「属人化は悪」と言い切る前に 情シスが抱える“あの人しか分からない仕事”の見直し方
情シスの課題としてよく挙がる「属人化」。だが、全ての属人性をなくそうとすると、現場の知見や判断力まで失われることがある。問題は「あの人しか分からない状態」そのものではなく、その知見が共有されず、判断基準や引き継ぎ先がないまま業務が止まることだ。
「あの人に聞けば分かる」「この設定は担当者しか触れない」「判断はいつも同じ人に集まる」。少人数で社内ITを担う情シスは、こうした状態になりがちだ。属人化は業務継続のリスクとして語られることが多く、マニュアル化や標準化、引き継ぎの必要性が指摘される。
ただし、属人化をなくすことだけを目的にすると、現場で積み上がった知見や判断力まで平準化の対象になってしまう。大切なのは、誰かの経験に頼っている仕事を全て否定することではない。何を共有すべきか、どの判断を組織に残すべきか、どこから先は専門性として尊重すべきかを分けることだ。
「属人化は悪」と言い切る前に、残すべき知見を分ける
属人化という言葉は、しばしば「なくすべきもの」として扱われる。確かに、担当者が不在になると業務が止まる、トラブル対応のいきさつが追えない、設定変更の理由が分からないといった状態は、組織にとってリスクになる。一方で、現場の事情を踏まえて判断できる人がいること自体は、必ずしも悪いことではない。
見直したいのは、「その人にしかできない仕事」が本当に専門性なのか、それとも記録や手順、判断基準が残っていないだけなのかという点だ。属人化を単純に排除するのではなく、共有すべき情報と、専門性として生かすべき知見を切り分ける。情シスの属人化に対する向き合い方を扱ったこの記事は、属人化対策を“担当者依存の解消”だけで終わらせないための視点になる。
一人情シスを問題にする前に、情シスが全部抱える構造を見る
一人情シスは、しばしば危うい体制として語られる。問い合わせやシステム運用、アカウント管理、ベンダー対応、現場からの相談まで、一人に集まれば、業務が止まるリスクも、担当者の負荷も大きくなる。ただ、一人であることそのものよりも問題なのは、社内のITに関する判断や改善が、情シス担当者だけに集まり続ける構造だ。
現場が自分たちで改善できることまで情シスに渡していると、情シスはいつまでも“何でも屋”のままになる。人数の少なさだけを問題にする前に、現場が持つべき役割と情シスが支援すべき範囲、経営が決めるべきことを、それぞれ分ける必要がある。「一人情シスは問題じゃない」という切り口の記事は、人数の少なさではなく、仕事の抱え方を見直すきっかけになる。
内製化できない理由を、予算不足だけで片付けない
システムや業務改善を内製化したいと考えても、思うように進まないことがある。その理由として「予算がない」「人が足りない」と説明されることもあるが、それだけでは本質を見誤る場合がある。内製化には、開発や運用のスキルだけでなく、業務部門との関係や判断の権限、失敗したときの責任の置き場も関わってくる。
属人化を避けようとして外部に任せ切りにすれば、社内に知見が残りにくい。反対に、内製化を掲げても、特定の担当者だけに知見や判断が集まれば、別の形の属人化が生まれる。内製化が進まない理由を調査から読み解くこの記事は、「外注か内製か」という二択ではなく、どの知見を社内に残し、どの作業を外に出すかを考える材料になる。
情シスは“御用聞き”で終わるのか、判断する部門になるのか
現場から「このツールを入れたい」「この製品を使いたい」と相談されたとき、情シスが依頼通りに手配するだけなら、役割は“御用聞き”に近づいていく。もちろん現場の要望を聞くことは重要だが、個別最適のままツールや仕組みが増えれば、運用や費用、問い合わせ対応の負荷は後から情シスに返ってくる。
属人化は、作業手順だけで起きるものではない。製品選定や導入判断も、特定の人の経験や声の大きい部門に依存すれば、後から見直しにくい。中長期的なIT戦略に基づいた製品選びを扱うこの記事は、情シスが単に依頼を処理するのではなく、判断基準を持って関与する必要性を考える上で参考になる。
正論だけでは回らない、情シスの判断と妥協点
情シスの仕事には、技術的に正しい判断と、組織として現実的な判断の間で迷う場面がある。理想を言えば避けたい運用でも、予算や人員、現場の業務都合を踏まえると、すぐには変えられないこともある。そこで必要になるのは、正論を掲げることだけではなく、どこまでを許容し、どこから先は譲れないのかを説明できる判断軸だ。
属人化した現場では、この判断も担当者の経験に依存しやすい。「あの人がそう言うならそうしよう」で進む状態は、短期的には早いが、判断の理由が組織に残らない。技術者倫理と現実的な妥協点を扱うこの記事は、情シスが一人で責任を抱え込まず、判断の前提や線引きを組織で共有するためのヒントになる。
まとめ 属人化をなくすより、判断を組織に残す
属人化対策というと、手順書を作る、担当者を増やす、外部委託する、自動化するといった施策が思い浮かびやすい。もちろんそれらは重要だが、属人化で問題になるのは、「誰かが詳しいこと」そのものではなく、「その人の判断や経験が組織に残らないこと」だ。
情シスの現場には、担当者の経験があるからこそ回っている業務もある。全てを平準化しようとするのではなく、残すべき専門性と、共有すべき判断基準を分けることが必要だ。手順は文書化し、判断の理由は記録し、現場が担うべきことと情シスが担うべきことを切り分ける。そうすることで、個人の知見を生かしながら、業務が特定の人に閉じる状態を避けられる。
「あの人しか分からない仕事」を責めるだけでは、現場は変わりにくい。なぜその人に集まっているのか、何が共有されていないのか、どの判断を組織に移すべきか。属人化を悪者にする前に、情シスが抱えている仕事の中身を分解することから始めたい。
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