若手不足、だぶつく管理職……やってみて分かってきた働き方改革、組織の問題
働き方改革関連法施行から約1年。2020年4月からはいわゆる「残業規制」での中小企業向けの猶予措置もなくなる。対策手法やツールの提案は多いが、果たして各企業は効果を出せているのだろうか。約1年の具体的な取り組みの中で見えてきたのは、別の課題のようだ。
キーマンズネット編集部では2020年に注目すべきトピックスとして「セキュリティ」「クラウド活用」「情報共有」「DX人材」「AI導入」「RPA」「働き方改革」の7つのトピックスを抽出し、読者調査を実施した(実施期間:2019年11月22日〜12月20日、有効回答数1329件)。企業における2020年のIT投資意向と併せて調査結果を全8回でお届けする。今回のテーマは「働き方改革」だ。
調査サマリー
- 若手〜中堅の、現場を支える人材が足りない企業が7割
- 働き方改革の施策は全体の6割が実施、だが効果は「変わらない」が多数
- 効果が出ない理由、真因は施策ではなく組織運営か
- 「付き合い残業」文化はやや減少、組織の課題を問題視する声が増加傾向
圧倒的に足りない若手、だぶつく管理職
2020年4月から時間外労働の上限規制が中小企業にも適用される。他方、少子化を背景に若手人材の不足も深刻になりつつあるとされる。そこで調査では、まず読者の職場における人材の過不足状況を聞いた。設問では若手、中堅の管理職、経営層のそれぞれで人材が不足しているかどうかを訪ねた。その結果、若手が圧倒的に不足している状況が明らかになった。
結論からすると、想定通りではあるが、役員・経営陣は「過剰である」が31.8%、「足りている」が57.3%となった。他方、若手〜中堅社員は「不足している」とした回答が半数を超える結果となった。特に若手は回答者の7割が「不足している」としており、状況の深刻さがうかがえる。
実務の現場、前線を担うことが多いと思われる若手〜中堅社員の不足は、将来的には「現場がまわらない」といった状況を生みかねない。働き方改革関連法の施行は、よりよい労働環境の提供と併せて生産性の高い働き方を促す側面もある。
働き方改革の施策は全体の6割が実施、だが効果は「変わらない」が多数派という結果に
では働き方改革に関連した施策を、企業は実践できているだろうか。働き方改革関連法施行から約1年で状況はどう変わっただろうか。
働き方改革に「既に取り組んでいる」とした回答者は59.0%、「今後取り組む予定で調査している」は11.7%、「今後取り組む予定だが未着手である」が16.6%、「取り組む予定はない」は12.8%だった。なお調査では、働き方改革の実施状況と併せ、回答者の実感としてどう変化したかを尋ねた。結果は「変わらない」とした回答がほぼ半数の49.9%だった。「少し良くなった」が32.4%で、「とても良くなった」(2.5%)を併せても34.9%だった。「少し悪くなった」(5.4%)、「とても悪くなった」(3.6%)とネガティブな結果となった回答が9%あった。
効果が出ない理由、問題は施策そのものにあるわけではない
では働き方改革関連の施策を実施している回答者に限定して状況を聞くとどうだろうか。調査では働き方改革にすでに取り組んでいるとした回答者を対象に、効果が出ているかどうかを尋ねた。
働き方改革に関連する施策に取り組むとした回答者に、施策の効果がでているかを尋ねた問いに対する回答結果は「とても効果が出ている」(5.9%)、「まあまあ効果が出ている」(53.9%)だった。ポジティブな評価は約6割(59.8%)で、2019年の調査結果とほぼ変わらない状況だ。
「あまり効果が出ていない」(32.8%)、「全く効果が上がらない」(7.5%)とネガティブな評価も約4割で昨年と変わらない。
なお「具体的にどのような施策で効果が出ていないのか」を尋ねたが、結果はいずれも働き方改革で取り組む施策の割合と変わらなかった。このことから特定の施策で効果が出ないといった問題があるわけでははなく、どの取り組みにおいても効果を出せていない企業が一定数存在することが分かる。
「付き合い残業」文化はやや減少、組織の課題が増加傾向に
こうした企業は、なぜ効果を出せないのか。「効果が上がらない理由」を尋ねたところ、「無駄な残業が多過ぎる」(47.1%)、「コミュニケーション不足」(33.3%)、「ワークフローやルールが整備されていない」(31.7%)、「取り組みの優先順位が明確でない」(28.6%)の順となった。
これを2019年の調査と比較すると、「ワークフローやルールが整備されていない」「取り組みの優先順位が明確でない」はわずかではあるが2019年よりも数ポイントずつ増加した。働き方改革に関連した施策には一定数の企業が取り組んでいるものの、その前段階で議論すべき組織の問題やチームビルディング、ルール作りに課題があることが見えてくる。ツールなどの環境が整い、実運用を進めた後で課題を実感した回答者が増えた状況が推察できる。
この他、2019年との比較で目立ったのは「付き合い残業などの長時間労働の文化がある」が20.1%と2019年と比較して7.3ポイントと大幅に減った点だ。法改正によって「企業文化」とされてきた領域に明確に変化が現れた兆候としても解釈できそうだ。
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