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国内パブリッククラウド市場予測、“SaaSバブル”に終焉の兆しか?

2020年度の国内パブリッククラウド市場全体の規模は、対前年度比25.2%増の見込み。2024年度には対2019年度比2.1倍の2兆8296億円に達する。全体の数字は「5年でおよそ2倍」となるが、内訳や市場シェアでは明暗が分かれる。

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 富士キメラ総研は2021年7月7日に「2021 クラウドコンピューティングの現状と将来展望 市場編/ベンダー編」を発表した。「市場編」ではSaaS(Software as a Service)やDaaS(Desktop as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)/PaaS(Platform as a Service)といった国内のパブリッククラウド市場を、「ベンダー編」では42社の事業者の動向を調べた。

 2020年はコロナ禍におけるクラウドシフトが進んだが、それ以降、企業のIT投資はどのベンダー/どの分野に向かうのか。

シェア「一人勝ち」ベンダーとそれ以外、市場拡大中の勢力図はどう変わる?


ベンダー別シェア

 「ベンダー編」では国内パブリッククラウド市場を「海外のメガクラウドベンダー」と「外資系ベンダー」「国内のシステムインテグレーター」「国内のキャリア/サービスプロバイダー」に分けてシェアを予測した。

 2020年度の市場シェアは、メガクラウドベンダーが57%、外資系ベンダーが15%、国内システムインテグレーターが17%、国内キャリア/サービスプロバイダーが11%の見込みだ。

 メガクラウドベンダーはスケールメリットを生かした展開を進めており、今後も高い伸びが期待される。国内ベンダーは、国産サービスである点や手厚いサポート体制などを訴求しており、既存の顧客がIaaSやPaaSの導入を進めることで、堅調に推移すると見られる。2024年には、メガクラウドベンダーが65%とシェアを拡大し、外資系ベンダーが14%、国内システムインテグレーターが13%、国内キャリア/サービスプロバイダーが8%のシェアを占めると予測する。

2020年はやはり「コロナ禍中のクラウドシフト」が目立つ

 富士キメラ総研では「市場編」で、2020年度の国内パブリッククラウド市場の規模を対前年度比25.2%増の1兆7265億円と見込む。コロナ禍対策として普及したテレワーク環境構築の需要拡大が市場をけん引した。

 2020年度の内訳を見ると、SaaSが対前年度比23.7%増の1兆332億円で、市場規模が最も大きかった。コロナ禍をきっかけに、従来は対面や紙で実施していた業務のデジタル化が進んだことを背景とする。

 IaaSは同24.6%増の4363億円だった。従来はゲームやWebサービスの基盤として仮想サーバを利用するエンターテインメント系企業の需要がけん引していたが、近年は一般企業でも採用が広がり、社内システム基盤での利用が進みつつある。

 PaaSは同35.3%増の2206億円だった。アプリケーションの開発基盤やデータベース、データウェアハウスとしての利用の他、AIやIoT、データ分析の基盤として導入され、DXに取り組む企業が増加していることを背景とする。

 DaaSは同17.8%増の364億円だった。テレワーク環境の整備を進める企業が全国的に増加したことで、市場が伸びている。富士キメラ総研は今後、人的リソースの変化に応じたクライアント環境の設定や変更に対応できるDaaSの需要が高まると見ている。

2024年までの想定の背景は「全面的なクラウド移行」

 富士キメラ総研の予測によれば、2024年度の市場規模は対2019年度比2.1倍の2兆8296億円に達する。同社は予測の背景を「AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)、データ分析など、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進に伴う利用増加が期待される他、クラウドネイティブな仕組みへの変更やサーバレス化、コンテナ技術の活用といった、運用コスト面や生産性の効果をより求める機運が高まっているため」とする。

 同社によれば、2019年度から2024年度までに最も拡大する市場はPaaSだ。2024年のPaaSの市場規模は、対2019年度比2.8倍の4586億円の見込み。IaaSは同2.0倍の7090億円、SaaSは同92.2%増の1兆6054億円、DaaSは同83.2%増の566億円を予想する。

 富士キメラ総研は市場拡大の背景として、IaaSやPaaSを活用したDXに取り組む企業の増加を挙げる。AI向けでは、実証実験から本格導入に移行する企業が増加している他、IoTやデータ分析向けでは業務の効率化や新規ビジネスの創出などを目指しての導入が進むと見られる。

 IaaS/PaaS市場に占めるDX関連の割合は、2020年度の16.6%から、2024年度には20.2%に拡大する見込みだ。DX関連の市場規模は、2020年度が対前年度比36.4%増の1333億円の見込み、2024年度は対2019年度比2.9倍の2837億円に達すると予測する。

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