ファイルサーバとクラウドストレージの利用状況(2022年)/前編
ワークスタイル変革が進む中で、ファイルやデータの“置き場”が一つの問題として挙がる。クラウドストレージはセキュリティリスクの懸念もあるが、2021年末にかけて大手企業でのファイルサーバへの不正アクセス事件が報じられた。こうした状況の中で、ファイルサーバとクラウドストレージの利用状況を探った。
オフィスに縛られない働き方が主流になりつつある現在、各所に分散して働く従業員がどこにいてもファイルやデータにアクセスできる仕組みが必要だ。ファイル置き場として長らく運用されてきたファイルサーバも、働き方とともに在り方を見直す時に来ている。
キーマンズネット編集部は「ファイルサーバとクラウドストレージの利用状況」に関するアンケート調査を実施した(実施期間:2021年12月24日〜2022年1月7日、有効回答件数:324件)。前編となる本稿では、調査結果を基にファイルサーバとクラウドストレージの利用状況を概観するとともに、勤務先で利用するストレージサービス、ファイルサーバ利用者におけるストレージサービスの利用意向などについて見ていく。
「ファイルサーバのみ運用」は14ポイント減少
まず、勤務先のファイルサーバとクラウドストレージの利用状況について尋ねた結果を見ると、「ファイルサーバのみ利用」(38.3%)、「クラウドストレージと併用している」(48.8%)、「クラウドストレージのみ利用」(7.1%)と続く結果となった。この結果を従業員規模別に見たものが図1だ。
ファイルサーバのみ利用している割合は、従業員規模51人〜100人の企業が56.3%と最も高く、従業員規模が大きくなるにつれて、ファイルサーバとクラウドストレージの併用割合も高くなる傾向にあった。従業員数5001人以上の企業においては、「併用している」とした割合は71.2%となった。全社的なテレワークに舵を切った大手企業事例も聞かれるが、この結果から企業規模別の働き方が透けて見える。
この結果を前回調査(2021年1月実施)と比較したところ、「ファイルサーバのみ利用」が14.0ポイント減少し、併用割合が9.0ポイント増加、クラウドストレージの利用割合も12.2ポイント増加した。
MS、Google vs. 独立系ストレージベンダー、最新利用動向
次に、年々利用が拡大傾向にあるクラウドストレージについて、「利用している」「ファイルサーバと併用している」と回答した読者に対して、勤務先で利用するサービス名を聞いた結果、図2となった。
最も多くの回答を得たのが「Microsoft OneDrive」で65.7%、次いで「Google ドライブ」(24.9%)、「Box」(22.1%)、「Dropbox」(16.6%)と続く結果となった。この割合を前回調査と比較すると、Microsoft OneDriveが10.3ポイント増加し、Google ドライブも5.3ポイント増加した。
従業員別で見ると、従業員数501人以上の企業ではMicrosoft OneDriveの利用割合が7割を超え、独立系クラウドストレージベンダーのBoxは従業員数1001人以上の企業で3割弱を占める結果となった。
今後「クラウドストレージを利用する予定」もしくは「ファイルサーバと併用予定」とした回答者にも同様の質問をしたところ、「Microsoft OneDrive」(28.3%)、「Box」(17.0%)、「Google ドライブ」と「Dropbox」が同率で5.7%となった。
クラウドストレージ検討割合が拡大、ファイルサーバ廃止は少数派
「ファイルサーバのみ利用」とした回答者に対して「今後クラウドストレージを利用する予定はあるか」と尋ねたところ、回答割合の高い順に「予定はない」が54.0%、「検討中」(35.5%)、「予定がある」(7.3%)となった(図3)。
今後クラウドストレージを利用する「予定がある」「検討中」とした回答者に対して、現在利用するファイルサーバの運用方法について聞いたところ、「ファイルサーバとクラウドストレージを併用する予定」が88.7%と最も高く、「ファイルサーバを廃止する予定」としたのは7.5%にとどまる結果となった。
この結果を前回調査と比較したところ、今後クラウドストレージの利用を予定または検討するとした割合は25.4%から42.8%になり、17.4ポイント拡大したことになる。ワークスタイル改革の潮流などを背景に、何らかの形でクラウドストレージを利用する割合が高まっている。
クラウドストレージの利用を検討する際に付いて回るのがセキュリティリスクの懸念だが、2021年末にかけて大手企業のファイルサーバへの不正アクセスによる情報流出事件が報じられるなど、ファイルサーバも同様の問題を抱えている。しばらくはファイルサーバとクラウドストレージを併用し、様子見の状態が続くと見られる。
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