絶好調の5G市場に”ピーク超え”の兆しか
2020年の市場規模は対前年比4.4倍と絶好調だった。一方で、直近数年の内に対前年比が1.0倍を下回る”ピーク超え”も予想され、海外市場への進出を視野に入れる必要性が出ている。
IDC Japan(以下、IDC)は2021年7月28日、国内5G(第5世代移動通信システム)ネットワークインフラストラクチャ市場の予測を発表した。
5Gネットワークインフラストラクチャ市場は、5Gサービス基盤に用いる5G RAN(Radio Access Network)や、5Gコアネットワーク、ルーター、イーサネットスイッチ、光伝送装置から成る。2020年の市場規模は、5G基地局の配備とモバイルバックホールの構築がけん引して対前年比4.4倍の2053億7800万円となった。今後も5Gサービスエリアの拡大は続くとみられる一方で、対前年比が1.0倍を下回る”ピーク超え”も予想され、IDCは海外市場への進出を視野に入れたビジネス展開の必要性を強調する。
国内ベンダー生き残りの鍵とは?
IDCの予測によると、同市場の2020〜2025年の年間平均成長率(CAGR)は9.9%となる。特に、2021年から始まる5G SA(5G Standalone)方式に向けて5G Coreの導入が始まり、基地局設備であるRANと合わせて5Gネットワークインフラストラクチャへの投資が加速する。
5Gネットワークインフラストラクチャ市場の中心を占める5G RANでは、RANのオープン化によってRANのマルチベンダー構成が進んでいる。IDCは、5G RANの2020〜2025年のCAGRを7.1%と予測する。
5G基地局の数は、2023年度末に25万局を超える見込みだ。一方で2020〜2025年までの市場予測グラフは2022年をピークに対前年比を下回り、2025年はピークから500億円程度の支出減を見込む。
IDC Japan コミュニケーションズのグループマネージャーを務める草野賢一氏は「国内ワイヤレスインフラストラクチャベンダーが生き残り、海外市場進出への足掛かりを築くためには、国内のMNO(Mobile Network Operator)が実践するオープンRANで十分な実用性を証明する必要がある。オープンRANが機能することは当然として、運用管理システムの確立や、省電力性能や経済性の高さを実証することが求められる。さらに、2022年以降のvRAN(virtualized RAN)導入を成功させることが、海外市場進出の成功と国内市場での生き残りの鍵を握る」と述べている。
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