クラウド電話の利用状況(2022年)/後編
勤務先の電話環境にまつわる課題点を尋ねたところ「在宅勤務時の電話対応はどうすべきか」「営業電話が多いので、クラウド電話にしてもコストの無駄」など、さまざまな意見が出た。
クラウドPBXを用いることで、どこでも会社の外線/内線を受け取ることが可能な「クラウド電話」。前編では、キーマンズネットが実施したアンケート調査の結果(実施期間:2022年9月26日〜10月7日)を基に、クラウド電話の認知、理解度と、導入の有無と導入時期、「休日でも顧客からの電話を受けるハメになった」というクラウド電話に関する問題、トラブル事例を紹介した。
後編となる本稿では、クラウド電話の利用検討層に対して検討している導入時期や導入目的、魅力を感じる機能などを尋ねた結果を紹介する。また、既存の電話環境における勤務先での問題、課題点についても併せて聞いた。全回答者数220人のうち、情報システム部門が30.5%、製造・生産部門が15.9%、営業・販売部門が11.8%、経営者・経営企画部門が7.7%といった内訳であった。グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。
便利な機能、保留転送、ダイヤルイン……1位となったのは?
全体の21.4%を占めた「現在利用はしていないが、利用を検討している」と回答した人に対して導入時期を聞いたところ「未定」が48.9%と最も多く、次いで「2023年〜2024年頃」(38.3%)、「2022年中」(6.4%)となった(図1)。2022年〜2024年と直近で導入を検討しているとした人を合算すると44.7%となり、導入検討層の中でも具体的に検討が進んでいる企業とそうでない企業の2つにくっきり分かれる結果となった。
導入予定者が考える導入目的は「テレワーク対応のため」(55.3%)に続き、「電話の取り次ぎコストを軽減するため」(48.9%)、「PBXの老朽化・サポート終了による切り替え対応のため(38.3%)が上位に並んだ。導入目的として、前編で紹介した「導入済み」と回答した人と同様に「コロナ禍など環境変化への対応」と「PBXの老朽化」が中心となった(図2)。
クラウド電話の中でも魅力に感じる機能はどれかと尋ねると、「代表番号での発着信」(55.3%)がトップで、「ダイヤルイン(ダイヤルインサービス)機能」(51.1%)、「保留転送機能(44.7%)」など、導入済み層とほぼ変化は見られなかった。導入予定層は人的リソースが限られた中堅・中小企業に勤務する回答者が多いことから、「自動音声応答機能」(27.7%)や「IVR(自動応答・対応者への引継ぎ)機能」(23.4%)などのサポート機能への期待が高い傾向が見られた(図3)。
社用携帯があればいいのでは? 読者が切り込むオフィス電話問題
次に固定電話とクラウド電話、社用携帯など、オフィスの電話環境にまつわる課題点と問題点を尋ねた。オンプレミスPBXによる固定電話やクラウド電話の必要性を訴える人がいる一方で、そもそも社用携帯で全てが事足りるのではないかという意見もあった。オフィス電話を巡る読者の見解を以下にまとめた。
- 事務所の番号に掛かってきた電話の対応(テレワーク中の担当者に回すべきか、出社中の職員が対応すべきか)の判断が難しい。状況に合わせて各職員が転送設定などを自由に変更できるような運用にしたい
- 在宅勤務時の電話対応は個人所有の電話を使わなければならない
- 社用携帯を渡されており、それで十分。固定電話を廃止していいのではないか
- 営業電話が多いので、クラウド電話にしてもコストの無駄になるのではないかと思う
- テレワーク社員に電話を転送する際、勤務時間内は持ち回りで転送し、勤務時間外は留守番電話または本社に転送するなどの設定にしたいが、現在は24時間社員に転送される設定となっている。
- 会社で支給されている携帯電話が通話し放題のプランで、通話の多くが携帯電話によるもの。そもそも固定電話やクラウド電話が必要なのかという疑問が社内で出ている
固定電話かクラウド電話か、テレワーク時の電話運用はどう考えるべきか、取次ぎルールをどうするかなど、電話一つとっても議論すべきポイントは幾つかある。こうした生の意見を基に、現場の実情を理解した上で部署・部門、拠点、そして組織としての運用をどうするかを考えたい。
未導入者の理由、「コスト」を上回る1位になった項目とは
最後に全体の47.3%を占めた、「クラウド電話を利用しておらず、今後の利用予定もない」と回答した方にその背景を聞いたところ、「既存の電話環境で特に問題がないため」(51.9%)が最も多く、次いで「クラウド電話サービスをあまり理解していないため」(26.9%)、「Web会議ツールなど他コミュニケーションツールで間に合うため」(26.0%)が上位に並んだ(図4)。既にFMC(Fixed Mobile Convergence)サービスやBYOD(Bring Your Own Device)により、“固定電話問題”に対応済みの企業も多いため「現状で十分」といった声があるのだろう。
「クラウド電話を利用する予定もない」と回答した人の約4割が、従業員規模100人以下の中小企業に属する人だった。この企業帯だけで傾向をみると、「導入予算やリプレース予算の確保ができない」「経営層や稟議(りんぎ)担当者の理解を得られない」といった理由が他企業帯と比較して高い割合を示し、代わりに「Web会議ツールなど他コミュニケーションツールで間に合うため」が低い傾向にあった。
前後編にわたってクラウド電話の利用状況を紹介してきた。認知度は約9割となったものの、導入率は3割弱にとどまる。その背景には、「PBXの切り替えタイミングが合わない」「クラウド電話にかかるコストが分からない、見えない」などの声があった。出社を伴うオフィスワークに戻りつつある企業が増える中で、電話の取り次ぎコストをどう考えるかが考えどころとなるのではないだろうか。
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