RPAの導入状況(2019年)/後編
キーマンズネット会員を対象に、RPAの導入状況に関するアンケート調査を実施した。「RPAの導入効果」や「RPA導入時の障壁」が明らかになった。
キーマンズネットは2019年8月12日〜29日にわたり、「RPA(Robotic Process Automation)の導入状況に関する調査」を実施した。全回答者数115人のうち職種でみると、情報システム部門は34.8%、製造・生産部門が23.5%、営業企画・販売部門が10.4%、経営者・経営企画部門が6.1%と続き、業種ではIT関連外製造業が37.4%、IT製品関連業が32.2%、流通・サービス業全般が22.6%などと続く内訳であった。
今回は「RPA導入プロジェクトをけん引している部署」や「RPA導入時の障壁」「RPAの導入効果」などを調査した。最近はRPAの失敗事例などが注目を集める傾向にあるが、調査結果ではRPAを導入している方の76.0%が「成果を挙げている」ことが明らかになった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。
利用部門でRPA導入は過去の話? “情シス部門”を中心に導入が約6割
前編では企業におけるRPAの導入率が2018年と比較して約3倍の46.9%にまで伸びたことなどを取り上げ、導入企業における「RPAの適用業務」や「ツール選定時に重視するポイント」を明らかにした。
後編ではまず、トライアルを含めてRPAを「導入済み」または「導入検討中」とした回答者に対し、パートナー企業にコンサルティングを依頼するかを聞いた。その結果、約4割の企業がコンサルティングを依頼している、あるいはする予定であると答えた。RPAの導入プロジェクトでは、対象業務やツールの選定、必要に応じて業務プロセスの分析、ロボットの開発や運用といったことを検討し、準備することが求められる。ユーザー企業だけで、失敗のリスクを排除しながら一連の作業に取り組むことは困難と判断するケースもあるのだろう。
さらに、RPAを導入済みと答えた企業を対象に、RPAの導入をけん引する部門がどこかを聞いた。その結果「情報システム部」が61.1%、「RPA利用部門」が33.3%、「RPA推進部門」が16.7%と続いた(図1)。RPAが注目され始めた2017年頃は主にRPAを利用する現場のメンバーが中心となってプロジェクトを立ち上げ、導入するケースが多く取り上げられていた。しかし先行して導入した企業によってRPAのセキュリティや運用管理、内部統制といった課題が浮き彫りになり、あらためて情報システム部門が主体となって導入に関わる必要性が認知されてきたと考えられる。
RPAスキル人材の不足に運用ルールの策定……RPAの壁は?
RPAを導入した企業は、どのような課題を抱えているのか。トライアルを含めてRPAを導入済みと答えた企業を対象に、トライアル時と本格展開時にそれぞれどのような障壁があったか、あるいはありそうかを聞いた。
トライアル時の障壁は、「RPAロボットの開発スキルを持った人がいない」(61.1%)、「導入、開発費用」(25.9%)、「事前準備が面倒(業務の棚卸しなど)」(25.9%)、「導入成果の算出が難しい」(24.1%)、「自社ツールとRPAの連携が難しい」(22.2%)などが上位に挙がった(図2)。
一方、RPAの本格展開時の障壁としては、「RPAロボットのスキルを持った人がいない」(48.1%)、「運用ルール・開発ルールの策定が困難」(31.5%)、「ロボットの管理が煩雑」(29.6%)、「ロボットが停止する」(25.9%)、「期待したROIが出ない」(24.1%)などが上位に挙がる結果となった(図3)。
トライアル時も本格展開時も、「RPAロボットのスキルを持った人がいない」の回答率が最も高い結果となった。一般的に、RPAは事業部門でも簡単に作れるといわれるが、使いこなすためにはそれなりの訓練が必要になる。通常の業務で多忙な従業員が一からRPAの開発や操作について学ぶことはハードルが高い。特に、本格展開する際には、導入初期よりも多くのロボットを開発し、運用しなければならないので、人材不足はさらに深刻になる。近年は、大手企業を中心にRPA人材を育てるための教育プログラムを実施するような事例も出てきているが、人材が不足しがちな中堅・中小企業が取り組みを進めることは簡単ではないだろう。
なお、その他の意見として「RPAのバージョンによってできていたことができなくなる」「テレワーク時にリモート実行できない」といったツールの機能に対する不満も寄せられた。
76%が成果を挙げていると回答、「想定を大幅に下回った」企業の理由とは
RPAを導入した企業は実際に効果を感じているのだろうか。導入済みの方に聞いたところ「想定以上の成果を挙げている」(1.9%)、「おおむね想定通りの成果を挙げている」(74.1%)、「想定をやや下回る成果だった」(20.4%)、「想定を大幅に下回る成果だった」(3.7%)と続いた。まとめると、76.0%が想定通りかそれ以上の成果を挙げていることが明らかになった(図4)。
RPA導入済みの回答者に「RPAツールの乗り換えを検討しているか」を聞いたところ、61.1%が「乗り換える予定はない」、31.5%が「分からない」と回答し、明確に「乗り換える」と回答した割合は1割にも満たなかった。近年は、RPAブームに伴って導入効果を高めるためのサポートを提供する事業者も増え、多くの活用事例も公開されている。パートナー企業のサポートや、外部の情報に加え、自社の運用の中で培ったノウハウなどが助けになり、想定通りまたは想定以上の成果を挙げられる企業もあると予測できる。
一方、約2割の回答者は「想定をやや下回る」「想定を大幅に下回る」と答えた。理由を聞いたところ、「効率化できる定型業務が他の事例ほどなかった」「適用できる業務が予想以上に少ない」といったコメントが寄せられた。RPAで代替できる業務が想定より少なく、結果として効果が出なかったといったケースもあることが伺えた。他にも「RPAの画像マッチングの精度が思ったほど上がらず、リリース後も試行錯誤し安定運用まで時間を要した。また画面遷移とRPAの処理速度を整合させるために、処理時間の調整が必要と分かり、思ったほどの速度が得られていない」といったコメントからは、RPAの仕様や性能、システムとの相性によって成果が左右されることが分かった。
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