1日1万件の処理を自動化、三井情報がたどったRPA導入までの苦悩と道筋
三井情報は基幹系システムのクラウドシフトを進め、SAP S/4HANA CloudとSalesforce Sales Cloudとの連携を図った。しかし、提供されているAPIだけでは両システムへのデータ連携は困難だった。
UiPathは2020年12月4日、三井情報がRPA(Robotic Process Automation)プラットフォーム「UiPath」を導入したと発表した。わずか3カ月でほぼ全てのRPAの導入を終えたという。本稿ではその道筋を紹介する。
「全てのデータをAPI連携は無理」から始まったRPA導入
三井情報は、政府が提言する「クラウド・バイ・デフォルト原則」にのっとって、基幹システムをSaaS(Software as a Service)に移行した。新基幹システムでは「SAP S/4HANA Cloud」と「Salesforce Sales Cloud」を採用し、API連携によってSales Cloudに入力した内容をSAP S/4HANA Cloudに自動的に反映するようにした。
ただし、現在提供されているAPIだけでは、全ての必要なデータをAPIで連携させるのは困難で、そのままでは人手による入力業務が発生してしまう。この作業を、UiPathによって自動化させた。UiPathを採用するに当たっては、安定性と、画面レイアウトの変更に対する柔軟性、周辺サービスとの連携性を評価したとしている。UiPathの選定ポイントは主に以下の3つだ。
安定性 | トライアル導入での2週間連続稼働においても不安定さが認められなかった。 |
---|---|
画面レイアウト変更に対する柔軟性 | オブジェクト指定によるデータ入力が可能で、クラウドサービスの頻繁な画面変更にもスムーズな対応が可能。 |
周辺サービスとの連携性 | 利用を予定している各種クラウドサービスとの連携モジュールが用意されているほか、連携のためのAPI実装も柔軟に行える。 |
3カ月でRPA導入完了、40台のRPAで1日当たり1万件もの処理を省力化
三井情報が採ったUiPathを用いたシステム構成が以下の図だ。わずか3カ月でUiPathの導入のほとんどを終えたという。
三井情報では、中央管理サーバで「UiPath Orchestrator」を稼働させ、Sales CloudからSAP S/4HANA Cloudへの受発注業務のデータ連携処理を行うUiPath Robotsを40台稼働させている。UiPathで処理している入力作業は、1日当たり約1万件。本来であれば20〜30人規模の人員を配備して実施すべき作業ボリュームだ。省人化だけでなく、入力ミス防止という点でも効果があったとしている。
さらに三井情報は、夜間バッチ処理のジョブコントロールや、PDF帳票のダウンロードと印刷、クラウドストレージ「Box」への格納も、UiPathによって自動化している。ServiceNowのデジタルワークフローソリューションとAPI経由で連携させ、こうしたRPAの稼働分析や問題管理をしているほか、障害発生時に速やかに対応できる体制を整えたという。
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