AI、RPA? 勤務先の「2019年度注力投資分野」を聞いた
キーマンズネット読者1541人に対して、勤務先での2019年のIT投資分野と今関心のある分野について聞いた。投資を予定する分野では2018年の調査結果と比べて大きく伸びを見せた項目があったが、一体どの分野が伸びたのか。
キーマンズネット編集部では、2018年11月26日〜12月21日にかけて、会員読者を対象に「IT活用状況調査」(有効回答数1541件)を実施した。「セキュリティ対策」「SaaS」「RPA」「改元対策」「EoS対策」「働き方改革」「AI」の7つのトピックスに分け、動向を調査した。本連載の最終回となる第8回ではIT投資に焦点を当て、2018年の調査結果と比較した2019年の企業のIT投資傾向を探る。
調査サマリー
- 2019年度のIT予算は2018年度に引き続き横ばい傾向
- 投資対象はOSのサポート終了対応に集中
- ワークスタイル変革に関わる分野への関心が高まる
- コスト削減やセキュリティ、IT人材不足は変わらず重要課題
2019年も投資に対して慎重な姿勢を見せる
キーマンズネット読者の勤務先での2019年度IT予算の増減について尋ねた。その結果、2018年に続いて今回も「ほぼ同じ」という結果が半数以上を占めた。増額とした割合はわずか13.0%にとどまる結果となった。
2019年は働き方改革関連法の施行、消費税の増税や「Windows 7」「Windows Server 2008」のサポート終了への対応など、企業のIT支出を後押しするイベントが控える中、2018年に引き続き、企業は慎重な姿勢を保っている。
なお、「分からない」と回答した27.1%のうち、半数近い47.5%がIT製品や技術の導入に関与しない立場にある回答者であった。
Windows 7はまだ多数派? Windows 10への移行に焦り
IT予算が横ばい傾向にある中、2019年度の企業の投資対象はどこに集中しているのか。
2019年に投資を予定するジャンルを聞いたところ、「Windows 10導入(新規導入/アップグレード/リプレース)」が最も高く37.2%、次いで「社内IT基盤(サーバ/ストレージ/ネットワークなど)」(31.9%)、「クラウドIT基盤(IaaS/PaaSなど)」(19.5%)、「業務の自動化(RPA/BPM/BRMSなど)」(19.1%)、「AI/機械学習/コグニティブ」(16.9%)と続いた。
今回の調査結果の特長として、「AI機械学習/コグニティブ」「業務の自動化(RPA/BPM/BRMSなど)」を押し抜いて「Windows 10導入」が首位に立ち、2018年度の結果と比べると10.5ポイントも回答数が増加したことが挙げられる。
Windows 7のサポート終了まで残り1年を切った状況の中、企業の焦りが見て取れる。逆に考えると、まだWindows 10にアップグレードできていない層が相当数いるとも考えられる。
また「社内IT基盤(サーバ/ストレージ/ネットワークなど)」についても、わずかであるが2018年より0.4ポイント増加した。ここ数年で、業務で利用するアプリケーションもクラウド化が進み、オフラインで利用するものも少なくなってきた。そういう背景もあってか、社内のインフラ基盤への投資は削減できないのだろう。
企業の関心は一極集中ではなく分散傾向
こうした投資傾向にある中、これからを見据えて企業の目はどこを向いているのだろうか。関心のある項目について聞いたところ、「AI/機械学習/コグニティブ」(40.9%)、「社内IT基盤(サーバ/ストレージ/ネットワークなど)」(36.1%)、「クラウドIT基盤(IaaS/PaaSなど)」(35.8%)、「スマートデバイス(スマートフォン/タブレットなど)」(34.5%)、「サイバーセキュリティ対策」(33.5%)と続く結果となった。
2018年に続いて依然として関心度が高いのは「AI/機械学習/コグニティブ」の分野だ。2018年が45.7%だったのに対して今回は40.9%と4.8ポイント減少したが、その分「テレワーク/モバイルワーク環境整備」「スマートデバイス(スマートフォン/タブレットなど)」「コミュニケーションツール」の割合が増加した。最近の働き方改革の影響を受けてか、こういった分野への関心も高まり、回答が分散したためと見ている。
また、最近企業の注目を集める「業務の自動化(RPA/BPM/BRMSなど)」も31.3%(前年比+5.7ポイント)と回答割合が増加した。
コスト、セキュリティ……その裏で回答が増加した企業課題とは
最後に、勤務先での組織課題について聞いた。上位を占めた5位は「コスト削減」(54.1%)、「セキュリティの強化」(43.6%)、「社員間の情報・ナレッジ共有」(35.2%)、「従業員のワークスタイルの変革への対応」(34.9%)、「IT人材の不足・高齢化」(30.9%)であった。
コスト削減やセキュリティについては相変わらず重要問題に位置付けられているが、今回の調査では「IoT活用への取り組み」「ビッグデータ活用への取り組み」が伸びを見せた。この結果を業種別で見てみると、IoTについては製造業に勤務する読者からの回答が多く得られた。「IT人材の不足・高齢化」についても微増ではあるが回答割合が伸び、コスト削減同様に企業の大きな問題とされている。
今回の調査結果をまとめると、Windows 10への移行や目の前に迫る働き方改革関連法施行に関する項目に投資や関心が集まる結果となった。その裏で、コストや人材問題は変わらず企業の悩みである。それを解決する糸口としてRPAといった技術に企業の視線が集まる。
2019〜2020年にかけては、一部のマイクロソフト製品のサポート終了やワークスタイルの変革、元号改正や消費増税といった大きなイベントが続く。その中で、人材不足が深刻化するだろうとされる「2020年問題」も迫っている。こうした状況を踏まえて、どこに経営資源を振り向けるかを考えたい。
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