スプレーで作れる発電機、「有機薄膜太陽電池」とは?:5分で分かる最新キーワード解説(2/4 ページ)
材料を何かにスプレーすれば発電できる新型太陽電池が登場した。ビル壁面だけでなく、ドーム型の屋根だって太陽電池パネルになる。
「有機薄膜太陽電池」の仕組みは?
現在私たちの身近な太陽電池はシリコンなどの無機材料を使用する。その発電の原理は有機薄膜太陽電池と基本的には同様だ。
無機材料の太陽電池は、伝導電子があり余っている「n型半導体」と、伝導電子が少なく電子が入り込む場所(正孔)が空いている「p型半導体」を接合して作る。n型半導体とp型半導体を接合すると、n型から電子がp型に流れ込み、n型はプラス、p型はマイナスに帯電し、安定する。
そこに光が当たると電子と正孔の対(クーロン力で束縛し合っている)がエネルギーをもらって動きやすくなり(励起するという。励起した電子と正孔の対は「励起子」という)、n型とp型の界面では、帯電で生まれた内部電界に引かれて電子はn型半導体に移動し、正孔はp型半導体に移動する。
この時に移動した電子がn型半導体の中の電子を玉突きのように押し出して、外部の回路などに出ていく。これが電力となる。
有機薄膜太陽電池の場合も有機材料でできたn型半導体とp型半導体の接合を利用する。n型半導体には、「フラーレン(C60)誘導体」と呼ばれる、比較的新しく作れるようになったサッカーボール状の炭素分子に化学修飾をしたものが使われる。p型半導体としては、「共役系ポリマー」「導電性ポリマー」「半導体ポリマー」などと呼ばれる、半導体の性質をもったプラスチックが使われる。それらを接合して作る有機薄膜太陽電池のイメージと起電力が生まれる原理を図2に示す。
図2に見るように、光を通す「透明電極」と金属の電極とで、半導体ポリマーとフラーレン誘導体が混ざった材料をサンドイッチにする構造だ。光が半導体ポリマーに当たり、エネルギーをもらってできた励起子がp-n接合の界面にくると、電子と正孔が分離(電荷分離)して互いに逆方向(電極の方向)に移動していく。
なぜp型とn型の材料が整然と重なるのではなく混ざり合わされているのだろうか。実は、図3に見るように、以前開発された有機薄膜太陽電池では、無機太陽電池と同じように材料を平たく重ねる構造だった。しかし、なかなか電力変換効率が上がらなかった。電荷分離が起きるp-n接合の面積が小さいのが原因だ。そのため、現在ではp型半導体とn型半導体をナノサイズで混ぜあわせ、小さなp-n接合を無数に作り出して全体として接合面積を上げたわけだ(図3)。
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