IT資格の取得状況(2021年)/後編
資格取得のモチベーション維持に必要なのが、資格取得支援制度や資格取得の奨励制度だ。しかし、理想と現実は大きく異なるようだ。勤務先の支援制度に多くの不満が寄せられた。
前編では、キーマンズネットが2021年11月5日〜19日にわたって実施した「IT資格の取得に関する調査」(有効回答件数:256件)を基に、現在保有するIT資格や資格を保有して役に立ったこと、会社の支援体制など、資格取得に関する現状を紹介した。
後編となる本稿では、今後取得を予定している資格や今後人気が高まるであろう注目のIT資格について読者に尋ねた結果を紹介する。グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。
一度落ちたら二度目はNG……資格支援制度の課題と要望
まず勤務先で資格取得支援制度が「ある」と回答した人に対して、「資格習得支援制度に対する要望や課題点」を尋ねたところ、大きく3つの意見に分かれた。
最も多かったのが「資格手当や受験料」に対する要望だ。難易度の高い資格については合格時に適切な評価をしてほしいといった声や、合否にかかわらず受験費用を補助し、挑戦しやすい環境を整備してほしいなどの意見が挙がった。
- 業務に必要な資格を所有する人には資格手当支給をしてほしい
- それなりに難易度の高い資格を取得したが、給与に反映されない
- 受験費用の支給条件が合格時のみで、難関資格に落ちた場合の高額な費用負担が痛い
2つ目は「支援対象となる資格の範囲」についてだ。対象資格が限定的かつ変更されない状態では、資格取得に積極的な人の意欲の減退を招き、企業としても市況ニーズに合った資格保有者を集めにくくなるなど、双方にとってメリットが得られない制度になってしまう。
- 時代の流れも変わり、支援対象の資格の範囲を広げてほしい
- 支援制度の対象がアップデートされていないので、実務に役立つ資格と対象資格に差異が発生している
最後は「会社の方針」に関してだ。会社が何を目的に従業員の資格取得を支援しているのかが分からず、制度だけが形骸化しているといった課題が挙げられた。どうしても孤立化しがちな資格勉強者への精神的な支援を求める声も挙がった。
- 「何を取得すべき」」という方針がころころ変わる
- 一度不合格になると二度目の受験からは受験費用が出ない
- 建設業なので建設関連資格に関しては相応の支援が受けられるが、それ以外の資格は対象外。社内SEだが、実務に必要な資格かどうかが考慮されていないので職種に見合った支援制度が必要
- 技術資格だけではなく、モチベーションを上げるような資格制度もあればいい
- 上司と相談して対象とする資格を決められるといい
今、狙っている資格2位は「Azure認定資格」、1位は何?
次に、「今後取得したいまたは取得予定のIT関連の資格はあるかどうか」を尋ねたところ、「ある」が47.3%、「ない」が52.7%となり二分する結果となった。「ある」と回答した人を対象に、取得したいIT関連の資格について複数回答形式で尋ねたところ図1のような結果となった。
今後、取得予定者に人気のIT資格は「AWS認定各種」(24.0%)、「Microsoft Azure認定各種」(13.2%)といったクラウド分野や、「基本情報技術者」(13.2%)、「情報処理安全確保支援士」(12.4%)など根強い人気の国家資格に回答が集まった。
他にも「RPA技術者検定」(8.3%)、「データサイエンス数学ストラテジスト」(7.4%)などが挙がった。データサイエンス数学ストラテジストは2021年9月に新設された資格だが、わずかながら興味を示す人も見られた。
今後、IT資格の取得予定がないと回答した人にその理由を聞くと、最も高い割合を占めたのが「仕事などで忙しく勉強時間が取れないため」(35.6%)で、次いで「昇給や昇進につながらないなど資格を取得するメリットがないため」(33.3%)、「IT資格の取得に意味を感じないため」(31.1%)と続いた(図2)。
前編でも触れたが、コロナ禍の影響もあり直近2年は就転職がしづらい市況観であったことから、キャリアアップや昇給に資格取得がつながりにくいと考える方もいたのだろう。またコロナ影響による業績悪化や働き方の変化など、外部環境が大きく変化するタイミングであったため、十分に学習時間を確保できる状況ではなかったのかもしれない。
他人には教えたくない、今後のIT資格の“注目株”は?
ここまでは、調査結果から現在人気の資格を紹介したが、ここからは、今後人気が高まるであろう注目資格について読者の予想を尋ねた結果を紹介する。
一番目立ったのはクラウド関連の資格だ。「『Amazon Web Services』(AWS)や『Microsoft Azure』などの資格」や「AWS、Azure、『Google Cloud Platform』(GCP)の上位プロフェッショナル資格」などが挙がった。理由としては「AWS利用企業が多いため精通した人材が求められるから」「その分野の進展が見込めるから」「2〜3年後は分からないが、当面、技術者としてのニーズが高いと思われるから」などが多かった。中には「AWSがデジタル庁の公認クラウドとなったので今後ニーズは高まると思う」といった、省庁の採用事例から今後の人気を予測する人もいた。
次に多かったのがAI(人工知能)や機械学習の分野で「AIや量子コンピュータといった次世代技術の資格」「G検定・E資格」「Python 3 エンジニア認定基礎試験」といった資格が挙がった。
注目の理由は「市場でデジタルビジネスに関連する有識者が求められているから」「将来性が高く汎用(はんよう)性もあるため」といった声が多い。これらの資格取得のためには、プログラミング技術やITの基礎知識だけではなく、微分積分や統計学、確率論といった数学分野の知識や、画像処理やデータ解析などの専門知識も必要になるため、AI分野以外でも広く使われる可能性を見越して注目されているのだと推測できる。
他には、人気のセキュリティ分野「情報セキュリティスペシャリスト」「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」や、DX関連の開発需要増加を見越して「DX検定」や「Python関連資格」を挙げる人もあった。
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