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「テープ vs. HDD」メリデメ徹底解説IT導入完全ガイド(3/4 ページ)

なぜ今、「磁気テープ」が復権しつつあるのか。HDDにその地位を奪われたかに見えたものの、データ量が増大するにつれ再び脚光を浴び始めた理由に迫る。最新動向やHDDとの違いなどを詳しく解説する。

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HDDとの違いを明確に、バックアップテープのメリデメ

 HDDとの比較からバックアップテープの能力について見ていこう。ここでは、幾つかの観点で磁気テープとHDDを比べてみる。


磁気テープとHDDの比較。※「3592」=IBM 3592、「T10kD」=StorageTek T10000D、「T10k sport」=オプションのSportカートリッジ装着時(出典:富士フイルム)

 HDDと比べてテープの方が可搬性に優れているのは言うまでもない。遠隔地へ輸送するには可搬性の優れた磁気テープに軍配が上がる。ただし、HDDは読み取り装置とデータ保管のディスクが一体化しており、テープの場合は読み書きのためのドライブが別途必要だということは念頭においておくべきだ。なお、最近ではHDDをカートリッジ化して持ち運べるRDX(Removable Disk Exchange system)と呼ばれる製品もある。

 平均的なアクセス時間は圧倒的にHDDの方が速く、頻繁に活用するデータの保存はHDDが最適だ。数十msのHDDに対して、ハイエンドテープの「StorageTek T10000D」で平均50秒あまり、オプションのSportカートリッジ装着時であっても平均14秒となる。磁気テープはランダムアクセスに向かない。なお、LTFSがサポートされたおかげで、以前に比べてインデックス情報に対するランダムアクセス性能は向上している。

 一般的なLTOで比較したところ、3.5インチHDDと比べてみるとLTO-6で3分の1程度のコストとなっており、価格は常に変動するものの、現時点ではHDDよりも磁気テープのほうが安価に入手できるものが多い。

 これからもデータ容量が増え続けることは間違いないため、スペース当たりに格納できる容量は重要なポイントになってくるはずだ。ここではStorageTek T10000Dを用いてスペース当たりの容量を比較したところ、磁気テープに軍配が上がった。StorageTek T10000Dでは、高さ2.54センチ、幅10.9センチ、奥行き12.5センチの筐体に8.5TBが格納できる。

 なお、磁気テープは現状テクニカルデモンストレーションでは1巻当たり35TBまでが検証されており、今後も1巻当たりのデータ容量は増加していくことが可能だ。研究レベルではあるものの、1巻当たり100TBという数字を視野に入れて今後検証していくベンダーもある。今後もデータ容量にはぜひ注目してほしい。

 耐久性については、磁気テープは加速試験で20年経過しても読み取りに問題ないという結果が出ており、ハイエンドテープでは保管期間が30年として明記されているものもある。最大5年保証とうたっているHDDもあるが、数字的には磁気テープのほうが耐久性に優れているといえる。

 なお、実際には技術の進歩に伴ってメディアも進化しており、転送速度なども考慮するとあるタイミングでマイグレーションが必要になるのが一般的だ。

 マイグレーションに関して、テープドライブは下位互換性が担保されていて、ドライブの世代が更新されても旧世代のテープのデータが読み出せる。LTOでは3世代(1世代約2.5年間隔)にわたりデータが読み出せるのでドライブを更新した際も最長8〜10年はデータマイグレーションの必要がない。一方、HDDではドライブの保障期間である3〜5年でマイグレーションが必要とされる。

 データ転送速度に関しては、ハイエンドテープである「StorageTek T10000D」で比較するとHDDよりも速度が速いという結果になり、ランダムアクセスでは遠く及ばないものの、大容量のファイルを読み出す際には転送速度はHDDよりも磁気テープの方が有利だ。

 ただし、LTO-6では非圧縮時で160MB/秒(圧縮時400MB)となりHDDとほぼ同等の速度となる。ビッグデータ解析などの場面で、大容量が転送できるテープにビッグデータを格納しておき、利用するときに一気に読み出すという活用例もある。

コラム:「LTO」と「RDX」の特長の違いは?

 タンベルグデータでは、LTO製品だけでなく、自社で開発しているカートリッジ型HDDの「RDX」製品の販売を行っている。どちらも持ち運びや外部保管が可能な点は共通だが、LTO製品が見直された理由には、テープとHDDのそれぞれの特長がどのような用途に向いているのかが明確になってきたことにあると見ている。

 震災以降、被災地の自治体を中心にデータの消失による復旧や復興の遅れが問題となったが、そこでテープ製品が見直されてきた。LTO-6の媒体は製品寿命が30年と長く、1本当たりDVD500枚分の情報が格納できる。データへのアクセス速度は遅いが、大量データの移行には手間も時間も軽減できるという利点がある。デイリーでのバックアップやファイル単位でのリストアではなく、アーカイブ的に保存するデータの保管には最適といえる。

 一方のRDXの特長は、手軽にバックアップとリストアが行えるという点にある。USBで接続したRDXドライブにカートリッジを差し込むだけで、OSからはローカルディスクとして自動的に認識する。コピー&ペーストでもデータの複製が可能なので、誰でも毎日のバックアップやデータの受け渡し、データ移行などに使用することが可能だ。RDXはドライブも価格が安く持ち運びに便利なため、複数のコンピュータのシステムバックなど、ドライブとカートリッジ両方の可搬性が必要な場合にも便利である。


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