業務自動化の切り札「プロセスマイニング(Process Mining)」とは何か:プロセスマイニング入門〜マニュアルのない業務の真実を「発見」する技術(1)(4/4 ページ)
生産性向上の切り札、業務標準化。標準化は将来的な自動化の第一歩でもあるが、多くの企業が失敗を経験する。その理由は「業務の真実」を発見できないことにある。いま、この課題を解決する手法として「プロセスマイニング」に注目が集まっている。本稿ではまず概要を見ていく。
なぜ、いまプロセスマイニングが注目されるのか
プロセスマイニングは、業務プロセス分析から派生してきたアプローチであり、2000年代前半から学術的研究が進められてきた。ビジネスユーザーがプロセスマイニングツールを活用し始めたのは2010年代からだ。使いやすい商用のプロセスマイニングツールが登場したのが2010年代ということもあるが、近年、ビジネス分野でプロセスマイニングが大きく注目されている。今後、市場としても拡大が期待されているが、その背景には2つの要因を挙げられる。
業務IT化がプロセスマイニングを可能にした
1つは、「デジタルトランスフォーメーション」の進展である。すなわち、ビジネスにしろ、プライベートにしろ、私たちの業務、行動の多くがアプリやシステムを活用して行うようになっていることに加え、IoT(モノのインターネット)、センサーの普及によって、オフラインの活動でさえ、私たちの知らないところで「ログ(デジタルフットプリント:デジタルの足跡)」として記録されるようになった。今、日々生み出されているビッグデータには、「時刻情報(Timestamp)」を持つ時系列のイベントデータの割合がどんどん大きくなっている。こうして、宝が埋まっているかもしれないイベントログデータの増大が、その分析手法としてのプロセスマイニングに関心が集まるようになった要因の一つである。
サービス化時代は継続的改善が必須
もう1つはサービス化の進展があると考えられる。従来、製品は「売ってしまえば終わり。あとはユーザーがご自由にお使いください」というものだった。
しかし、クラウド化が進み、月額費用で機能のみを利用する「サブスクリプション型」が増えている。すなわち、製品ではなく、サービスを売る形に多くの業界が移行しているということである。
サービスにおいては、導入時だけでなく、利用時においても、提供者側とユーザー側に継続的なやりとりが発生する、操作方法のアドバイスや、不具合対応がメインのカスタマーサポートだけでなく、ユーザー企業の業績アップにつながるような自社サービスの利用方法を提案する「カスタマーサクセス」の重要性が高まっている。
こうしたサービス化経済においては、スタッフの業務が複雑化・高度化していく。変化も激しいため、旧来のマニュアルではすぐに現実にそぐわなくなる。業務プロセスの可視化と継続的なプロセス改善に役立つ知見を提供できるプロセスマイニングの普及が進む要因がここにある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.