発生する電車遅延、乗客からの問い合わせ殺到……東急電鉄の遅延トラブル対処にBoxが採用された理由(1/4 ページ)
電車の遅延トラブルに頭を抱えた経験のある人は多いだろう。しかしその裏で同じように駅係員も頭を抱えていた! そんな東急電鉄がトラブル時の対処法を刷新、そこに採用されたのは、何と「Box」だった……。
情報共有に悩む職場は多い。特に本社と支社、あるいは現場などが遠隔地にある場合、タイムリーな情報共有は難しいもの。
東京都と神奈川県で鉄道事業を展開する東京急行電鉄(以下、東急電鉄)も以前はそんな課題を抱える企業の1つだった。同社は事故や設備故障などのトラブルが起きた際、関係各所での情報伝達が非効率なことから、乗客だけでなく現場の従業員にも多大なストレスを与え続けていたという。同社がモバイル端末とクラウドストレージを使って解決したその軌跡を紹介しよう。
トラブル時の連絡手段が古く、非効率的だった
東急電鉄は、鉄道や不動産、リテール事業など幅広い業務を手掛ける「東急グループ」の中核企業。渋谷と中央林間を結ぶ東急田園都市線、渋谷と横浜を結ぶ東急東横線などを運営しており、首都圏に住む人々にはおなじみの企業だ。また、「渋谷ヒカリエ」に代表される不動産事業などでも広く知られている。
東急電鉄ではここ数年、ITを活用して顧客に情報を届け、満足度を高める取り組みに積極的だ。その象徴が、スマートフォン向けアプリの「東急線アプリ」だろう。電車のダイヤが乱れ気味な時でも、目的地までのリアルな所要時間を確認できる「駅間time」や、駅ホームなどの混み具合を映像で見られる「駅視-vision」などの機能を搭載(駅視-vision は2017年8月時点で69駅にて展開中)。全ての情報を包み隠さず届けることで顧客の役に立とうというのが、同社の基本的な姿勢だ。
これに対し、「社内向けのIT活用、特に現場での情報共有は遅れていた」というのが、鉄道の電気施設の新設、改良、保守管理を担当する電気部に所属し、計画立案を手掛ける「計画課」で課長を務める矢澤史郎氏の見立てだ。特に、大きな遅延や運行停止などのトラブルが起きた時は、その課題があらわになっていたという。
従来、同社はこうした連絡に電話を使っていた。しかし、口頭の連絡だけで状況を的確に伝えるのが難しい場合は、技術員が画像や映像を撮影して本社に送信する必要があり、最寄りの事務所に移動して画像や映像をPCに取り込み、ファイルサーバにアップロードするしか方法がなかったという。手間がかかる上に対応が遅れ、復旧までの時間が長びく状況になっていた。またこれに加え駅や他部門からは「状況はどうなっている」「いつ頃復旧しそうか」などの問い合わせも殺到。これらへの対応も電話で行っていたため、トラブル時、現場にのしかかる負担は大変大きかったという。
「当時は駅などでお客さまの対応を行う駅係員にも、重い負担をかけていました。スマホとSNSなどを使ってリアルタイムに情報を得るお客さまもいる一方で、駅係員は駅務室で流れる旅客情報(無線)などから断続的に得られる情報しか入っていませんでした。つまり、状況説明を求めるお客さまより、対応にあたる駅員の方が『情報弱者』に陥っていたわけです。われわれ電気部としては、こうした状況を何とか改善したいと、以前から思っていたのです」(矢澤氏)
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