「PC」シェア(2020年第4四半期、通年)
2020年はコロナ禍の影響で在宅勤務や在宅学習でPCを利用するケースが増え、PC市場は堅調に推移した。GIGAスクール構想関連需要が同市場をけん引する要素となったが、中にはこの国策の恩恵を受けられずにいたベンダーもあった。
IDC Japanが発表した「日本国内におけるトラディショナルPC市場出荷実績値」によると、国内トラディショナルPC市場の出荷台数は、2020年通年で1734万台、前年比0.1%減、2020年第4四半期(10月〜12月)は474万台、同比4.7%増となった。なお、タブレット端末は本市場には含まれていない。
国策の恩恵受けず、マイナス成長した“一人負け”のベンダーは?
2019年は、2020年1月の「Windows 7」の延長サポート終了前の買い替え需要が発生し、国内トラディショナルPC市場は過去最大規模となる1736万台の出荷数を記録し、2020年はその反動でマイナス成長が見込まれた。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大がきっかけとなり、在宅勤務や在宅学習でPCを利用するケースが急拡大したことに加え、政府の「小・中学校における生徒一人にPC一台」政策(GIGAスクール構想)が始動したことによって、コンバーティブルノートブックPCやデタッチャブルタブレットの特需が発生した。CPU、ディスプレイ、ICチップなどの部材不足が下振れ要因となったものの、感染症拡大とGIGAスクール構想が市場をけん引し、2020年通年は、1734万台と2019年に続いて記録的な出荷数を達成した。
2020年通年のカンパニー別(企業ないし企業グループ)出荷数のシェアは、1位のベンダーが41.7%、2020年から1.4ポイント拡大した。2位は16.1%で、2020年から2.0ポイントダウン。3位は14.2%で、こちらも1.3%ポイントダウンとなった。4位が5.8%、そして5位は小差で5.5%だった。
シェアを拡大した1位のベンダーは、法人市場でGIGAスクール構想の需要を積極的に取り込み、反動減の影響を受けるライバルが多い中、前年比3.4%増と好調だ。2位のベンダーは家庭市場で前年比46.8%増の大躍進を遂げたが、法人市場で苦戦し、前年比11.3%減だった。3位のベンダーも法人市場での苦戦が響き、同比8.6%減となった。
4位のベンダーは、PC市場ではGIGAスクール構想の恩恵を受けることはなく、同比30.8%減と2020年の反動が大きく現れた。5位のベンダーもPC市場ではGIGAスクール構想の影響を受けてはいないが、発売した新モデルはどれも好調に推移し、前年比16.8%増だった。
2020年第4四半期のカンパニー別(企業ないし企業グループ)の出荷数シェア上位5位は、1位のベンダーが44.4%、2位は12.4%、3位は11.8%、続いて4位が6.5%、5位は5.5%となった。2020年の第4四半期は、GIGAスクール向け出荷が明暗を分ける結果となった。
1位のベンダーはGIGAスクール需要がけん引し、前年比12.4%増、2位と3位はGIGAスクール向け出荷が一段落して前年比で二桁のマイナス成長となった。一方で、4位と5位はGIGAスクール向け「Chromebook」の出荷が絶好調で、前年同期と比較してそれぞれシェアを5.4ポイント、4.7ポイント伸ばす結果となった。
IDC Japanの市川和子氏(PC, 携帯端末&クライアントソリューション グループマネージャー)は「2020年はコロナ禍で生活が一変したが、PC市場にとっても記憶に残る年となった。コロナ禍に加えGIGAスクール構想という国の一大プロジェクトがPC市場を記録的出荷へと導いた。2021年は高校GIGAスクールが予定されており、20年の好調の反動が緩和されるだろう」とコメントする。
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