トヨタも参加「深層学習の“話”ができる社会人13万人育成計画」(3/4 ページ)
「謎のAI企業」なんて言っている場合ではない。米中がしのぎを削るAIの産業活用に日本企業が参加するために、13万人の「技術が分かる」企業人を生み出す計画が持ち上がった。
ユーザー企業が育つために必要なスキルセット、人材育成計画
では、どうすればよいか。日本がこの分野を強化するには、まず、「ユーザー企業の知識レベルを高める」「ITとは異なる専門スキルセットを持つ技術者を正しく育成する」という2つのアプローチが重要というのが、協会設立メンバーの総意だ。産業に応用するはるか手前の基盤作りから着手しなければならないのが日本の置かれた状況だ。
松尾氏は、特に過去のAIブーム同様、過度な期待からくるユーザー企業の誤解や失望がディープラーニングの産業応用を阻害する要因となることに危機感を持っている。
「AI(人工知能)の定義は難しい。過去、サーモスタットやOCRを『人工知能』と呼んでいたこともあるが、現代の文脈ではそうではない。逆に過去に一度も人工知能と呼んでこなかった技術が現在、『人工知能』と称していることもある。これこそが『人工知能』という言葉の抱える課題であり、ユーザー企業を迷わせ、失望させ、本当の意味でのAI活用の機運を損なう原因になっている。技術を見る目があるユーザー企業の育成が急務だ」(松尾氏)
この課題感こそが「ジェネラリスト試験」の開発や事例情報の開示による啓蒙(けいもう)活動を行う動機付けになっているようだ。ユーザー企業の中に技術を見る目がある人材が育つことで、最新のディープラーニング技術を活用した競争力の高いビジネスが生まれ、技術者の受け皿が広がることを期待している。また、スキルを測る仕組みを資格として標準化することで、企業からすると「一定の期間内に資格を取得した人材を増やす」「部門ごとに資格取得者の割合を高める」といった具体的な人事計画を用意しやすくなる利点が考えられる。
とはいえ、研究が盛んで、全く「枯れ」ていない分野での資格試験となると、知識の陳腐化が気掛かりだ。ユーザー企業もエンジニアも常に知識をアップデートしておかなければ競争力を維持できない中で、資格に意味を持たせられるのか。
この点について、協会運営事務局長の岡田 隆太朗氏は「2018年に資格を得た人材か2020年に資格を得た人材かが明確になるような認定方法を考えている。スキルや人材像を語る際にも、この方法である程度、技術アップデートに対応しながらスキルを明確化できると考える」とコメントしている。
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