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「これは無賃労働だ」Apple vs. 社員の10年間戦争の一部始終

Appleの従業員に対するセキュリティチェックは厳しいことで知られている。業務終了後の荷物チェックは勤務時間内であり、その時間も賃金が発生すべきだと従業員は集団訴訟を起こした。

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HR Dive

 勤務時間外に手荷物検査を要求されたとして、従業員がAppleに集団訴訟を起こした。カリフォルニア州連邦地裁は2022年8月13日に、3040万ドルで両者の和解を認めた。この和解によって、約10年前に始まった係争が終息を迎えた。

10年の集団訴訟で獲得した金額は1人1328ドル……

 この訴訟は、Appleが従業員に食事休憩中やシフト終了後などの勤務時間外にセキュリティ対策として手荷物検査を受けさせたとして、2013年に提出された訴状にさかのぼる。この検査は1人当たりおおよそ5〜15分程かかり、1週間で約1時間の無給労働時間が発生していたと訴状で述べた。

 この集団訴訟では、手荷物検査中に報酬が支払われないことは、公正労働基準法およびカリフォルニア州労働法に違反していると訴えた。2020年にカリフォルニア州最高裁判所は原告側に有利な判決を下し、同年末、第9連邦巡回控訴裁判所もこれを支持した。

 裁判所文書によると、Appleの和解金の大部分(約2050万ドル)は、集団訴訟のメンバー1万4678人に対してそれぞれに支払われたという。集団メンバー1人当たりの純支払額は約1328ドルとなる。残りの3分の1は、弁護士費用や訴訟費用、その他の支払いに充てられた。

 10年近く続いたAppleとの裁判の結末は、連邦政府と州政府の賃金、労働時間法を順守するための高価な教訓となった。しかし、複数の法律家が意見を出し合い、途中で意見の食い違いもあるなど、最終的な判決が下されるまでには、紆余(うよ)曲折があった。

 この裁判には、ある問題があった。従業員が“個人的な都合で”職場に持ち込む物品をチェックしているだけでありそれに補償が必要なのか、つまり、従業員は私物の持ち込みを控えることができるのに、Appleはそれに対して補償する責任があるのか、ということだ。2015年11月にカリフォルニア州連邦地裁は、その答えを「ノー」と判断した。同裁判所は、「原告は私物の持ち込みを断ることで、Appleの管理を避けることを選択できた」と指摘した。

 原告はこの判決を不服とし、第9連邦巡回控訴裁はカリフォルニア州最高裁判所に判断を仰いだ。連邦地裁に対抗して、最高裁は、カリフォルニア州法規とカリフォルニア州賃金令第7条に基づき、手荷物検査を待つ時間や検査を受ける時間は「勤務時間」として補償の対象となると判断した。

 それは、なぜか。「労働時間」と「支配」に着目し、州法では「労働時間とは従業員が雇用者の支配下に置かれている時間であり、従業員は要求されているか否かにかかわらず、働くことを余儀なくされたり許されたりする全ての時間を含む」と定義しているためだ。

 厳密な条文分析によれば、「Appleの従業員は出口検査を待っている間も検査中も明らかにAppleの支配下にある。この間、Appleは幾つかの方法で従業員を管理している」と裁判所は記した。例えば、従業員が手荷物検査に応じなかった場合、懲戒解雇される可能性があること、検査中は従業員が施設に閉じ込められることを指摘した。

 裁判所は、従業員が自発的に私物を持ち込むか否かは関係ないと却下した。Appleは、「従業員の活動を補償の対象とするためには、要求され、避けられないものでなければならない」と主張する。しかし、こうした内容はコントロール条項に記されていない。

 最終的に、第9巡回区控訴裁判所はこれに同意し、連邦地裁の判決を覆した。

 本件は当初、カリフォルニア州法に加えてFLSA(公正労働基準法)が絡んでいたが、2014年に連邦最高裁がIntegrity Staffing Solutions, Inc. v. Busk判決を下し、強制的なセキュリティスクリーニングを受ける時間はFLSAで補償されないとしたため、カリフォルニア州法以外の請求は保留され、却下された。

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