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セルフサービスBIを使いこなす、社員1100人以上に普及させた導入術とは?(2/3 ページ)

セルフサービスBIを使いこなす従業員が1100人もいるNTTデータ。ユーザー部門が主体となってダッシュボード制作やデータ分析やできるといわれるセルフサービスBI、そこで情シスが持つべき役割は何だったのだろうか?

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(2)どこからセルフサービスBI導入を始め、展開するか

フェーズ2 プロトタイピング&Quick-wins

 図3右に見るように、このパターンのデメリットの1つは「普及までに時間がかかる」ことだ。普及には、ユーザーが現実の効果を感じることができなければ進まない。

 黒木氏は「当初Tableauの良さを他部門に説明して回ったが反応は芳しくなかった。新しい技術の導入は仕事のやり方や組織文化に少なからず影響するので、アーリーアダプターとなる部門の効果を様子見する部門が多い。そこで、まずは興味を持つユーザー部門を見つけて、ITマネジメント室が連携して成功事例を作り、他部門に向けて情報発信をしていくことから始めた」と振り返る。

 興味を持ちそうな部門として、新しい取り組みに積極的な組織や、すでに分析を活用している組織に声をかけるとともに、実データを用いたデモを含む説明会を開催して利用希望組織を募集した。その中で興味を持った組織とプロトタイピングを進めたが、その活動経験から、普及を進めるのに役立つ3つのポイントがあるという。

ユーザー部門の導入ハードルを下げる

 興味を持つユーザー部門でも他の業務が忙しいなどの理由で単独では活用が進まないケースも多い。IT部門がサポートしながら部門独自のダッシュボードを作成して試行利用してもらい、その中で出てくる意見や要望を踏まえて改善する取り組みを一緒に進めることで、部門内でTableauの有効性の認知やスキル習熟が進み、徐々に部門の中で独自のレポートが作られるようになった。

今あるデータから始める(Quick Win)

 分析したいことはあるがデータの粒度や品質が不足しているという部門でも、取りあえず今あるデータを対象にして取り組みを進めた。それにより一定の効果を実感してもらい具体的な意見や要望を引き出して改善するといった前向きなサイクルを徐々に作ることができた。

なじみのあるフォーマットから始める

 Tableauは美しく今どきのレポートが簡単に作れるが見慣れないフォーマットは利用者に抵抗感を持たれるケースがあった。最初は報告資料など既存のフォーマットを踏襲しつつ、ドリルダウンやツリーマップなどの要素を付け加える程度のフォーマットの方がユーザー部門の評判が良かった。実際にレポートを報告資料として使う活用事例も多く、会議の場で紙を使わずに画面を見ながら問題解決できるケースもあるという。

 またユーザー部門の成功事例が増えてきた時点で経営幹部報告を行ったが、その際も同様に既存の報告資料フォーマットをベースとしたサンプルダッシュボードを作成してデモを行った。それが取り組みの成果を理解してもらうための一助になったという。さらに、そのプレゼンテーションの際に、ユーザー部門自身からの前向きなコメントがあると説得力が増したということだ。

 得られた成功事例はITマネジメント室が「事例発表セミナー」などを開催して積極的に情報を発信した。また同時にプロトタイピングで連携した部門から他部門へ口コミで取り組み内容が広まり、従来アプローチできていなかった部門から問い合わせを受けるなど、徐々にTableau利用の機運が全社的に高まってきたという。

(3)基盤構築で留意すべき点は何か

フェーズ3 データ分析・活用基盤構築

 基盤構築については2つのポイントが挙げられた。1つは「スモールスタートで構築し徐々に拡充するアプローチ」、もう1つは「コスト、セキュリティ、利便性のバランスを考慮」するという点だ。

 黒木氏は「Tableauはスモールスタートに適している」と評価する。最初はレポート作成者がTableau Desktopで作成したレポートをユーザーがTableau Readerで参照する方法でもよい。しかしこれでは共有範囲も更新頻度も限られるため、特にヘビーユーザー向けにTableau Serverの追加導入が必要になる。やがてユーザーが増えるとレポートの共有はTableau Serverで一元的に管理することで、よりセキュアかつ高頻度に更新された情報を広く共有できるようになる(図4)。

図4 スモールスタートからの拡張のイメージ
図4 スモールスタートからの拡張のイメージ

 また、BIシステムは企業の重要情報を扱うためアクセス権限管理や参照範囲設定は非常に重要だが、利便性があまり落ちるとそもそも使われなくなってしまうためセキュリティと利便性のバランスを考慮する必要がある。

 同社ではレスポンスを重視し、性能に影響する懸念がある「ユーザーフィルター」機能は使わず、アクセス制御単位(A本部、B事業部など組織別)にプロジェクトとワークブックを作り、そこにしかアクセスできない仕組みとした。ただし60組織以上が利用するため、更新が煩雑になる。そこで、データブレンディングなどの機能を備える「Alteryxツール」を利用し、マスター結合などの簡単なデータ変換や各組織用のデータ分割を自動化している。そこからパッケージドワークブックを作成し、アップロードするところはTableauのコマンドなどで行う。この方法により、データ更新運用を品質高く、短時間でできる仕組みを構築できたという。

 さらに、管理者用機能として「カスタム管理ビュー機能」を使うと、ログインユーザーのアクセス数やアクセス頻度、参照コンテンツなどの利用状況をモニタリングでできることや、Tableauのコミュニティーが提供しているフリーツールのTabMon(CPUやメモリなどの使用状況の情報取得)、Tabjolt(Tableau Server専用負荷テストツール)も管理者にとっては便利で利用を検討すべき機能として紹介した。

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