電通はAIエージェントをどう使っているのか? ちょっと未来のマーケティング
電通デジタルと電通データ・テクノロジーセンターが「AWS Summit Japan 2025」に登壇し、「Amazon Bedrock Agent」や「AWS Clean Rooms」の活用で、広告施策の効率化と高度化を実現する事例と展望を紹介した。
山本 覚氏(執行役員 CAIO<最高AI責任者>)と電通データ・テクノロジーセンターの前川 駿氏は2025年6月開催の「AWS Summit Japan 2025」で、独自のAIエージェントを構築できる「Amazon Bedrock Agent」を活用した広告領域でのデータ活用事例や、生成AIを活用した業務効率化、高度化の最新アプローチについて紹介した。
電通が語る、Amazon Bedrock Agentによる広告の高度化
電通デジタルはAIを活用したマーケティングソリューションブランド「∞AI」を展開している。広告クリエイティブの生成や業務自動化のためのソリューションを展開している。その上で山本氏は、新たな注目領域としてAmazon Bedrock Agentを取り上げ、これまでテキストや画像中心だった生成AIが対話エージェントに進化することで、広告施策にどのような新しい可能性が生まれるかを語った。
前川氏は、企業が保有するファーストパーティデータとプラットフォーマーデータを活用する取り組みについて「現代ではデータがさまざまなサイロに分断されており、これらをセキュアに結び付けることが課題となっています」と説明し、「AWS Clean Rooms」によるデータクリーンルーム環境を採用する意義を説明した。
AWS Clean Roomsは複数企業間でデータを暗号化したまま共同分析でき、個人情報を保護しつつ施策立案に生かす仕組みを構築できる。前川氏はその実践例として、ECサイトと広告プラットフォームが連携することで、精緻なターゲティングが可能となり、クリック率やコンバージョン率が向上した成功事例を紹介した。
同社は対話形式でデータを探索できるAmazon Bedrock Agentを活用した業務変革も推進している。これまで専門家に頼らざるをえなかったデータ分析業務を、対話を通じて自然言語で実行する。「これによりマーケター自身が直接データにアクセスできるようになり、『気付き』が早まるだけでなく、施策スピードそのものが変わってきます」と前川氏は語る。
山本氏からは広告クリエイティブに関する最新動向も共有されている。とくに動画生成に関する取り組みとして、「Amazon Nova Reel」や「Amazon Canvas」といった生成ツールの活用を紹介した。これらは動画バナーを短時間で生成するだけでなく、広告主のKPIに応じた複数バージョンを自動的に展開できる点が特徴だ。
山本氏は広告クリエイティブににおける生成AI活用の状況を説明した。動画生成においては「Amazon Nova Reel」や「Amazon Canvas」などを活用し、動画バナーを短時間で生成して広告主のKPIに応じた複数バージョンを自動的に展開する仕組みを構築している。
同社は近い将来「ファーストパーティデータにプラットフォーマーデータを安全に重ね合わせて対話エージェントでその結果を読み解き、そのままクリエイティブ制作へとつなげる体験」がクリエイティブ制作の標準となる可能性があると見ている。その背景には、法規制への対応とテクノロジーの成熟が相まって、マーケティング業界がこれまでにないスピード感で変化を遂げている現状がある。
最後に前川氏は「広告施策の高度化はテクノロジーだけでなく、それを使いこなす人材と企業文化があってこそ実現する」と述べ、今後も電通グループとAWSが協力し、マーケティングDXの推進に取り組む姿勢を示した。
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