「テープ vs. HDD」メリデメ徹底解説:IT導入完全ガイド(2/4 ページ)
なぜ今、「磁気テープ」が復権しつつあるのか。HDDにその地位を奪われたかに見えたものの、データ量が増大するにつれ再び脚光を浴び始めた理由に迫る。最新動向やHDDとの違いなどを詳しく解説する。
日本を救う? バックアップテープが見直されるワケ
以前よりバックアップ用途に用いられてきた磁気テープだが、ここにきてその位置付けが変化しつつある。
バックアップはリカバリを必ずセットで考える必要があるが、RTO(Recovery Time Objective:目標復旧時間)やRPO(Recovery Point Objective:目標復旧時点)などを考慮すると、ビジネススピードが加速している昨今では「迅速に復旧できること」が前提となる。そのため、ランダムアクセス可能で復旧させやすいHDDを利用するケースが増えている。
しかし、頻繁にアクセスしないアーカイブデータなどについては、GB単価当たりのコストが安く高い信頼性が保証されているメディアに保管することが最良の選択肢だろう。この場面では磁気テープが有効だ。
また、災害時やシステム障害などからの復旧を考慮し、オフラインメディアとしてBCP対策に貢献する磁気テープがあらためて重要視されている。2011年3月に発生したGmailのデータ消失障害では、磁気テープを用いて復旧にこぎ着けたことが話題となった。データ保護の最後の砦としてオフラインメディアの有効性が明らかになった実例だろう。
ちなみに、磁気テープの総出荷容量はいまだに伸び続けているという現実があり、国産技術を施したバックアップテープはまだまだ有効な記録メディアとして期待されている。
なお、最近ではクラウド間でのデータ輸送にも磁気テープが利用されている。例えば10TBのデータを10Mb/sのネットワークで転送すると90日以上も費やしてしまうが、テープであれば既存サイトでの準備で1日、データ移送で2日、クラウドストレージへの展開で1日と4日前後で輸送が完了し、コストもわずか3分の1以下という試算が出ている。
コラム:データセンター全体の消費電力は日本の総電力量を超える? テープで省エネ対策
ある調査によると、データセンターの消費電力について興味深いデータが示されている。何と世界中にあるデータセンター全体の消費電力は、実は中国、米国、ロシア、インドに次いで5番目の規模と試算されており、日本全体で使う消費電力よりも大きな電力量が費やされているという。アクセス頻度の少ないデータを通電を必要としない磁気テープに保管しておくことは、グローバルなエネルギー効率の観点からも重要な視点だといえる。
テープを新たな領域に高める「LTFS」
磁気テープに関連した技術で注目したいのが、LTO-5より実装された「LTFS(Linear Tape File System)」と呼ばれる技術だ。LTFSはテープをファイルシステム化することで、あたかもHDDであるかのようなアクセスや管理、さらにはファイル共有環境を提供する。USBドライブなどを利用することでプラットフォームを超えたデータ共有も可能となる。
具体的には、テープ内にインデックス用のパーティションとデータ用のパーティションを用意し、ドラッグ&ドロップでファイルの読み書きが行えるようになる。
このLTFSがサポートされたおかげで、テープ内にあるメタデータを参照することで長期保管した場合でもそのデータが何なのかが素早く確認できるようになった。また、ベンダー独自の技術ではないためにさまざまな機器から参照、利用できる。
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