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RPA離脱企業はここでハマった 「業務自動化しくじり企業」から学ぶ次善策

2016年から2018年にかけて徐々に利用が広がり、最近ではハイパーオートメーション分野での活躍も期待されるRPA。組織活用、スケールは一朝一夕ではかなわない。中にはRPA導入を途中で断念せざるを得ない企業もある。そうした“しくじり企業”はどこでつまづいたのか。

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 2020年には幻滅期の底を脱して普及期に移ったとされるRPA(Robotic Process Automation)。今後はAI(人工知能)などとのテクノロジーを組み合わせた「ハイパーオートメーション」分野でのさらなる需要拡大が期待される。

 本連載(全5回)では“RPA活用の現在地”を探るため、キーマンズネット編集部が実施したアンケート調査(2021年9月16日〜10月8日、有効回答数378件)を基に、RPAの導入状況と社内各部署への展開状況、問題点や得られた成果など、RPA活用の実態を分析する。第1回となる本稿では、RPAの導入、展開状況を概観するとともに、RPAのトライアル導入、本格導入を果たした企業が経験した障壁や、RPAの導入を断念した理由などを紹介する。

 回答者の所属部門は「情報システム部門」(33.9%)、「製造・生産部門」(13.2%)、「営業販売部門」(11.1%)、「総務・人事部門」(5.6%)と続く内訳であった。なお、グラフで使用している数値は、丸め誤差によって合計が100%にならない場合があるため、ご了承いただきたい。

2020年よりもRPAのトライアル減、本格展開は伸び

 RPAの導入効果を示す一つの指標となるのが「削減時間」だ。組織に存在する人手が掛かる単純作業や時間を要する定型業務をあぶり出し、いかに適用範囲をスケールさせられるかがRPA導入効果最大化のポイントとなる。

 まず、RPAによって省人力化できる業務が組織にどれほどあるのか、また組織がどれほどの手間を抱えているのかを把握するために、回答者に勤務先で繰り返し作業や定型業務がどの程度存在するのかを感覚値での回答を求めたところ、「ごく一部存在する」(47.1%)、「業務の半分くらいを占める」(41.3%)、「ほとんどない」(6.6%)となった(図1)。


図1 勤務先で繰り返し作業や定型業務はどの程度あるか(n=378)

 2020年の同調査結果と比較すると、前回は「業務の半分くらいを占める」が37.2%で4.1ポイント増、「ごく一部存在する」が29.2%で17.9ポイント増となり、今回の調査でこの2項目の順位が逆転する結果となった。

 続いて、RPAの導入および展開状況を尋ねた結果、前回12.6%だった「トライアル実施中」が今回は11.6%に、「本格展開中」は21.3%から30.2%に、「本格展開完了」は6.3%から9.8%となり、トライアルで展開イメージをつかんだ企業が展開に移り、展開中だった企業が展開完了に進んだ割合が増えたと推測できる。また、「現在、導入しておらず、今後も導入する予定はない」は13.0%で、前回の17.3%から4.3ポイント減少した(図2)。


図2 勤務先でのRPAの導入状況(n=378)

費用、トップの理解、人材問題、何が“RPA離脱”を招くのか?

 RPAへの理解や活用イメージがつかめず導入に足踏みする企業が一定数存在する中で、まだ著しい伸びとは言えないもののRPAの展開を着実に進めている企業も増えてきている。そうした“RPA先行企業”も全てが順調というわけではなく、何らかの悩みや問題を抱えているはずだ。RPAのトライアルから本格展開に至るまでに、どんな障壁に突き当たりがちなのか。次の項目で、RPA先行企業が抱える悩みの正体を考察する。

 全項目で「トライアル実施中」「トライアル完了」「本格展開中」「本格展開完了」と回答した人を対象に、RPAのトライアル、導入時にどのような障壁があったかを尋ねた(複数回答形式)。

 最も多くの票を集めたのが「RPAロボットの開発スキルを持った人がいない」(52.9%)、次いで「事前準備が面倒(業務の棚卸など)」(35.9%)、「導入成果の算出が難しい」(30.6%)、「導入、開発費用」(27.7%)、「自社ツールとRPAへの連携が難しい」(27.7%)と続き、これらがトップ5を占める結果となった(図3)。


図3 RPAのトライアル時、導入時で発生した課題(n=206)

 前回の調査でもトライアル時、導入時の課題として「RPAロボットの開発スキルを持った人がいない」が一番の障壁とされ、RPA人材の育成が引き続きの課題であることに変わりはない。ベンダーやシステムインテグレーターから導入、運用支援を受ける手もあるが、導入から運用に至るまでを外部にアウトソースすると相応のコストを覚悟する必要があり、かつ組織にRPAのノウハウが蓄積されないという問題もある。その結果、外部に委託せざるを得なくなり、コストが膨らむという悪循環に陥る。それが本項目の結果から見えたジレンマでもある。

 この結果から分かるようにRPA導入では費用が一番の問題になるとは限らず、RPA人材の確保や、自社ツールとの連携などを考慮した導入設計を描くことが成否を分けるポイントと言えそうだ。

 だが、こうした難関を超えられずにやむを得ず導入を断念せざるを得ない企業もある。一度は導入した、または検討したが導入を取りやめたとした人からその理由を聞いたところ、以下の点が挙げられた。

  • 展開担当者の退職
  • 導入時に手間が掛かり、適応範囲が思ったよりも少なく工数削減にならなかった
  • 定型化できそうと考えていた業務も、環境変化があり意外とRPA化できるものが少なかった
  • 一度動いたRPAが条件によって、動かなくなった
  • 単純作業の自動化だけでは役員の理解を得られなかった

 断念の原因となった問題は図3で示した障壁とも重なる部分があり、人的問題や対象業務の整理が主な離脱要因となりそうだ。加えて、業務環境が変化しやすい状況だからこそ業務プロセスを整理するとともに、各部署、部門での体制変更なども考慮した運用フローも考える必要があるだろう。

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