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AIエージェント化の裏で進む、M365のガバナンス強化 Teamsに「EXIF自動削除」実装もMicrosoft 365最新アップデートまとめ

CopilotのエージェントモードがWordにも対応し、日常業務の効率化が一層進むと期待される。一方、TeamsのEXIF情報削除などプライバシー保護に関わる仕様変更もあり、情報システム部門には正確な把握が必要だ。

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 「Microsoft 365」に含まれる各種アプリに対し、多数の重要なアップデートが実施された。今回の更新では、ドキュメントを直接編集できる「Copilotエージェントモード」の拡充などAI機能の進化が目を引く一方で、日々の業務基盤となる「Microsoft Teams」(Teams)などにおけるセキュリティや利便性の向上も押さえたいポイントの一つだ。

 本稿では、IT部門および情報システム担当者が把握すべき変更点を、3つの観点から整理して解説する。まず、運用ルールに直結し迅速な対応が求められる「プライバシーとガバナンスへの影響」、次に「日常業務におけるUI/UXの改善と生産性向上」、最後に「Copilotによる業務プロセスの改善」の順で取り上げる。

本稿は、内田洋行の太田浩史氏(エンタープライズエンジニアリング事業部)による「聞きたい!知りたい!おさえたい!今月の Microsoft 365アップデート」の講演内容を編集部が再構成したものだ。

知らぬ間の情報漏えいを防ぐ、EXIF情報の削除と運用変更の注意点

 AI機能の華やかな進化の裏で、情報システム担当者が押さえておくべきポイントとして、セキュリティとプライバシー保護に関する仕様変更が挙げられる。今月は特に、日常業務に直結するTeamsにおける画像の取り扱いに関して重要なアップデートが実施された。

プライバシーとガバナンスへの対応 Teamsの画像EXIF削除

 Teamsのチャットやチャネルに画像を添付した際、画像ファイルに含まれるEXIF情報が自動的に削除されるようになった。


チャットなどに添付された画像のEXIF情報を削除(出典:セミナー投影資料)

 EXIFとは、撮影日時やカメラ設定などを記録するメタデータ規格であり、スマートフォンで撮影された画像にはGPSによる位置情報が含まれる場合もある。こうした情報が意図せず第三者に共有されると、ユーザーの行動パターンや所在地を特定されるリスクがある。外出先から撮影した写真をTeamsに投稿するケースが一般化している現在、この自動削除機能は、日常業務に潜む情報漏えいリスクを未然に防ぐ観点から重要なガバナンス強化策と言える。

 一方で、業務上の要件によりEXIFデータを保持したまま画像を共有したい場合もある。

 その際は、画像ファイルを一度「OneDrive」にアップロードし、そこからTeamsで共有する必要がある。情報システム部門としては、この新たな運用ルールを社内に適切に周知し、画像の取り扱いに関するポリシーの見直しを検討することが望ましい。

 また、こうしたセキュリティ面の強化に加え、日常業務における使い勝手の向上も進められている。Teamsや「Outlook」「SharePoint」「Planner」「Viva Engage」といった各アプリでは、業務上の摩擦を軽減する細かなUI/UX改善が積み重ねられており、結果として全社的な生産性向上に寄与するアップデートとなっている。

検索の視覚化とネットワーク状態の把握

 Teamsの検索機能がさらに強化され、ファイルに絞った検索結果をサムネイル付きのグリッドビューで確認できるようになった。検索結果画面右上の表示切り替えボタンで簡単に切り替えられ、ファイルが大きなタイル状で並ぶため、内容を視覚的に把握しやすく、目的のファイルを素早く見つけられる。

 さらに、Teams会議中には自身のネットワーク強度が画面左下にインジケーターとして表示されるようになった。携帯電話の電波強度に似たアイコンで通信状況を直感的に確認でき、ネットワークが不安定な場合にはカメラをオフにする提案も表示される。また、他の参加者に通信問題がある場合は、そのユーザー名の横に通知アイコンが出る。外出先からモバイル回線やテザリングで参加するケースが増える中、通信トラブルの原因特定に役立つ実用的な機能だ。


自身の環境のネットワーク強度がインジケーターで表示(出典:セミナー投影資料)

