時代はハイパーオートメーション、だけどホントにRPAで実現したいのは?
5回にわたってお届けする本連載の最終回となる本稿では、RPA製品の用途や選定する際の指針、今後RPAに期待する機能などを尋ね、その結果を紹介する。RPAとAIなどのテクノロジーを組み合わせた「ハイパーオートメーション」の導入状況や、その実態も読み解く。
2020年には幻滅期の底を脱して普及期に移ったとされるRPA(Robotic Process Automation)。今後はAI(人工知能)などのテクノロジーを組み合わせた「ハイパーオートメーション」分野でのさらなる需要拡大が期待される。
本連載(全5回)では“RPA活用の現在地”を探るため、キーマンズネット編集部が実施したアンケート調査(2021年9月16日〜10月8日、有効回答数378件)を基に、RPAの導入状況と社内各部署への展開状況、問題点や得られた成果など、RPA活用の実態を分析する。
第5回目となる本稿では、RPAを適用したい業務と製品選択の指針について読者に尋ね、ハイパーオートメーションの実現状況と合わせて結果をまとめる。
時代はハイパーオートメーション。実際の用途は
RPAについて「興味はある」「検討中」「トライアル実施中」「トライアル完了」「本格展開中」「本格展開完了」と回答した人を対象に、「RPAを導入したら適用したい業務は何か」を尋ねた。
2020年のRPA導入に関する意識調査を記事にした「第5回「RPAのあったらいいな」期待が膨らむ理想論、480人の見解は?」では、「集計レポートの作成」「ワークフローの自動実行」「複数システム間のデータ入出力」「定型書類のチェック」「社内システム向けの巡回、定型データの収集」が上位5位を占めた。
2021年は、「複数システム間のデータ入出力」(49.0%)、「集計レポート制作」(42.6%)、「定型メールの送信」(36.9%)、「社内システム向けの巡回、定型データ収集」(34.0%)、「ワークフローの自動実行」(32.1%)が上位を占め、5項目のうち4項目が2020年と重複する結果となった(図1)。
RPAは複雑な業務および作業の自動化するハイパーオートメーションでの適用が期待されるが、まだ2020年と同様に定型業務の自動化が求められているのが分かる。2021年の製品選定ポイントやRPAに今後期待する機能はどうだろうか。
変わらず低コスト製品が人気。AI連携を求める兆しも
読者の勤務先におけるRPA製品の選定理由を尋ねた。最も多く寄せられた回答として、「コストが安い」(70.4%)、「UIが日本語で分かりやすい」(56.1%)、「GUI操作でシナリオを作成できる」(42.1%)、「自社システムとの相性がよい」(41.5%)、「初心者向けの開発環境がある」(34.9%)が上位を占めた(図2)。
自由記述の回答には、「仕様変更が容易」「保守機能がある」「Gitなどでソースコード管理ができる」などの声があり、RPA開発の属人化を防ぐ機能が求められるのが分かる。
「AIなど、最新技術と連携しやすい」を製品選定の理由に挙げた人は、従業員数が1〜500人の企業では14.6%、501〜1000人の企業では28.3%、1001〜5000人の企業では35.9%、5001人以上では31.7%と企業規模が大きい方が回答割合が高く、大手企業は新しい技術の導入に積極的な傾向が分かる。
大きく差がつく、RPAと合わせて使いたい新技術
読者の勤務先における、今後RPAに期待する機能などについて尋ねたところ、「RPAのシナリオに対するテストの自動化、効率化」(49.5%)、「AI-OCRや画像認識AIを組み合わせた自動文字認識とデータ入出力」(46.6%)、「初心者向け、エンジニア向けなど多様な開発環境」(45.8%)の3項目が4位以降を大きく引き離した。開発時の環境やテストへの要望が多いことから、まだ運用以前の障壁があるのが分かる(図3)。
新しい技術との組み合わせの点から見ると、「AI-OCRや画像認識AIを組み合わせた自動文字認識とデータ入出力」が46.6%と上位にあるのに対し、「推論や予測分析などのAIを使った伝票処理の効率化」「音声データ解析を組み合わせた自動入出力」「BPMツールやiPaaS、チャットbotとの連携によるハイパーオートメーション」を求める声は10%台と少ない。AI-OCRや画像認識AIの、RPAと併せて使いたい技術としての人気が伺える。
全5回にわたってアンケート調査を基に、RPAを導入、検討している企業の現在の用途や選定のポイント、今後期待する機能などを紹介した。RPAは新しい技術との連携が期待されるが、まだ定型業務の自動化や開発環境、コスト面の課題が多くハイパーオートメーションが普及するまでは時間がかかりそうだ。
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