い裾野を意識した施策を進めることが大切だ」とノークリサーチは提言する。
「業績もIT投資も上向き」の中小企業の特徴は?
一方、「業績は増減なし、IT支出も増減なし」という項目を選んだ回答者の割合は大企業では低く、小規模企業では高くなっている。小規模企業で同項目を選んだ割合は2割超だった。
小規模企業において業績とIT支出が共に上向かない背景は何か。
図3は業績やIT支出の増減の背景、要因となる事柄のうち、「業績は増減なし、IT支出も増減なし」に該当する小規模企業における回答割合が、全体平均と比べて増減が10ポイント超である2項目を挙げたものだ。
業績とIT支出で共に増減が見られない小規模企業では「価格転嫁の停滞」という課題を抱える割合が過半数を占めている。一方で、「企業文化の変遷」では全体よりも10.9ポイント低かった。
「業績は増加、IT支出も増加」している企業における「企業文化の変遷」の値を年商別に集計した図4を見ると、「企業文化の変遷」を背景、要因として挙げる割合は全ての年商帯で全体平均よりも高かった。特に、年商規模が小さな企業ほど当該項目を選択する割合が高い傾向にあった。
これらの結果から何が言えるのか。ノークリサーチは、「従業員数の少ない小規模企業においても働き方改革や世代の違いに起因する企業文化の変遷を前向きに捉え、ITツールによる新たな情報共有や意思決定のプロセスを創り出していくことが、業績やIT支出の増加という点においても有効に働く」と分析する。
建設業がIT投資を「ケチる」理由は?
同調査では、業種別の集計、分析も実施した。業績(経常利益)とIT支出の2025年における見通し(2024年と比べた時の増減)を尋ねた結果のうち、「全く予想がつかない」という回答の値を業種別に示したのが図5だ。
「全く予想がつかない」の回答割合は製造業と建設業では全体平均よりも低く、卸・小売業やサービス業では高い。建設業は4つの業種区分の中では「全く予想がつかない」の回答割合が最も低く、不確定要素が比較的少ない業種といえるだろう。
ただし、建設業では「業績は増加、IT支出は減少」(A)と「業績は減少、IT支出は増加」(B)の値がいずれも全体平均と比べて高い。
AとBのケースで全体平均と比べた差異が顕著な背景、要因は何か。「業績は減少、IT支出は増加」を選んだ企業は、「海外企業による日本国内への工場誘致」が高い値を示している。
これらについて、ノークリサーチは、「海外からの工場誘致の影響を受けている建設業は、業績が悪化する見通しでもIT支出は増加する傾向にある。一方でコスト上昇に見合う値上げができなかったり、賃上げ要請などが足かせとなる人材不足という課題を抱えている建設業は、業績は好調でもIT支出を抑制する傾向にある」と分析する。
なお、今回紹介したノークリサーチの調査は、国内企業で経営またはIT管理、運用に携わるビジネスパーソンを対象として2025年1月5日にWebアンケート調査として実施された(有効回答数:1304)。
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