エージェントモードの標準化

 注目すべき大きな変更が、WordやExcelのリボンメニューからCopilotを呼び出した際、ドキュメントを直接編集するエージェントモード(Copilotで編集)が既定で起動するようになったことだ。従来は、開いているドキュメントの内容を参照し、質問に答えてもらうチャット形式が既定の動作だった。今後はエージェントモードが最初に表示されるため、ユーザーはドキュメントを開いた直後から、AIに直接的な作業を依頼できるようになる。


WordやExcelからCopilotチャットを呼び出すとエージェントモードが既定で開く(出典:セミナー投影資料)

 通常のチャットに戻したい場合は、エージェントモードを終了した上で、チャット画面内の「Copilotで編集」を選択することで切り替えられる。

Wordへのエージェントモード追加で資料作成に変化

 これまでExcelでのみ利用可能だったエージェントモードの機能が、Wordにも追加された。ユーザーはチャット画面で指示を入力しながら、CopilotにWordドキュメントを直接書き換えできる。


エージェントモードの機能がWordに追加(出典:セミナー投影資料)

 文章の書き換えや推敲(すいこう)、最新情報への更新、フォーマットの適用といった多岐にわたる作業を、全てチャットで依頼できる。 社内の既存ファイルや外部のWebコンテンツを参照させながら編集を進めることも可能であり、一から資料を作成する労力を大幅に削減できる。資料作成における「下書き」「推敲」「清書」というプロセスのうち、多くの部分をAIに委ねることができ、生産性の向上が見込める。

ローカル保存のExcelファイルにも対応

 実務上の利便性を大きく高める変更として注目されるのが、手元のPCにローカル保存されたExcelファイルへの対応だ。これまでExcelでCopilotのチャット機能を利用するには、対象ファイルをOneDriveやSharePointといったクラウドに保存する必要があった。だが、実際の企業現場では機密性の観点からクラウド保存を避け、ローカルに保管されているファイルも少なくない。


OneDriveやSharePointにないExcelファイルでもCopilotチャットが利用可能に(出典:セミナー投影資料)

 今回のアップデートにより、こうしたローカル保存のExcelファイルでも、クラウドに保存されたファイルと同等のCopilotチャット機能が利用可能になった。エージェントモードも同様に動作するため、これまでAIの恩恵を受けにくかったデータにも活用の幅が広がる。

チャット履歴からの推論による「文脈の共有」

 AIが過去のチャット履歴を参照しながら回答を生成する新機能も追加された(利用にはMicrosoft 365 Copilotライセンスが必要)。「先週一緒に作成していた資料は、どのような方針だったか」と尋ねると、Copilotは過去のやりとりをさかのぼり、その文脈を踏まえた回答を提示する。


過去のCopilotチャットの内容が回答に反映(出典:セミナー投影資料)

 チャット履歴の参照は設定でオン・オフの切り替えが可能だ。無効化する場合は、Copilotチャット画面右上のメニューから「設定」→「個人用設定」と進み、「チャット履歴」をオフにする。また、特定の会話のみ参照させたくない場合は、該当するチャットを個別に削除しておく必要がある点にも留意したい。

クリック一つでファイル概要を自動生成 Copilotの新しい連携機能

 情報収集やファイル共有の導線にも、Copilotが組み込まれた。「Microsoft Edge」では、アドレスバーに検索キーワードを入力すると、検索候補の一覧に新たに「Copilotに質問」という選択肢が表示される。これを選択するとCopilotのチャット画面が自動的に開き、入力した内容がそのまま送信される。Web検索とCopilotへの質問をワンクリックで切り替えられるため、情報収集の流れがよりスムーズになる。


Edgeのアドレスバーから直接Copilotに質問可能に(出典:セミナー投影資料)

 さらに、デスクトップのエクスプローラーからファイルを共有する際にも、Copilotによる概要文の自動生成機能が利用可能になった(利用にはMicrosoft 365 Copilotライセンスが必要)。共有ダイアログの「Copilotを使用してファイルの概要を挿入する」をクリックするだけで、AIがファイル内容を解析し、適切な説明文を付与する。

 これまでOneDriveやSharePointのブラウザ操作に限定されていた機能が、デスクトップに同期されたファイルにも拡張されたことで、共有時にファイルの内容や意図を相手へ的確に伝えやすくなり、コミュニケーションの効率化にも寄与する。

