災害の教訓を今こそ生かせ、強靭で柔軟なサプライチェーン構築:すご腕アナリスト市場予測(3/5 ページ)
東日本大震災や熊本地震など、災害によるサプライチェーン断絶を防ぐための柔軟で強靭(きょうじん)なサプライチェーン構築の考え方を大解剖。
BCP対応を含んだ新時代のSCMの要件
それでは、大災害による工場などの被災によるサプライチェーンの一部停止を考慮した、新しいSCMはどうあるべきだろうか。その1つのイメージを図1に示す。以下ではこの図を基に、何をなすべきかを考えてみる。
図1下部の3つの対策が、上部の各対策を実施するためのエンジンとなる。順に簡単に説明しよう。
全社横断でサプライチェーンリスクを軽減する活動を旗振り、実行する組織の設立
事業部や工場をまたいだ部品共通化の取り組みなど、全社レベルでベクトルを合わせる必要のある対策を実施できるように、全社横断の旗振り組織を設立する。
サプライチェーンネットワークを横断した 情報共有の仕組み(スマートSCM構想)
災害発生時、サプライチェーンネットワーク上の全ての自社、納入先、サプライヤーの被災状況、在庫状況、生産計画などを迅速に共有できる仕組みを構築し、意思決定をサポートできる仕組みを構築する。
被災時に選択する手段ごとに会社収益への影響を試算できる仕組み
災害発生時、検討済みの幾つかの代替手段のうち、どれを選択すると、どの程度財務諸表に影響を及ぼすかのシミュレーションができ、経営者の意思決定を支援する仕組みを構築する。
自社被災リスクの軽減対策
次に大事なことは、災害の1次被害をどう防ぐかだ。これは自社内の取り組みとなる。
倉庫、工場の強度増強
施設、設備が「壊れない」ことがまずは望まれる。第一義的には従業員の安全確保、その次に設備や商品、部品の倒壊、損壊リスクを低減することが目的になる。建物の強度の向上は重要な対策の1つだ。
工場、倉庫ロケーションの再配置
大規模地震による広域被災リスクを考慮して、工場や倉庫を地理的に分散して配置すること、また津波リスクを考慮して内陸部へ移動することを検討する。東日本大震災以降、東京ではベイエリアへの立地を避ける企業が増えている。
また物流の停滞も考慮に入れる。地震ばかりでなく台風などで出荷できなくなるケースは、全国に倉庫を展開している企業では実際に年に数度という頻度で起きている。あるエリアの物流が止まったとき、別のエリアの倉庫から代わりに出荷できる体制が望ましい。各エリアの物流拠点の情報を集め、出荷拠点と出荷数量を適切に指示できるシステムを構築している企業は実際にある。
代替工場への生産移管が可能なプロセスの構築
自社工場が被災して復旧に時間がかかる場合を想定して、別の工場に生産移管が行えるように、工場横断で業務プロセスやマスター情報、一部設備や金型を標準化する。
代替工場に生産を移管する手順の構築
自社工場が被災して復旧に時間がかかる場合を想定して、別の工場に生産移管が行えるように、ヒト、システム、設備、材料、物流について、生産移管に必要な作業を手順化しておく。
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