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PaaSの次は、また「PaaS」? そろそろ考えたい「XaaS増えすぎ問題」

IT業界では、新しい技術やサービスの登場と同時に、次々と新しい略語が生まれてきました。ただ、言葉が増える一方で、本当に伝えるべき価値が見えにくくなる場面もあります。

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 IT業界は昔から略語が好きな業界です。SaaSやIaaS、PaaS、DaaS、AIaaS……。新しい技術やサービスモデルが登場するたびに、新しいアルファベットの組み合わせが生まれ、それが業界の共通言語として定着してきました。これは悪いことではありません。むしろ、複雑な概念を短く表現するためのものです。ですが最近、その流れが少し行き過ぎているのではないかと思わせる出来事がありました。

略語は増えた、でも、ユーザーに価値は伝わっているのか?

 既にご存じの方も多いかと思いますが、2026年6月16日にソフトバンクが発表した「Patching as a Service」、略してPaaSです。

 サービスそのものの内容についてはさまざまな評価がありますが、SNSやITコミュニティーで話題になったのは、むしろ「なぜPaaSという略称を選んだのか」という点でした。というのも、PaaSといえば多くのIT関係者にとって「Platform as a Service」を示す言葉として長年定着しているからです。

 もちろん、「Patching as a Service」をPaaSと略すこと自体は間違いではありません。ですが、既に広く使われている略称に新しい意味を重ねれば、混乱が起きるのは当然です。

 今回の騒動は、単なるネーミングの話として片付けることもできますが、見方を変えれば、IT業界全体が抱える「XaaS増えすぎ問題」を改めて考えさせる出来事だったとも言えます。そもそもXaaS(Everything as a Service)は、クラウド時代を端的に示す考え方です。

 サーバを購入せずに利用できるIaaS(Infrastructure as a Service)や、ソフトウェアをサービスとして利用するSaaS(Software as a Service)、アプリケーション実行基盤を提供するPaaS(Platform as a Service)など、従来は自社で所有していたものをサービスとして利用するモデルです。

 この考え方は非常に分かりやすく、多くの企業に受け入れられましたが、「Storage as a Service」「Desktop as a Service」「Security as a Service」「Monitoring as a Service」など、さまざまな領域で「○○ as a Service」が誕生しました。

 このあたりまでは理解しやすい分類です。でも、最近では、「それは本当に独立したカテゴリーとして成立するのだろうか」と感じるようなXaaSも少なくありません。気が付けば、サービスを説明するためではなく、新しい略称を作るために「○○ as a Service」が生み出されているようにも思えます。

 もちろん企業側にも事情があります。競争が激しい市場では、既存カテゴリーの中に埋もれないために独自のポジションを打ち出したいと考えるのは自然なことです。新しいカテゴリーを定義できれば、投資家や顧客への説明もしやすくなります。

 実際、「クラウド」や「DX」といった言葉も、分かりやすく伝えるという点で重要な役割を果たしています。ただ、次々と新しい言葉が生まれることで、ユーザーにとっては違いや意味を理解する負担が増える場面もあります。本来、略語はコミュニケーションを効率化するためのものです。

 ですが、「PaaS」と説明されたときに、「Platform as a Serviceですか、それともPatching as a Serviceですか」と確認が必要になるのであれば、それは情報伝達を効率化するどころか、むしろ認識コストを増やしていることになります。

 特にIT部門以外の担当者や経営層から見れば、SaaSですら十分に専門用語です。その上で新しいXaaSが次々と登場すれば、「結局、何をするサービスなのか」が見えにくくなってしまいます。

 利用者が本当に知りたいのは略称ではありません。「運用負荷を減らせるのか」「コストを削減できるのか」「セキュリティを向上できるのか」「人手不足を補えるのか」といったことです。重要なのはサービスが提供する価値です。

 もし説明を聞いた相手から「それで、結局、何をしてくれるサービスなのか」と聞き返されるのならば、そのカテゴリー名は利用者目線ではあまり機能していないのかもしれません。

 今回のPaaS騒動から見えたことは、単なる略称の重複問題ではないと筆者は考えます。IT業界が「名前を付けること」に熱中しすぎているのではないか、という問題のようにも思えます。もちろん、今後も新しいXaaSは登場し続けるでしょう。それ自体は自然な流れですが、新しい略語を生み出すことと、新しい価値を生み出すことは同じではありません。

 ユーザーにとって重要なのは、「どんなXaaSなのか」ではなく、「どんな課題を解決してくれるのか」です。せっかく新しいサービスを発表するのならば、まずは、その価値を分かりやすく伝えることが先決なのではないでしょうか。大切なのは、その先にあるサービスの本質を正しく届けることなのだと思います。

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