Windows 10向けのモダンPCとはどんなもの? Chromebookとの違い、テレワーク利用の適性
家電量販店には「モダンPC」のコーナーができ、大きなプロモーションも展開されている。「Windows 7」がサポートを終了し、今後テレワーク対応などで社用のPCを入れ替えようと考えるとき、モダンPCは果たしてどんなメリット、デメリットがあるのだろうか?
「モダンPC」は普通のPCと何が違うのか
モダンPCとは日本マイクロソフトが2019年前後から使い始めたネーミングで、モダンPCの販売戦略に賛同したPCベンダーが提供する、一定条件を満たしたPCのことだ。2019年11月に日本マイクロソフトが開催したモダンPCの説明会によると、モダンPCとして販売されているのは約19製品で、NECやパナソニック、DynabookといったPCメーカーがパートナー企業として連ねる。
では具体的に、モダンPCとはどういったPCのことを指すのか。日本マイクロソフトのリリースやWebサイトには、「SSD・eMMC搭載で速くて丈夫」「タッチスクリーンや生体認証などの最新機能を搭載している」といった表現がある。家電量販店のスタッフにモダンPCの条件や定義についてについて尋ねると、「軽くて薄い」「SSDなどで起動が速い」「バッテリーの持ちがいい」「生体認証などが備わっている」といった説明も聞かれる。こうした情報を基にユースケースを考えると、中堅・中小企業やテレワークで活躍が期待できそうだ。
本稿ではモダンPCとは何か、またChromebookと比較した場合の違いなどについて解説する。
<特徴1>薄くて軽量でモビリティが高い
モダンPCの必要条件として「軽くて薄く、持ち運びしやすいこと」「ある程度丈夫なこと」がある。この条件から、モダンPCはデスクトップではなくノートPCということになる。
昨今のノートPCには、光学式ドライブを搭載している製品を見かける機会が減った。その理由としては、多くのPCベンダーが軽さを優先し、ソフトウェアのインストールはネット経由を前提にしてメディアの読み込みを不要と判断していると考えられる。モダンPCもその流れをくんだ製品といえる。
「軽さ」の具体的な定義は難しいが、900グラム以下のノートPCは体感的に「軽い」と感じられる。それを意識してか、最近のノートPCには重量が1キログラムを切ったものが多い。
軽くて薄いのはいいが、一定の堅牢(けんろう)性も必要だ。堅牢性についてはカタログで説明されているものもあるが、できれば実機で確認したいところだ。
<特徴2>SSD、eMMC搭載で起動が早い
モダンPCはHDDではなくSSD、もしくはeMMCをストレージに採用している。HDDに比べて起動速度に優れたSSDを備えることで、素早いPCの立ち上げやクローズを可能にする。
eMMCはフラッシュメモリ主体のストレージで、大ざっぱに言えば「SSDほどの速度はないもののHDDよりも動作が早い」というものだ、ただし、SSDの容量が大きくなるとPCの価格も跳ね上がるので、価格帯によって「SSD+HDD」(起動などはSSD、データ保存はHDD)という組み合わせも見られる。例えば「256SSD+1TBHDD」といった具合だ。そうした組み合わせでは、起動ソフトウェアはSSDに入れ、データはHDDに保存するのが一般的だ。
<特徴3>テレワークでも安心なバッテリーの「持ち」
ノートPCは、バッテリーの「持ち」は外せない要件だ。一般的なノートPCは、もって5〜6時間といったところだが、モダンPCは10時間以上持つものが多い。また電源が確保できても、電源コードの形状によっては「使いにくい」「そもそも電源コード自体が重くて持ち運びしにくい」ということも多いので、これも実機で確認したいところだ。
<特徴4>生体認証でサインインできること
複雑なパスワードによるサインインは面倒だ。セキュリティ面からも、顔認証や指紋認証などは備えていてほしい。モダンPCは生体認証をウリにしている。
こうした条件を基に、モダンPCの特長をまとめると以下の図のよういなる。
「薄くて軽くて速くてセキュア」以外のモダンPCの特徴は? Chromebookとの比較も
「モダンPC」の主要な条件はここまで見てきた通り、4つの特徴がある。PCメーカーはこれらの特徴を前提に、ハードウェア設計などで特徴を見せる。以降では4つの特徴以外の、選定の指標となるポイントを見ていく。
外出先で取引先と商談する場合は、相手に画面を見せやすいようにタブレットとしても使えると便利だろう。モダンPCには、タブレットとして切り離して使えるものや、画面を回転させたりしてタブレットのように使える「2-in-1」のモデルもあるので、その場で相手に画面を見せプレゼンする機会が多い営業部門には役立つだろう。
テレワークでの就労時は、SIM付き端末が貸与される場合を除き、ほとんどのケースでWi-Fi接続が必須だろう。この時、最新の無線通信規格で今後普及が本格化する「Wi-Fi 6」に対応してあれば、より高速な接続が可能で、しかもバッテリー消費を抑えられる。自宅や外出先など本拠点以外で利用するケースが多い場合は、「Wi-Fi 6」対応かどうかもチェックしたい。
家電量販店のモダンPCコーナーを見ると、価格帯はPCメーカーによってさまざまだ。もちろん、価格の捉え方は企業、個人によってとらえ方が違うだろうが、ここまでで説明してきた「薄くて軽い」「SSD搭載」「一定のバッテリーの持ち」などの条件をフルに満たしていても10万円程度で手に入るものが多いようだ。
モダンPCとChromebook、選ぶならどっち?
価格の安さだけを見ると、5万円程度で販売されているGoogleの「Chrome OS」を搭載した「Chromebook」(クロームブック)も選択肢に入るだろう。モダンPCとChromebookに違いはあるのだろうか。両社の違いを探るために比較表を作った。
モダンPCは「Windows OS」で起動させるアプリとWebアプリを利用できる。つまり、「Microsoft Exce」や「Microsoft Word」といったOfficeアプリとWebで利用するアプリだ。対してChromebookに搭載されているアプリは、GoogleドキュメントなどWebアプリがほとんどだ。マシン本体に高い性能を必要としないため、安価な製品が多いということだ。
モダンPCはデータを本体のローカルストレージに保存するが、Chromebookは基本的に「Googleドライブ」などのクラウドに保存する。ローカルにデータを残さないのは安全である一方、インターネットに接続していないと何のデータも参照できないことになる。この点を安心と見るか不便と感じるかは利用者次第になるだろう。
Chromebookはインターネットへの高速接続が必須だ。ただし、モダンPCも基本的にはネットにつないで使うはずだ。現実の利用シーンにおいて大きな違いにならない場合も考えられる。
モダンPCとChromebookの一番の違いは、周辺機器にある。Chromebookとの接続を保証された周辺機器には限りがある。価格の安さは魅力だが、業務で広く使うには今のところモダンPCに軍配が上がるだろう。業務を限定して使う、Web会議システムやeラーニングなどに使用するならChromebookも手軽で便利といえそうだ。
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