“野良Slack”を組織に取り込み決裁時間を大幅削減 DeNAの現場はどう変わったか(1/3 ページ)
エンジニアのコミュニケーションツールとして人気に火が着いた「Slack」。今では、開発の現場だけでなく業務部門での利用も進み、システム連携により業務を効率化するツールとしても存在感を増す。DeNAはSlackの利用を現場から組織に拡張したことで、現場の業務は大きく変わったという。
オンラインゲームを主要事業とし、Eコマースやエンターテインメント、スポーツ、ヘルスケアなどにも手を広げるDeNAでは、2014年ごろから開発部を中心に一部の部門においてSlackが利用されていた。2017年には、経理や企画部門など非開発部門にも利用が広まった。そして、2017年10月にセキュリティの高度化やコミュニケーションツールの統合を図り「Slack Enterprise Grid」の全社導入に踏み切った。
現在、Slackを利用するメンバーは外部のゲストユーザーを含めて5868人にも及ぶ。コラボレーションツールとしてだけでなく、他システムとインテグレーションし、業務を効率化する手段としてもSlackを活用している。全社導入に至るまでのプロセスからアカウント統合の苦労話、DeNAならではの活用と運用方法について、社内デジタルコミュニケーションのかじ取り役を務めるIT戦略部のキーマンに話を聞いた。
部門単位のSlack利用に潜む5つの課題
DeNAがSlackを使い始めたのは2014年頃のこと。まだビジネスチャットツールの組織活用が今ほど進んでいなかった頃だ。Slackの先行ユーザーの多くがそうだったように、同社でも開発部門のコミュニケーションや情報共有のためのツールとして利用していた。
しかし、当時Slackは会社公認のツールというわけではなくそれぞれの事業部の判断で導入されていた。事業部で個別に契約されていたSlackアカウントは、有償版約40アカウント、無償版約100アカウント、合計約140アカウントにも及ぶ。こうした部署単位での個別利用には幾つかの問題点があった。
(1)コミュニケーション相手により異なるチャットツールの使い分けが招く混乱
Slackを導入していない部門もあるため、「ある人とはSlackを使い、ある人とはGoogleハングアウトを使う」など、従業員ごとに使うツールが異なり、混乱を招くケースがあった。
(2)複数アカウントによる重複課金が多数発生
Slack利用者の中には1人で複数アカウントを持つケースもあり、多い場合だと1人で10個以上のアカウントを持つ従業員もいた。有償プランを契約している事業部では重複課金が発生し、余計なコストがかかっていた。
(3)ログイン認証のセキュリティ強度が弱く、セキュリティが維持しにくい
社内コンプライアンスのため、ログイン認証のセキュリティ要件を統一したいが、Slackの管理が各部門に任されており標準化できていなかった。社内標準のシングルサインオンを適用したいが、当時契約していたプランでは対応できなかった。
(4)チャットのログを取得できず、有事の際に電子証拠が開示できない
情報漏えいリスクを低減するにはログ管理と監査が必要である。また万が一訴訟事案が発生した場合は、業務の正当性を証明する電子証拠の開示を求められるケースがある。当時契約していたプランでは、チャットログの取得と保存ができず、情報漏えいなどの問題が発生した場合でも説明責任を果たせない可能性があった。
(5)チームを横断したコミュニケーションが困難
部門ごとに契約していたため、チームを横断した情報共有が難しく柔軟なコミュニケーションやコラボレーションに限界があった。
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