会議要約のテンプレート化で議事録作成を自動化へ

 Teams会議終了後にCopilotが自動生成する会議要約について、あらかじめ書式を指定し、テンプレートとして登録できる機能が追加された(利用にはMicrosoft 365 Copilotライセンスが必要)。


Teams会議の要約の形式をあらかじめ指示可能に(出典:セミナー投影資料)

 「開催日や参加者情報を冒頭に整理する」「結論を先に提示し、詳細パートでは発言者名を明記する」といったルールを定義しておくことで、以降の会議要約は常にそのフォーマットに沿って生成される。作成したテンプレートは、会議要約の「カスタムのサマリー」タブから簡単に呼び出して再利用できるため、組織内での議事録フォーマットの標準化と作成効率の向上に役立つ。

Outlook、オフライン対応とモバイル画面の最適化

 新しいOutlookでは、インターネット接続がない状態でもカレンダーのイベントを追加、変更、削除できるようになった。移動中や通信環境が不安定な場合でも予定管理を止めることなく進められ、編集内容は接続回復時に自動で同期される。この機能を利用するには、設定画面で「全般」から「オフライン」へと進み、「オフライン時のメール、予定表、連絡先を有効にします」をオンにする必要がある。


インターネット接続のない状態でイベントを編集可能に(出典:セミナー投影資料)

 さらに、モバイル版Outlookでは、辞退した会議出席依頼の表示・非表示を切り替えられるようになった。新しいOutlookやWebブラウザ版では、辞退した会議を空き時間として残しておく機能があり、後から録画や要約を参照する際に便利だが、スマートフォンの小さな画面では出席予定の会議と区別しにくいというのが難点だった。今回のアップデートにより、モバイル端末上のみ辞退済みの予定を非表示に設定できるようになり、画面の見やすさが向上した。

SharePointとPlanner、情報とコミュニケーションの集約

 SharePointのニュースWebパーツでは、「すべて表示」リンクをクリックした際の一覧画面がグリッドレイアウトに刷新され、各ニュースの内容を視覚的に把握しやすくなった。さらに、Copilotライセンスを持つユーザーには、最近のニュース投稿を「音声(ブリーフィングを聞く)」または「文章(ブリーフィングを読む)」でまとめて確認できる。個別ページを開かずに概要を把握できるため、効率的な情報収集が可能だ。


ニュース、Webパーツの「すべて表示」がアップデート(出典:セミナー投影資料)

 また、Plannerでは各タスクに対して「タスクチャット」機能が個別に利用できるようになった。従来のタスクコメント機能に代わり、@メンションやいいね・絵文字リアクションなど、Teamsのチャットと同等の操作感でやりとりできる。メンションの通知はTeamsのアクティビティーに直接届くため、他のチャットとシームレスに管理できる。

Viva Engage、特定ユーザーのメッセージ非表示

 社内SNSのViva Engageでは、特定ユーザーのメッセージを非表示にする機能が実装された。プロフィールページや投稿のメニューから「メッセージを非表示にする」を選択すると、以降そのユーザーの投稿がホームフィードやメールダイジェストに表示されなくなる。


特定のユーザーのメッセージを非表示に(出典:セミナー投影資料)

  非表示にしたユーザーが他のスレッドに返信した場合は「このユーザーからのメッセージは非表示にされています」と表示され、必要に応じて内容をクリックして確認することも可能だ。これにより情報ノイズを減らし、より快適なコミュニケーション環境の構築に役立つ。

 今月のアップデートの最大のポイントは、単なる機能追加にとどまらず、AI(Copilot)がWordやExcelにおける既定の操作として業務プロセスの中核に組み込まれつつある点にある。また、ローカルファイル対応やチャット履歴からの推論など、実務上の利便性に直結する改善も相次いだ。一方で、TeamsにおけるEXIF情報の自動削除に見られるように、システム側でユーザーのプライバシーや安全を守る仕様変更も導入されている。

 情報システム部門には、エージェントモードなど強力なAI機能の現場定着を支援するだけでなく、クラウドとローカルファイルの適切な運用、画像共有時の新ルールの周知といったガバナンス設計を含めた、包括的なAI活用基盤の整備が一層求められるだろう。

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