他人の業務をワガゴト化するために中小ゼネコンが考えた秘策(1/2 ページ)
「つくるひとをつくる」を経営理念に掲げる三和建設は、組織と従業員の関わり方を重視する。しかし、メンバー層から上司への業務報告は一方通行で、経営理念と実際の現場の状況は懸け離れていた。
2019年4月から「働き方改革」関連法の施行が始まり、企業はこれまで従業員に押しつけてきた画一的な「働き方」から、個々の従業員の事情や希望に応じた働き方を可能にする体制づくりに力を入れ始めた。とはいえ、際限なく何でも許可してしまっては統制が取れなくなる恐れがあることも確かだ。自身の企業に合う「働き方改革」の在り方を模索しながら、体制づくりを進めているという企業も多いだろう。
大阪市淀川区に本社を置くゼネコンである三和建設は、政府が「働き方改革」を訴え始める前から、個々の従業員の働き方について真剣に考え、思い切った施策を打ってきた企業だ。三和建設の森本尚孝氏(代表取締役社長)が、三和建設におけるあるべき働き方と、そこに至った過程などについて語った。
本稿は、「進めよう!中小企業の『働き方改革』」(主催:厚生労働省)における三和建設による講演を基に、編集部で加筆し再構成した。
組織は「従業員とどう向き合うか」を考えるべき
三和建設は1947年5月創立の企業で、現在73年目を迎えたところだ。森本氏は、2008年10月に4代目社長に就任した。森本氏が37歳で社長に就任した当時、リーマンショックに端を発する世界同時不況のまっただ中であり、三和建設の業績も悪化していた。さらに、売り上げと同額くらいの銀行借入があるなど、財務状況も非常に悪化していた。森本社長は、この時期を乗り越えた経験から現在の経営理念「つくるひとをつくる」を掲げるようになった。
そして三和建設では、採用、教育、業務報告など、働き方に関する取り組みは全てこの「つくるひとをつくる」という理念に一致するものになっているそうだ。とはいえ、単に従業員を甘やかすとか、ただ従業員を守るということでもない。従業員自身が成長、自立できる環境を作ることに力を入れているわけだ。会社が自立した人材の集まりになれば、結果として会社が永続するという考えが根底にある。森本社長は「あってはならないことだが、たとえ会社が倒産しても生きていけるような人材を育成することを目指している」と語る。
また同社では「働き方改革」という言葉を社内ではほとんど使っていないという。「『働き方』というものを考えるなら、組織と従業員がどのように向き合うか。従業員に対してどう組織が関わるかということをまず考えるべきではないか」(森本氏)
旧来の「組織と従業員の関わり方」を変えるために
この森本氏の考えは、「日報」にも表れている。三和建設では、「日報」の扱いが一般的な企業とはまるで違う。一般的な企業では従業員が書いた日報は上長に渡り、その上役、またその上役というルートで流れていく。従業員からしてみれば、日報を書いても上役からなにか助言などのフィードバックが得られるものではない。会社の上層部に向かって一方通行で流れていくだけのものだ。場合によっては、上役に不利益な報告があれば削除されることもある。
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