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「Microsoft 365には戻れない」とGoogleユーザーが考える2つの理由【2025年調査】Google Workspaceの利用状況(2025年)/前編

2025年の価格改定や生成AIサービス「Gemini」の標準搭載を受け、Google Workspaceの利用プランや満足度に変化が見られた。最新アンケート結果を基に、その背景を探る。

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 2025年7月にAppsRunTheWorldが発行した「WORLDWIDE COLLABORATION SOFTWARE MARKET FORECAST 2024〜2029」によると、コラボレーションアプリケーション市場は年間平均成長率6.3%で拡大し、2024年の271億ドルから2029年には368億ドルに達すると予測されている。

 「Google Workspace」と「Microsoft 365」は、コラボレーション市場をけん引する2大サービスだ。Microsoft 365は「Microsoft 365 Copilot」などの生成AIサービスを強化し、着実にユーザー数を伸ばしている。もちろん、Google Workspaceを使い続けているユーザー企業も多い。使い勝手やコストパフォーマンス、導入実績、AIサービスなど、企業から根強く支持される理由はどこにあるのか。本稿では、Google Workspaceに関する最新のアンケート結果(実施期間:2025年10月22日〜10月31日、回答件数:217件)を基に、Google Workspaceの利用実態を見ていく。

AIサービスで差を実感か 「Microsoft 365に戻らない」理由

 勤務先でGoogle Workspaceを利用している企業に対して、現在利用中のプランを尋ねたところ、「Business Standard」が50.0%と最も多く、次いで「Enterprise Plus」と「Business Starter」がそれぞれ19.4%となった(図1)。全体の約8割(80.6%)は「Business Standard」や「Business Starter」「Business Plus」などのBusinessプランを利用しており、特に従業員500人以下の中堅・中小企業では、利用割合が9割近くに上ることが分かった。


図1 勤務先で利用しているGoogle Workspaceのプラン

 Businessプランは利用ユーザー数が最大300人までという共通点がある一方、ストレージ容量やセキュリティ、管理機能などに応じて複数のプランに分かれている。例えば、本調査で高い利用割合を示したBusiness Standardは1ユーザー当たり2TBのストレージ、「Google Meet」の最大参加者数150人、月額料金は1600円だ。一方、月額800円のBusiness Starterは、ストレージ容量が1ユーザー当たり30GB、Meetの最大参加者数100人で、会議録画機能は利用できない(本稿公開時点)。

 前回調査(2023年12月実施)との比較では、Enterprise Plusの利用割合は9.4ポイント減少した一方で、Business Starterは9.8ポイント、Business Plusは5.5ポイント、Business Standardは3.8ポイント増加するなど、Businessプランの利用が全体的に伸びていた。2025年3月、Google Workspaceに生成AIサービス「Gemini」が標準搭載されるとともに価格改定が実施され、企業のプラン見直しや変更が進んだことも、この背景にあると考えられる。

 また、Microsoft 365などの他サービスへの移行の検討状況を尋ねたところ、「移行する予定はない」が64.5%と最も割合が高く、「移行を検討中」(8.1%)や「移行する予定がある」(4.8%)を上回った(図2)。満足度の高さもあり、移行を検討する割合は少ない。


図2 勤務先ではGoogle Workspaceから他サービスへ移行する予定はあるか

 Microsoft 365は、Microsoft 365 Copilotの機能拡充によりユーザー数を伸ばしているが、前述の通り64.5%が「移行しない」と答えた。Google Workspaceを選び続ける企業はどのような点を評価しているのか。アンケート結果から、その理由を整理した。

 移行しない理由をフリーコメントから整理すると2点にまとめられる。1つ目は「既に併用している」「他社製品から移行したばかり」といった理由だ。特にMicrosoft 365からGoogle Workspaceに移行した企業からは、「Geminiで十分」「生成AIサービスで考えるとGeminiに優位性を感じる」「アプリやサービスが多くて活用しきれない」「Microsoft 365に不満を感じ、Google Workspaceに移行したので戻れない」といった声が寄せられた。

