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Office 365導入で混乱の嵐、収束させた“いとちゃん”て何者?(1/2 ページ)

人海戦術の業務を変えるため、積極的にIT化を進めるメタルワン。Office 365もその1つだが、従業員からは使い方の問い合わせが殺到した。解決策は「いとちゃん」だ。同社のチャットbotプロジェクト第2弾。

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 「Microsoft Office 365」にRPA、チャットbot――大手鉄鋼総合商社のメタルワンは、業務効率を改善すべく2017年から次々とIT化を進めている。

 2003年に三菱商事と日商岩井(現、双日)の鉄鋼事業統合で生まれた同社だが、10年間で現場における業務の進め方に大きな変化はなく「人海戦術」が基本のままだったからだ。人件費は高止まりだ。このままではグローバルで戦えるだけの競争力を維持できなくなるかもしれない。現場業務の効率化と経営の可視化は急務だった。

 だが急激なIT化は、ITシステムの問い合わせ対応を行う部署の業務負荷を増大させた。Office 365の使い方をはじめとした似たような質問が何百件も寄せられる。「社内規程の問い合わせ対応の自動化に成功したチャットbotがヘルプデスク業務でも使えるのではないか」。同社の新たな挑戦が始まった。

問い合わせは月間700件超、4人のオペレーターがフル稼働

 メタルワンでは、社員から寄せられる質問に対して外部委託のコールセンターで対応していた。ITソリューション部 コミュニケーションインフラユニット 兼 システムユニット 主任の本田亜耶氏は「同じ部署から同じ内容の質問が何度も寄せられる状況に改善の必要性を感じていました。問い合わせは月間で平均700件にのぼり、Office 365導入時は最大で600件もの問い合わせが上乗せされました。4人の常勤オペレーターが対応しました」と振り返る。

メタルワン 本田亜耶氏
メタルワン 本田亜耶氏

 グループウェア上にマニュアルやFAQを用意し、いつでも参照できる環境を整えたもののコール数は減らなかった。ユーザー側で問題の切り分けが難しく、資料のどこを参照すべきかに悩んで電話を手にしてしまうのだ。

 同社では、数千ページにも及ぶ社内規程に関する問い合わせ業務を豆蔵の対話型AIエンジン(チャットbot)「MZbot」で自動化することに成功していた(関連記事参照)。本田氏が「ITインフラ関連の問い合わせ対応にもチャットbotが適用できるのではないか」と考えるのは自然な流れだった。

地道なチューニング作業が回答率改善に貢献する

 まずはチャットbotの対話ルールを既存のFAQを基にしてExcelシートにまとめた。加えて、社内規程用チャットbotを参考に、人為的なルールも準備した。例えば大項目に「Outlook」、中項目に「画面表示」、小項目に「電子メール」のように構造化して、関連するキーワードを1行に記す。こうして出来上がった数百行のデータをMZbotに読み込ませた。

 一般的にユーザーはチャットbotに対して日常会話のように話かけることが多い。そのためマニュアルやFAQで使われる専門用語とのマッチ率が低くなる。本田氏は社内規程用チャットbotでも作られた読み替え辞書も準備して言葉のゆらぎに対応した。

 運用当初の回答率は低かったが、AIによる機械学習と人力によるキーワードの追加や改変といったチューニングを繰り返すことで60%以上まで向上した。従来、チャットbotのチューニング作業は多大な工数を伴うといわれた。だが本田氏によればMZbotのチューニングは簡単なステップで完了するという。

 「人力でのチューニング作業は、運用ログを分析してExcelシートを修正する作業です。MZbotの管理者用画面に修正し終わったシートをドラッグ&ドロップするだけで内容が反映されます。メンテナンス作業は、チャットbotを管理者モードに切り替えて対話形式で実施できるので、操作も簡単で助かります」(本田氏)

チャットbotの検索画面
チャットbotの検索画面
管理者モードの画面
管理者モードの画面

 また、本田氏はMZbotの、チャットbotのキャラクターが分かるような雑談シナリオを作成したり、定期的にアイコンを変えたりして、ユーザーがチャットbotに対して愛着を持ち、より気軽に使えるような取組みも行う。MZbotは最適な回答を自動選出するAIエンジンだけでなく、ルールに基づいて回答候補を選出するルールベースエンジンを利用できるため、例えば「体重は?」と質問した際にチャットbotが「りんご2個分」と答えるような“シナリオ”を設定できるのだ。ちなみに、チャットbotには「いとちゃん」という名前も付けた。

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