 2つ目はコスト面での理由だ。「Microsoft 365はライセンス費用が高いため、できればこのままGoogleを使い続けたい」「Microsoft 365 Copilotはオプションなので、追加費用が発生する」といった声があり、生成AIサービスを含めた運用コストを踏まえてGoogle Workspaceを選択するという声もあった。実際には、Google WorkspaceとMicrosoft 365のビジネス向けプランにはほぼ同額帯プランもあるが、Microsoft 365 Copilotを利用する場合は別途アドオン契約が必要になることが影響していると考えられる。

「1500円以下」が前年比で減 Business Standard値上げが影響か

 次に、勤務先で利用しているGoogle Workspaceの1ユーザー当たり月額料金を尋ねたところ、割合の高い順に「1000円未満」(21.0%)、「2001〜2500円」(17.7%)、「1001〜1500円」(16.1%)、「1501〜2000円」(16.1%)となった(図3)。


図3 Google Workspaceの1ユーザー当たりの月額料金

 2025年3月の価格改定では、値上げ幅が大きい順にEnterprise Plusが3980円(580円増)、Business Plusが2500円(460円増)、Business Standardが1600円(240円増)、Business Starterが800円(120円増)となった。この影響もあり、前回調査(2023年12月)と比べて月額料金の上昇傾向が顕著だ。実際、前回は全体の51.9%が「1500円以下」と回答したのに対し、今回は37.1%に減少しており、利用率の高いBusiness Standardの値上げが調査結果に大きく反映されたと考えられる。

 関連して、Google Workspaceの購入経路を調査したところ、「パートナー会社(販売代理店やリセラー)経由」が38.7%、「Googleから直接購入」が33.9%とほぼ二分された(図4)。

 この結果を従業員規模別で見ると、101〜1000人規模の中堅企業はパートナー会社経由の購入が多く、1001人以上の大企業はSIerやサービス会社を通じて一括購入する割合が高い。同じ間接購入でも、企業規模によって間に入る会社の種類が異なる傾向がみられる。中堅・中小企業では、導入支援や運用サポート、請求代行といったニーズからパートナー会社を利用するケースが多く、大企業では他のITインフラや業務システムと一緒に導入するSI案件の一環としてSIer経由が中心となっていると考えられる。


図4 勤務先ではGoogle Workspaceをどこで購入したか

 なお、Googleは販売代理店やリセラー向けに、専門性や実績に応じてパートナー割引やインセンティブを受けられる「Google Cloud Partner Advantage」というプログラムを提供している。販売代理店やリセラーはこれらの割引やインセンティブを顧客への価格割引や独自キャンペーンの原資に活用できるため、パートナー選びの際にはこうした点も考慮するといいだろう。

85%が満足も、アップデート対応に課題か

 最後に、Google Workspaceの利用満足度について尋ねたところ、「満足」が25.8%、「まあ満足」が59.7%で、合わせると85.5%となった(図5)。


図5 Google Workspaceに対する満足度

 フリーコメントから満足理由を分析すると、大きく2点が挙げられる。1つ目は、複数のアプリケーションをシームレスに利用できる点だ。「Webブラウザでほぼ全てのAI機能が利用できる」「社内情報連携ツールとして便利に使える」といった声が寄せられた。2つ目は、安定した動作だ。「レスポンス遅延がほとんどない」「ブラウザアプリ利用が安定している」といった点も、高評価の要因となっている。

 一方、不満点としては、アップデートに伴う対応負荷が挙げられた。「予告のないアップデートで問い合わせや修繕が増加した」「突然の仕様変更への対応が大変」といった意見が目立った。

 以上、本稿では企業におけるGoogle Workspaceの利用概況を紹介した。後編では、生成AIサービスのGeminiや、支援ツール「NotebookLM」にフォーカスし、利用状況や活用シーンを探る。

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